急展開
夢咲千里
頭脳明晰、容姿端麗、スポーツ万能とまではいかないが、学年を超えて注目される美少女だ。そして俺の元カノでもある。【元カノ】なんて言葉をモテてる友達が使っているのを聞き、「俺もいつか使ってみてぇよ」って冷やかしたことがあるが、こんな悲しくてむなしい使い方をするとは。
今は4限目の授業が終わり、昼休みに入ったところだ。いつも通り大抵の生徒は学食に行くか、昼の部活に行くかで、教室には4、5人だけが残る。
意外にも、午前中は特にいつもと変わったところはなかった。朝、友達と駄弁る時に、ちらちらと夢咲さんを覗き見ていたら、何度か視線が合ってしまったことぐらいか。目線が合ってもすぐに逸らされたので何を考えているかまでは分からなかったが、向こうから話し掛けてくることもなかったので、彼女にとっても俺と別れたという認識だろう。分かっていたが辛い。どうせなら今この場で別れた理由とともに俺をこっぴどく振ってほしい。あんな短時間で、前触れもなく、理由もわからず振られるくらいならそっちの方がましだ。振られた理由を聞こうにも聞けない。完璧超人の夢咲さんにも人には話したくないことの一つや二つはあるだろう。理由が知りたいなら聞けばいい?付き合って半年でまだ手をつないだことしかない奴にそんな勇気があると思うか?大体そんな勇気があるなら、一昨日振られた時点で直接確認してるだろうに。
「夢咲さん……」
「何か用かな?ゆ、ゆうた君」
「………!?!?」
「いや、えっとその」
誰にも聞こえない声で呟いたのに……。っていうかいつの間にか教室に夢咲さんいるし!?
「ああ……俺の親戚に、夢咲……悟っていう年下の子がいるんだけど」
多少強引にはなったが、これでいい。なんとか誤魔化せる。
「ふーん。そっか。私てっきり私の事呼んでるのかなぁと思ったんだけど。違ったんだ…残念」
「……!?」
少し恥じらうように身を捩り、耳まで真っ赤になっている彼女はとても扇情的で魅力的に見えた。しかし同時に、かなり無理をしているようにも見えた。元々ぐいぐいくるタイプの子じゃない彼女は、笑顔がとても固くなっている。というか無理やり笑顔を作っているようである。
彼女に何の意図があるかはわからないが、ここまで無理をさせておいて、俺もこのまま誤魔化すわけにはいかない。
「…ごめん、さっきの嘘……本当はキモイって思われるかもしれないけど、夢咲さんと一緒にいれなかったから寂しかったんだ。察してるかもしれないけど、俺からも聞きたいことがある。…ふぅ………」
「何で俺じゃ彼氏として駄目だったのか教えてほしい」
目を固く閉じ、覚悟を決め、彼女の返答を待った。
ご読了ありがとうございました。誤字脱字等ご報告お願いいたします。面白ければブックマーク、評価、よろしくお願いします。