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その転生ちょっと待ったぁぁ!  作者: 葉山輝翔
第一章 『絶望の幕開け』
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第一章6『終わりの始まり』

目を覚ますと白い天井が最初に映った。窓から差す光が眩しい、体を起こすと何処かもわからない部屋にいた。昨日の試験の傷がまだ癒えてないのか全身が少し痛む。


「ここは何処だ…確か俺はハイゲルさんと戦って勝ったはずだが、それからの記憶がねえ。ベットの上に居るってことは寝てたのか、てか足が重いな」


ユウキは違和感を感じて下を見ると、膝の上でエリスが腕を組んで寝ていた。


「うわっ!?なんでこんなところでエリスが寝てんだ!」


「ん…起きたのかユウキ、今日はいい朝だなあ」


大きな欠伸をしながら眠たそうな顔で話しかけてくる。


「口からヨダレ垂れてるよ」


「ヨダレ…?ーーッ!いや、これは違くてな、その…」


慌てて手でヨダレを拭きながらエリスは必死に何かを伝えようとしていたが、ユウキはエリスの発言を遮って、


「目覚めたらヨダレ垂らした可愛い女の子が迎えてくれるとかどんなご褒美だよ」


「そうやってまたお前はすぐからかう、でもユウキが喜んでくれるなら私も嬉しいかもしれない…」


「そんなこと言われたら俺変な誤解しちゃうからやめて!」


 思わせぶりな発言をするエリスに朝から激しいツッコミを入れてるとドアが開く音がした。そこに現れたのは身長が150cmぐらいだろうか、白衣を見に纏いピンク色のツインテールでピンク色の目をしている幼女感溢れる人だった。


「ロリナースも案外悪くないなぁ」


「なんかバカにされた気がしたんだけど。それよりもう目覚めたんだね、元気そうで安心したよ。エリス様もよく眠れたようで何よりです」


「おはようアリサさん、昨日はありがとう」


「そんな礼を言われることなど何もしてませんよ、アリサちゃんはただ怪我人を治しただけですし」


 ユウキの親戚に8歳の女の子がいるが彼女は自分の事を『ちゃん』付けで呼ぶのだが、とても可愛くていつも癒されていた。そして今似たような人が目の前にいる。見た目的には何も違和感はないのだが、エリスが『さん』付けで呼んでいるということは17歳以上となるのは必然だがそう考えると背筋がゾッとする。


「あのーアリサさんが俺の傷治してくれたんですか?」


「そうだよ。最初に見たときは本当に驚いたんだから!肋骨2本と左足首と右手首と左腕の骨が折れてたんだから、ハイゲルさんに勝ったのは凄いと思うけどユウキくんもあんな風になるまで無茶しちゃダメだよ!」


 アリサは顔をユウキに近づけながら言ってくる。骨がそんなに折れてたとは、考えるだけであの時の痛みが蘇りそうだ。それにしても顔が近い、柑橘系の良い香りがする、ユウキは緊張して顔が赤くなってきた。


「ひゃ、ひゃい!ありがとうございます。アリサさん」


「ふふ、なんだその変な声は。アリサさんはスペリアルウィザードの称号を持っている凄腕回復術師でな、アリサさんでなければユウキの傷がすぐ治ることはなかっただろう」


「エリス様にそう言われると照れます〜。ではそろそろ私は戻りますね」


するとアリサはユウキの耳元に顔を近づけ、


「エリス様にあんな心配されてたユウキくんってば羨ましいなぁ」


「ーーッ!」


そう囁くとこちらに手を振り部屋から出ていった。


「ハムラ・ユウキくんか…面白い子だなぁ」



「そういえばユウキ、ハイゲルさんがお前に用があるらしいから目覚めたら部屋に来いと言ってたぞ」


「げっ、用ってなんだ、負けた腹いせにボコボコにさせろとか…」


「そんな訳ないだろう。恐らく入団の件についての話だ」


 昨日の入団試験において間一髪でハイゲルに勝利し合格したユウキは既にルクシル王国騎士団の一員なのだ。ベットから降りて大きく息を吸って体を伸ばすと、


「うーん、よし。ハイゲルさんとこに行くか」


 ユウキは部屋を出てエリスに付いて行きながら長い廊下を歩く。時々騎士団員とすれ違うが騎士団員達は必ずエリスに挨拶をしていたのを見て、改めてエリスの凄さに感心しながら階段を登り続けて再び廊下にでると『ハイゲル・ルグ・クライシス』と書かれている扉の前に到着すると、なにやら扉の向こうから声が聞こえてきた。


「あんた、昨日入団試験を受けにきた子をボロボロにしたそうじゃないの!アリサちゃんから聞いたわよ。もういい歳なんだからしっかりしてよ!」


「うるせえな、あれには色々と事情があんだよ」


「言い訳不要!しっかり謝ってもらいますからね」


 言い争っているようだった。エリスが扉をノックすると、すぐに扉が開いた。すると目の前に全てを包み込むような白い長髪をなびかせ曇りなき純白な瞳でこちら見てくる女性が現れた。その姿はまさに天使と言うべきだろう、あまりの美しさに声を失う。


「ああ!エリス様」


「やはりさっきの声はマキナ師匠でしたか」


「聞こえてたのですか?やだ恥ずかしい」


エリスが師匠と仰ぐその女性はマキナと呼ばれていた。



空気が悪い、その一言に限る。今にも争いが生まれようとしていた。正確には目の前の二人の間でだが。

 マキナの誘導でユウキ達は椅子に座った。ユウキの隣にエリスが座りその前にハイゲルとマキナが座るという絵面となっている。しかしその場は静寂に包まれている、誰も喋らないのだ。マキナは何故か笑顔でこちら見てくる、ハイゲルは何故か鬼のような形相でこちらを睨んでくる、エリスは何故誰も喋らないのかわからないようでキョロキョロしながら三人の顔を見ている、とうとう我慢できずに声をあげたのはユウキだった。


「あのー、話ってなんですか?」


「ああ!君がハムラ・ユウキくんね。昨日はうちのアホが怪我させちゃったみたいで本当にごめんね、体は大丈夫?あなた、早くユウキくんに謝って」


「俺はアホじゃねえし謝りもしねえ。別に悪いことは何もしてねえからな」


 まるで親子の会話のようなやり取りだ。二人は互いに睨め合っているが二人から放たれる迫力で今にも吹き飛ばされそうだ。


「別に気にしてないんで大丈夫です。もうすっかり良くなりましたから!」


嘘だ。ユウキはハイゲルを殺してやりたい程憎んでいた、あの出来事を気にするなという方が無理である。


「あら、そうなの。それは良かったわ。実はユウキくんに提案があるんだけど、特訓受けてみない?」


「小僧、お前は確かに俺に勝った。晴れて騎士団員の仲間入りだ。だが正直に言おう、お前このままだと死ぬぞ。筋力、体力、剣技、あらゆるものが足りていない、これは小僧やエリス様の為を思って言ってるんだ」


「俺の事はまだしも、なんでエリスが…」


「エリス様はユウキくんに親身に接してらっしゃっている、ユウキくんが簡単に死ねばエリス様は悲しまれるわ。それがどれほどの罪なのか、言うまでもなくわかるでしょ?」


「ユウキ、騎士団前団長のハイゲルさんや王国三大魔術師のロズリア師匠の特訓を受けられるなど滅多にない事だぞ!頼んでも中々出来ない事だ」


 確かに特訓は良い。強くなれば死ぬ確率も低くなりもっと楽な思いが出来るだろう、しかも騎士団前団長や王国三大魔術師などのVIPメンツときた。もしかしたら『俺ツエーー』も夢ではないのかもしれない。だがユウキにとって昨日の出来事はトラウマなのだ。もしかしたらあれより厳しい特訓なのかもしれない、そう考えると恐怖で足が怯える。


「お誘いありがとうございます。ですがすいません、特訓の件は断らせてもらいます。俺は俺なりに必死に足掻いて生きるように頑張ろうと思います」


「そう…それは残念だわ」


「お前がそう言うんだったら俺は何も言わねえよ」


「ユウキ自身が決めた事だ、誰も否定はしない。それよりも二人はいつお戻りになるんですか?」


「今日の夜には王都から出る予定です」


「二人は王都に住んでるんじゃないんですか?」


「私達は王都の隣りの街に住んでるのよ。王都には挨拶や買い出しをしに来たってわけ。それじゃあそろそろお開きにしようかしら、エリス様、わざわざ足を運んでくださりありがとうございました。ユウキくんもありがとうね」


「エリス様、ますますのご健闘お祈りしております。小僧、お前は精々頑張って生きるんだな」


「こちらこそありがとうございました、それでは」


そう言ってユウキ達は部屋を出ていった。廊下を歩きながらユウキは考える。


「断ったのまずかったかな…」


「そんな事ない、決めるのはお前なのだからな。そういやユウキは王都に来るのが初めてだったな、これから私は用事で外に出るがついでに王都を案内しようか?」


 ユウキはこの国のことについては全く知らない、この機会で知っとくことも大事だろ。しかも年頃の女の子と二人きりで外出など滅多にないチャンスだ。


「いいね!まるでデートみたいだ」


「『でーと』が何かは知らんがユウキがそう言うのなら案内しよう」


「知らなくていいんだよ。さあ、出発しよう!」



歯車が1つ狂い始めていく。




































 

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