ある天才の悪巧み
「できた!ついに完成した!これが天才になれるコーヒーじゃ!」
ある町の研究所に、長くて真っ白なお髭を生やしたお爺さんの声が響き渡りました。
「これさえあれば大儲けじゃ」
お爺さんは缶の中にコーヒーを入れながらほくそ笑んでいます。
一体これをどうするというのでしょう?
それから一週間後、夏祭りの日になりました。
沢山の屋台が並んでいます。
その中の一つにこんな看板が。
天才コーヒー 本日限りの特別価格 今ならたったの500円!
天才コーヒー?
看板が気になった人たちが屋台に近付いてみると、箱詰めされた缶コーヒーがどっさりと並べられていました。
「ねぇお爺さん。天才コーヒーってなぁに?」
「言葉通りの意味じゃよ子供達。これを飲むとみんな頭が良くなるのじゃ」
「えーっ、うっそだぁー!」
「嘘ではない、と言っても信じられんじゃろう。ほれ、一人一本ただでやるから飲んだ後にこの問題集を解いてみるのじゃ」
「それ大学って書いてあるじゃん!僕達小学生だよ。解けるわけないじゃん」
そう言いながらも試しに飲んでみる子供達。
うげぇー、と苦い顔。やっぱりコーヒーは苦いようです。
さて、早速大学の過去問のページを開くと…
「すげぇ!全部わかる!」
「俺今まで漢文とか見たことなかったのになんで書いてあるのか読める!」
どうやら子供達は本当に頭が良くなったようです。
「これもう、俺達明後日のテスト満点だな!」
「喜んでる所悪いんじゃが、実はそれ、飲んでから1日しか効果がないんじゃ」
「えーっ!そんなー!」
「一本500円、買ってみんか?」
「うーん、500円かぁ…」
子供達にとって500円は高い買い物のようですが、結局みんな一本ずつ買うことにしました。
そしてそれからはさっきのやりとりを見ていた人達、噂を聞きつけた人達、大人も子供もみんな買い始めていきます。
中には箱買いしようとしてお爺さんに止められるものも。
そんなこんなで缶コーヒーはあっという間に全部売れてしまいました。
(残念じゃったな。実はあのコーヒー、最初に飲んだ一回しか効き目がないんじゃよ)
お爺さんは誰にもそのことがバレないうちにさっさと研究所に戻り、翌日には何処かへと引っ越してしまいましたとさ。
もう少し童話向けの言い回しが必要かもしれない。