波乱の幕開け
失恋系の小説を見て、自分も書いてみたくなりました。最後まで書けるように頑張ります!
「ゆうた!ぐだぐだ寝てないで早く起きなさい!」
「………………」
「ゆうた!」
「わかった………分かったから……」
首から下げたエプロンが似合う専業主婦の母は、まだ不服そうな顔をしながらも渋々俺の部屋から出て行った。
学生ならほどんどの人が二度寝の喜びに浸っている時間帯。俺は布団に顔をうずめ、消化できない悲しみと怒りを布団を握り締めた拳に込めていた。昨日の夜に引き続き、起きてからかれこれ30分ほどこの状態である。
「あーあ……なんであんなことになったんだろうな……」
今改めて考えても心が痛い。分かってはいたが、一晩寝ただけで忘れるという甘い考えは通用しなかった。
彼女___それは大半の男にとって憧れるものであり、幸せの象徴でもある。だが忘れてはならない。男女の関係というものは大抵どこかで崩れ、別れがあるということ。しかも、振られた側は幸せの絶頂から絶望へと突き落とされるのだ。
だから、男女が付き合う前にはその覚悟を持ってほしい。
そう過去の俺に伝えられたら今の苦しみも少しはなくなるだろうか…………。
起き上がろうとして二度寝の誘惑に耐えられずにベットに伏すことを繰り返し、やっとの思いで起き上がった。ぼさぼさになった髪を軽く整え、リビングへと下る。何度も上り下りしてる階段で3度躓きかけた。いつもなら階段に寝ぼけた頭で少しケチをつけるところだが、今はなにもかもどうでもいい。躓いて転んで二度と起き上がれなくても。
そう。
彼女が俺と別れて幸せならそれでいい。
……いや、そんなこと一ミリも思っちゃいないが、そういうふうに自分を納得させているだけ。本当は……俺が幸せにしたかった。半端な気持ちじゃない。だが今更何言っても負け犬の遠吠えだ。俺よりも格好良くて魅力的な男なんて星の数ほどいる。そいつらを選んでも何もおかしいことはない。
そうなんだよなぁ………。今までうまくいってた事がおかしかった。そう思えば思うほど、彼女との別れに納得してしまう。その程度の覚悟だったんだよ。今じゃなくても、どうせいつか切り捨てられていたはずだ。
「………………っ…………」
「あのさー」
「何があったのかしらないけどとりあえず退いてくんない?」
振り向くと、朝を起きて間もないのかぼさぼさになった茶髪を手で溶かしている俺の姉がいた。
熱かったのか、ショートパンツに白Tとかなりラフな格好だ。
「うん、ごめん………。」
重い腰を上げ、ふらふらした足取りで階段を下りる。
「………………はあ」
「もうめんどくさいなー……後で話聞いてやるからとりあえずご飯食べなよ」
壁にもたれながら後ろから俺の頭をわしゃわしゃと撫でる姉の顔を見ると、自然と涙が出た。
「うん………ありがと」
濡れた頬をぬぐいながら、実に数か月ぶりに素直に姉に礼を言った。
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