1.不治の病
時は、西暦2160年
とある異世界、エルフの里に住んでいるスティファニー・オルティスは、元日本人男性が転生した金髪碧眼の超絶美少女エルフである。
彼女は、次期女王であり貧乳ぞろいのエルフ族の中でも非常に稀な【パイエルフ】という巨乳で激レアな上位種でもある。戦闘力は高く、魔王や古竜をサクッと倒すほどだがヘビなどの小動物を怖がってあっさり気絶する小心者でもある。
魔法もそこそこ得意で世界をまたいだ転移することができる唯一の存在だ。
時々地球に戻り芸能活動でお金を稼ぎ嗜好品を
とにかく説明するのが非常に面倒くさい人物だ。
彼女が140歳になる5月2日光の日のこと・・・
今まで様々な困難を乗り越えてきた彼女だが治療困難な奇病におかされてしまった。
「くっくっく、我覚醒せり!世界よ我が強大な闇の力に震えるがよい!」
その名も、中二病。
主に思春期の男性が患う病である。
ちなみに彼女は、光の日生まれの光属性なので今まで闇系の魔法はほとんど使ったことはない。
過去に一度【マイクロブラックホール】を使った際、あまりの威力にビビりまくりそれ以来使用していない。
ひらひらとした女の子らしい服を脱ぎ棄て黒色を基調とした中二っぽい衣装(十字架チャーム増し増し)に着替え鏡の前で謎のキメポーズをとる。
「闇の炎に抱かれて眠るがいい!(ビシッ)・・・・・・普通過ぎるかな?」
いまいち納得がいかないのか細かい角度調整を行い始めた。
「邪神滅殺目玉焼き!・・・・・・うーん何か違う」
しばらくして母から朝食を食べるように促されしぶしぶ部屋を後にする。
朝食を食べ終えたスティファニーは、指を開いた左手を顔に当て母に語りかける。
「母上、我が禁断の魔眼が世界の終焉を感じたのだ」
「・・・ど、どうしたのティファ?喋り方とか仕草が色々おかしいわよ?」
ちなみに、普段は「ママ」と呼んでいるし口調も普通の女性らしい感じである。
「母上は、世界の風の騒がしさが分からないと!?」
「か、風?(微風も吹いてないのだけれど?)」
「今も星が『急げ』と語りかけてきて左目が疼くのだ。我は、旅に出なければならない!」
「よく分からないけど旅に出たいってことよね?」
「然り!」
今回ほどではないが娘が意味不明な行動をすることは多々あったので飽きたら帰ってくるだろうと思った母は、許可を出すことにする。
「分かったけど、150歳の成人になるまでには帰ってくるのよ?」
「御意、聖戦が終わりし時に必ず戻って来よう」
母は、10年以内に帰ってこいと・・・エルフらしいアバウトすぎる返事であった。
スティファニーは、早速とばかりに転移魔法を発動し自宅を後にする。
◆◇◆◇
まず転移した先は、地球。
22世紀になり科学が順調に発展している。
スティファニーが生きていた21世紀初頭からみて幾つかの国が滅んだり名を変えたりとしており21世紀後半には【日本】も一度経済的に破綻し【新日本】となっていた。
ここは、新日暮里にある超高層マンションの一室である。
「バトラー、髪の脱色をお願い。あとカラコンってある?」
『脱色承りました。カラコンは、カラーコンタクトレンズですか?』
誰もいない空間に話しかけた筈なのに返答があった。
万能執事【バトラー】が優れた人工知能とインターネット接続により人間の使用人以上に対応をしてくれる。今時では、一家に一台は当たり前になっている。
「そうよ。」
『でしたら既に装着中のコンタクトアイモニターの反射光を調整することで視界に影響なく瞳の色を変更できます。』
「分かったわ、ありがと。あ、髪は傷めないように慎重に脱色してよね」
『了解いたしました。プラチナブロンド仕上げ15分で完了いたします。』
ロボットが格納ロッカーから現れスティファニーの頭髪を丁寧に薬剤を塗布してゆく。
さすがにロボットデバイスは一定以上の収入がないと購入できないが・・・その点でいえばスティファニーは、非常に裕福だった。
口調を元に戻していたのは、万が一の誤作動を防ぐためだが22世紀後半の科学力はそこまで低くない。
30年ほど前に、マッドな科学者の暇つぶしで再現された【ラ○゜ュタ】でうっかり滅びの言葉をつぶやいてしまい城ごと宇宙の塵になりかけたのだ。
今でも時々寝ているときにうなされる程のトラウマになっていたりする。
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『脱色完了いたしました。髪にダメージはございません。』
「ありがと。うん、文句なしの仕上がりだね!」
鏡で髪を確認して満足そうな笑みを浮かべる。
「じゃ、行くわ」
『行ってらっしゃいませ。』
無駄なことを言わないバトラーは便利だと思いつつスティファニーは、元の世界に転移していった。
自己満足でしかない中二心を満たすための旅が始まる。
ちなみにスティファニーのバトラーは、話しかけなければ待機の設定
ビックリするからいきなり話しかけられたくないとのこと。