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冷酷な黒帝〜旅する人型兵器〜  作者: 峯こうめい
イースト大陸編
4/5

強者の国・ベルガー王国

 俺たちは、花祭りを満足するまで見て、自然の国と呼ばれているユグドラ王国を去った。

 去り際に分かったが、フローリアはユグドラ王国の姫だったらしい。さすがは姫だ。花摘みの手伝いをしただけで、お礼として全国で使える入国許可証を貰った。

 

 一番最初の国であるユグドラ王国は賑やかな国だったが、次に訪れる国は血気盛んな国だ。

 その名も、強者の国・ベルガー王国。強者が自身よりも強い者を求めて訪れる国。


 国のど真ん中に、屋根の無い巨大な地下コロシアムがあり、ほぼ毎日、トーナメント制の熱い戦いが繰り広げられているらしい。


 最も欲している、愛というのは学ぶことができないかもしれない。しかし、戦いは時に絆を生み、友ができる機会にもなると聞いたことがある。

 絆、そして友、俺たち黒帝にも絆があり、友と呼べる関係なのか、正直分からない。戦友ではあるが、戦友と友は同じものと言えるのだろうか……。


「次の国では、いっぱい戦う(あそぶ)ぞー!」


 考え込んでいると、ネオンの明るい声に現実に戻された。


「間違っても殺さないようにな」


 オニキスがそう釘を刺す。


「それは大丈夫だぞ! あたしは、ちゃんと手加減してあげられるからな!」


「私、トーナメント、パスして良い? ほら、毒使うから、相手死んじゃうし……」


「俺も今回はパスだ。狙撃銃以外では戦えない」


「なら、残念だがサラとオニキスは観戦だな」


 賢明な判断だろう。


「我々四人か。二日滞在するのなら、一日に二人参加するのが良いのではないか?」


「あたしは今日がいいぞ! もう、待ちきれない!」


「私は、エル様と共に参加したいわ」


「ならば、我が今日行こう」


 そんなこんなで、話がまとまった。


 一本道の左右に咲いていた花々が無くなり、少し広くなった道の左右に木々が立ち並ぶようになった頃、ベルガー王国の街並みがうっすらと見えてくる。


 待ち切れずに速足になるネオン(速足といっても浮いているが)。ネオンに追いつくようにと、俺たちも自然に速度が速くなる。


 あっという間に街の入り口に着いた。審査は無いので、そのまま入る。


 隣国ということもあるのか、建物の特徴は、ユグドラ王国とあまり変わらない。

 しかし、旅人も住民も、男性の見た目が屈強である。さすがは強者の国だ。


「さあ、早くコロシアムに行くぞ、エルー!」


 一人で行こうとするネオンを追いかけて、中心にある地下コロシアムへ向かう。


 中心までは、十五分ほどかかった。

 入り口から中心までかかった時間を考えると、ユグドラ王国よりもそこそこ広いようだ。


 それもそうか……と思う。

 これほど大きいコロシアムを造れるほどなのだから。


 目の前に広がっているのは、噂通り、大きすぎる程の地下コロシアム。屋根は無く、逆円錐形になっている。国民全員、観客席に座れそうな程大きい。


 案内板に従って移動し、受付を済ませる。


 黒雨とネオンは控室に行き、俺含めそれ以外は、観客席に座った。


「エル、黒雨とネオン、どちらが勝つと思う?」


 隣に座ったオニキスに聞かれる。


 そう、俺たちからしたら、今回のトーナメントは結果が分かっているのだ。

 余程の化け物がいない限り、あの二人が負けることはない。


 唯一分からないのは、最後の対戦。黒雨とネオンの対戦だ。

 俺たち黒帝は、仲間同士で戦ったことはない。故に、どちらが勝つのか、予想することしかできない。


「どっちだろうな……。刀が届く距離まで詰められれば黒雨が有利だが、何せそこまで展開を運ぶのが厳しい。あとは、この場の魔素も関係してくるからな……」


「天気も重要ね。晴れのままじゃあ、黒雨は厳しいんじゃないかしら。遠距離攻撃がないもの」


 黒雨もネオンも、その場その時の状況に左右されやすい。それ故に予想がし辛い。


「どっちが有利だろうと不利だろうと、私はどっちにも勝って欲しいな」


 サラの言葉に頷く。


 賑やかになってきたなと思い、周りを見回すと、観客席が埋まりつつあった。始まりが近いようだ。


 数十分して、観客席は殆ど埋まった。そして、実況者の挨拶の後、トーナメントの開始が告げられた。


 一回戦はネオン対剣使いの青年。不運な青年だ。ネオンの攻撃は、初見ではほぼ百パーセント対応できない。

 勝負は一瞬で終わった。もちろん、ネオンの勝利だ。


 最後である四回戦目は、黒雨対魔術使いの男。魔術使い相手では、一見黒雨が不利かと思われる。しかし、黒雨には全属性魔術耐性が備わっている。超高位の魔術を使わなければ、全く効かない。

 黒雨の圧勝に終わった。


 黒雨とネオンの圧倒的な強さに観客が沸いている中、準決勝が始まった。しかし、それも一瞬で終わってしまう。


 実況者、観客ともに驚きを隠せないまま、昼休憩の時間となった。


 控室から出てきたネオンと黒雨と合流して、飯屋へ向かい、入る。


 一番高いランチを頼み、料理を待つ。

 店の中は、決勝戦、ネオンと黒雨どちらが勝つかの話題で賑わっている。


「久方振りの戦闘、少し腕が鈍っている」


「あたしは絶好調だぞー! 誰にも負ける気がしない!」


「今の言葉、挑発と受け取った。そう簡単には勝たせんぞ」


 ネオンも黒雨も、周りの予想は気にせずに、やる気満々のようだ。


 運ばれてきた肉料理を美味しく頂いていると、休憩はあっという間に終わってしまった。


 ネオンと黒雨はまた控室、俺たち観客組はさっきと同じ席に座る。


「ロゼリア、既に張られている結界を強化するようにして、結界を張ってくれないか? あの二人が本気で戦うんだ。お前の結界もないと観客も巻き込まれる」


「分かったわ。一番強力な結界を張れば、大丈夫でしょう」


 ロゼリアによって、透明だが超強力な結界が張られた。これで、観客に攻撃が飛んでいってしまうことはないだろう。


「さて、そろそろだな」


 オニキスがぼそりと呟くと、実況者が再開を告げた。そして、黒雨とネオンが向かい合うようにして、登場した。


 歓声が湧き上がる。自分が応援する方の名前を叫んでいる者もいる。


「それでは、戦闘開始!!」


 実況者がそう言って約一秒後、黒雨に向かって、赤色の波動が飛んでいく。常人では反応できないであろう速度で。

 しかし黒雨は、刀でそれを払った。


 ネオンの、もはやチート級である、俺たち黒帝にしか備わっていない固有魔術。魔素操作。

 魔術を使用するために必要な、空気中に大量に存在している魔素。本来ならば、魔素自体を操り、ましてや攻撃に使うなど不可能。しかしネオンは、それができる。


 ネオンの存在自体が魔術その物のようなものであるからだ。


 しかし、そんなネオンにも二つ弱点がある。一つは、魔素に属性を込めなければ対して強力でないこと。属性を込めるのには約一秒かかり、集中力が必要なため、近距離で絶えず攻撃されると相当不利になってしまう。

 二つ目は、その場の魔素が薄ければ薄いほど弱くなってしまうこと。逆に濃ければ濃いほど強力という訳だから、これは場面が限られる弱点だ。


「さすが黒雨ね。"雨粒切りの黒鎧"と呼ばれていただけあるわ」


 雨粒さえも切る男、黒雨。凄まじい動体視力と反射神経で、空から降り注ぐ雨粒さえも容易く切ってしまう。


 そして、黒雨の固有魔術は…………


「溜めていた力、今、一つ使おう。黒雨斬・黒雨(こくうざん・くろさめ)……!」


 黒雨が刀を天に向けて持ち上げると、刀身が真っ黒の水に纏われる。

 その刀を振ると、刀身に纏っていた水が拳大になり、五つ飛んでいく。


 そう、黒雨の固有魔術は、その時の天気に応じて使える魔術が変わるというもの。その数は、全部で九。


 刀を天に向かって力を溜め、魔術を使う。その場で使わず、そのまま刀に溜めておくこともできる。一つ一つの威力は非常に高く、単発の攻撃力なら、黒帝で一番かもしれない。


 しかし、ネオンが常に自身に纏わせている魔素をバリアを破ることができるか……。


 一つ二つ三つ、そして四つ目の水の玉が当たった時、バリアにヒビが入り、五つ目が当たった瞬間にバラバラに割れた。


 床に落ちたバリアは、空気中に溶けて消えた。


「ありゃ、さすがに黒雨の攻撃には耐えられなかったかー……」


 そう言うネオンは、赤の波動を左右から挟み込むように飛ばした後、真っ直ぐ飛ばした赤い波動に隠すように、今度は青い波動を飛ばす。


 黒雨は、ゆっくりと走りながら、左右の波動を刀で消し、正面も流れるように消した。


 しかし……


「ぐっ……!」


 隠してあった青い波動に反応できず、後ろに直撃してしまう。

 何とか踏ん張ったようで、吹き飛ばされはしなかった。


「さすがの黒雨でも反応できなかったねー。まだまだいくから、覚悟してね……!」


 容赦のない攻撃が黒雨に襲いかかる。


「なんか……黒雨の動きがさっきより鈍いわね……」


「あの青い波動のせいだろう。おそらく、氷属性だ」


 オニキスが冷静に解説する。


 こうなってしまったら、ほぼ勝ち目は無いが、どうする黒雨……。


黒雨斬・黒炎こくうざん・くろほむら!」


 黒雨は突然、波動を受けながら、晴れの時に使うことができる、黒炎を自分に向かって使った。

 刀身に纏っていた黒い炎が、黒雨の体を包み込む。


「うぉぉっ!」


 その状態のまま、ネオンに向かって走っていく。


 焦ったネオンは波動を何度も何度も飛ばすが、容易く刀で弾かれる。

 徐々に、二人の距離が近づいていく。


 黒雨の攻撃圏は二メートル。もうすぐだ。


「やばいやばいっ!」


 焦るネオン。


「ネオン、集中力が切れてきたね。まずいかも」


 サラの言う通りだ。

 先程まで有利だったネオンが、今は不利な状況に立たされている。このまま試合が進めば、黒雨が勝利する確率は高い。


 そして……黒雨がついに、刀が届く距離までネオンに近づいた。

 黒雨は、体を覆っていた黒い炎を振り払う。


「覚悟しろネオン……先程までの分、しっかりと返させてもらうからな……!」


 さて、そろそろ大詰めか……。

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