1.スライム焼肉、はじめました
お客様の期待が、お肉の焼ける匂いと共に私に届く。
屋敷の一部を改良して作られた店内は、テーブル席と片仮名のコの字にカウンター席で総席数四十ちょっと。少し変わっているのは、テーブル席はお客様自身で焼いていただくのに対して、カウンター席はスタッフが一枚一枚お肉を調理をする。
カウンター内側には合計三か所の焼き台が設置されており、お客様の目の前で調理をするんだ。
焼き台の中には火の魔法石が敷き詰められており、火力は強火から弱火、そして一番右には焼いた肉を休ませるためのスペースを確保してある。
「ラディア、三番テーブルさん片付けてお待ちの二名様をご案内して! 終わったらカウンター八番さんと十番さんに調味料の提供と説明も!」
「は、はいっ! 由佳さん、お待ちは現在八組様、先頭は二名様の後、三名様ですっ!」
「わかった!」
ホールでわたわたしているラディアのことは心配だけど、私も手元に集中しなきゃならない。頑張れ、若者よ。と言っても、私もまだ二十二の若者だけど。
いま焼いている肉は、しっとりとした食感がたまらない、牛で言うところの赤身肉だ。弱火でゆっくりと火を入れるのが私好み。
いまかいまかと肉を待ちわびるお客様の皿へ、焼きあがった肉を置く。
「お待たせしました。こちらはスライムの上赤身、まずはお塩でお楽しみください」
箸を持つお客様の手が震えている。
「これが……伝説のスライム肉……一度食べたら、その一生が報われるという……」
ここは、みんなに夢を与えるお店――焼肉屋。普通の焼肉屋とちがうのは、スライムを焼いているというところ。
はい、そうなんです。つい先日より、スライム焼肉、はじめました!
というわけで頭を空っぽにして読めるような作品を書き始めてみました。
少しでも楽しんでいただければ幸いです。
応援もよろしくお願いします。