表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/56

第三十六話:特號会議

だいぶ遅れましたすみません!!!!!(´;ω;`)



 今回の一件について、誰も罰する必要はない。

 そんな清明さんの言葉に、立花神が戸惑いながら顔を上げた。


「ちょっ、清明サン何言うとるんや!? ワイは暴力沙汰をっ!」


「おや、キミは最初、『教育してやる』と言ってシオンくんを連れ出したんじゃないのかい?」


「せ、せやけど」


「それなら今回の一件は、ちょっと過激な戦闘訓練だったってだけだ。それなら問題ないだろう?」


 そう言う清明さんに、今度は天草さんが「大ありですよッ!」と声を上げた。


「馬鹿を言うんじゃありませんよ清明。チャチな喧嘩ならその言い訳も通りますが、彼らは今回、術式巫装まで使用したんですよ?」


「そうだね」


「であればわかっているでしょう!? 巫装を使っての私闘は重罪! 戦闘訓練に使う場合でも、一等陰陽師以上の者が、責任者として事前に申し出を行わなければ……!」


「してると言ったら?」


「はっ、はぁッ!?」


 その一言に、天草さんは大口を開けた。


「なっ……してるって……!?」


「いやぁ、シオンくんのおかげだよ。――偶然ぶらぶらしてたらさ、廊下をぞろぞろ歩く大集団を見かけたわけ。で、最後尾の子にナンゾコレーって聞いてみたら、『シオンってヤツが、恋人(ハニー)を罵った立花先輩と喧嘩かますらしいですよ! 男ですよねぇ!』って教えてくれてさー」


「――恋人(ハニー)ッッッ!?」


 お、今度は真緒が声を上げたぞ。天草さんといい元気だな。

 ちなみに蘆屋もそんな真緒を見てニヤニヤしていた。「はにー」ってなんだかわからないけど、みんな笑顔だからいいことだ。


「それで事態を察して、清明(ぼく)名義で実戦訓練の届け出を出してたってわけだ。わかったかね天草さん?」


「えぇぇぇぇぇ……」


 得意げに笑う清明さんに、天草さんは肩を落とした。


「そ、それじゃあ、事態を聞いて駆けつけた私の立場は……」


「あっはっはっ! 早とちりしただけのイイ人になっちゃうねー!」


「クソがァーッ!?」


 清明さんの脛に蹴りをかます天草さん。だが清明さんはひょいッと避けてしまう。

 ……かくして、天草さんは大きな溜め息を吐き、「あぁ胃が痛い……」とお腹をさするのだった。


「それなら最初から言ってくださいよぉ……。というか清明、よく届け出が即座に処理されましたね? 事務方も忙しいはずですが……」


「そこはまぁコネでね。色々と目的があって、事務方とは仲良くしてるんだよ」


「目的ですか……? ――いや、探るのはやめておきましょう。アナタに関わると、胃痛の種が増えるだけだ……」


 天草さんは「では清明、また例の会議で……」と言い、よぼよぼと医務室から出ていくのだった。

 あの人のほうが医務室のお世話になったほうがよさそうだな……。あと会議ってなんだろ?


「――さて。そんなわけで事態解決(ハッピーエンド)だ! ただ、立花くん?」


「……うす」

 

「キミら『天狗院』組の『呪い人』への嫌がらせは、マジで問題になりかけてた。僕は別に先生でも善人でもないから放置してたけど、こうなった以上は注意しておくよ。もう二度とやらないね?」


「はい、よくわかってますわ。……かわええ義弟(おとうと)たちには、ワイのせいで痛い思いさせてもうたからな……」


 ちらりと、立花神は壁のほうを見る。

 薄壁一枚隔てた向こう。寝台が並んだ隣の部屋には、気絶した高橋さんたちが寝かされていた。


「よしよし。考えなしに悪意を撒けば、いつか自分の大切な人たちまで傷付けると学べたようだね。…………うん、キミは本当にギッリギリだったよ。シオンくんは“やられたらやり返す”主義の極致だから、嘘でも『殺す』とか言ってたら……」


「うげっ!? かっ、考えたくないっすわぁ……!」


 顔を青くする立花神先輩。全身ボロカスだし、体調が悪くなってしまったようだ。

 そこで優しい俺は、仲直りの意味も込めてスッと手を差し出した。


「立てるか、神よ? これからは仲良くしていこう」


「お、おぉう……! ちなみにその、神とかいうふざけた呼び方は――あぁいや、もう別にええわぁ……!」


「そうか」


 こうして俺は、新しい友人を得たのだった。解決!




 ◆ ◇ ◆



 ――深夜零時。

 妖魔伏滅機関『八咫烏』内の一室に、十三名の者たちが座していた。

 黒き正装(スーツ)に身を通した集団。

 彼らこそ、『特等陰陽師』。妖魔の群れより人々を護る、裏世界の最大戦力者たちである。


「では皆さん、お時間だ」


 その中の一人――中央に腰かけた長身の青年、清明が場を取り仕切る。


「国家を守護せし特等陰陽師の方々。今回の『特號会議(とくごうかいぎ)』にお集まりいただき、まことに感謝を。本日の議長は(わたくし)、安倍清明が務めさせていただきます」


 気取った様子で礼を執る清明。そんな彼に対し、参加者たちは厭らしげな目を向けた。


「って、わーお。もしや僕って人望ないー?」


『……』


 否定の言葉は、出なかった。


 なお、集まった者たちは本気で彼を嫌っているわけではない(※一部除く)。

 “清明という適当な男に場を仕切られる()()()()()()”。それはせいぜい、瞳に宿った嫌悪感の内の三割程度である。

 そして、大部分の七割はというと……。


 

「――土御門殿はどこだ。特號会議の議長役は、統括陰陽師である彼が務めるものだろうが」


 

 忌々しげな声を響かせたのは、傷跡にまみれた赤髪の女だった。

 彼女こそ特等陰陽師“第四席”『サヤエ・中原』。全十三名の特等陰陽師のうち、実力上位陣に数えられる女傑である。

 そんなサヤエの問いかけに、清明は苦笑した。


「土御門統括なら、政治パーティーに参加中だよ。会議までには戻ると言ってたが、どうやら楽しくて抜け出せないそうで」


「は? 政治パーティー? もう夜更けだぞ? 早寝なジジイ共の集まりが、こんな時間までなぜ――……って、まさか」


「ああ、国民に知られるのはどうしても避けたい内容らしくてね。噂では、幼い少年たちに、()()()()()()を――」


「ふざけるなッ!」


 サヤエは強く机を叩いた。傷付いた美貌を激情に歪ませる。


「政治付き合い自体はいいさ……。古来より陰陽師の活躍には、権威者たちの協力が必要不可欠だからな……!」


 その点については否定しない。

 元より陰陽師は官職の一つ。なれば重鎮がたとの関係構築は、立派な職務ですらある。そう考えれば土御門はよくやっていよう。

 だが。


「しかし、ソレにうつつを抜かして本職を疎かにしたあげく、下劣な淫催に()けっているだと!? 馬鹿にしてるのかッ!」


 吼え叫ぶサヤエ。そんな彼女に他の特等たちも頷く。


 

「――あっしもサヤエ(ねえ)さんに同意だねェ。こちとら遠方から出てきてるッてのに、そいつぁーちょっとないんじゃねェかい?」


 

 次に口を開いたのは、スーツの上に遊女の着物を羽織った傾奇者・特等陰陽師“第六席”『(たいらの)心世春(こよはる)』だった。

 その髪は奇抜すぎる緑色。ただし、これは染めているわけではなく、己が『霊力』の色に変異した結果である。


「もう二十年ばかし陰陽師をやってきたがよ、土御門の旦那の乱行は酷くなるばかりだ。やれやれどうしたもんかねェ……」


 緑の前髪を弄ぶ平。

 髪色の変化はよほど陰陽師として適性の高い者か、あるいは長年戦い続けてきた者に起こるとされている。

 その基準でいえば、平は後者だ。遊び人のような風情をしたこの男だが、妖魔伏滅機関『八咫烏』京都支部の陰陽師として、古都の平和を守り続けてきた実績がある。

 そんな彼が京都の守りに穴を開けてまで会議にやってきた挙句、議長たる男はふざけた理由で不在だというのだ。その心中は計り知れない。


「――拙僧、怒りを感じますれば――」

「――これならウチで寝てたかったかも~――」

「――(おい)なんて薩摩(かごしま)から出てきたんじゃが、こんたどげん了見じゃ……?――」


 サヤエ・平に続いて口々に不満を漏らす特等たち。

 一部の者は殺気すらも放つ中、清明は軽く手を叩いた。


「みんな、気持ちは分かるがここまでだ。土御門統括の件は一旦忘れて、そろそろ会議に入ろうじゃないか?」


 彼の言葉に、全員が渋々押し黙る。

 かくして、会議室に静寂が訪れたところで――特等陰陽師“第一席”『安倍清明』は議題を掲げる。


 

「本日の議題は他でもない。――妖魔による人類支配、そんな最悪の“天下統一”を目指す組織『天浄楽土』の()()()だ」

 

 

 ――さぁ、そろそろ本気で潰し合おうぜ、と。


 国家最強の陰陽師は、その美貌に好戦的な笑みを浮かべるのだった。


・次回、26日更新予定です!


ここまでありがとうございました!

↓『面白い』『更新早くしろ』『止まるんじゃねぇぞ』『死んでもエタるな』『こんな展開が見たい!!!』『これなんやねん!』『こんなキャラ出せ!』『更新止めるな!』

と思って頂けた方は、感想欄に希望やら疑問やらを投げつけたり最後に『ブックマーク登録!!!!!!』をして、このページの下にある評価欄から『評価ポイント!!!!!!!!』を入れて頂けると、「出版社から期待されるパワー」が上がります! 特に、まだ評価ポイントを入れていない方は、よろしくお願い致します!!!↓



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 昭和に入ってからの話になりますが、エログロナンセンスのカフェーの特殊喫茶(風俗営業)における店員さんは女給と呼ばれておりますぞ [一言] 平氏の方は何平氏なんです?
[一言] できる男、清明!
[気になる点] 実は、以前から説明口調が多いのが気になっておりまして。普通に会話する時、「いちいちそんな事まで口に出さないよなあ」というのと「説明している時とお気持ちを言っている時でテンションに差があ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ