第一章3 『不思議な男』
ーールクシル王国騎士団本部某所
「例の計画はどうなっている?」
「今のところ問題は無い、このままいけば明日の夜には実行できそうだ」
「それは何よりだ、あの方はこの騎士団…いや、この国に不幸をもたらすお方だ。このまま生かしておくわけにはいかない」
「うおお!想像の3倍凄いなぁ!」
転移魔法により王都の騎士団本部の目の前に到着したユウキとエリスだが、初めて見る騎士団本部にユウキは感動していた。二つの塔がそびえ立ち、その周りに6階建てぐらいの建物が連っている。その中でも一番目につくのは、入口の上に掲げられており夜のライトに照らされてよりカッコ良さを醸し出している騎士団の旗だ。そのカッコ良さには、過去に置いてきた少年心を再び擽らせられる。
「そうだろう、我ら騎士団が誇る立派な建物だ。さあ、早く行こう」
ユウキ達は建物の中へと入っていった。しかし中に入ると意外な光景が目に入った。その雰囲気は少し薄暗く、遅い時間なのか人もいない。よく見ると所々に罅も入っている。まるでそこらへんの宿屋の様な雰囲気だ。てっきり外見があれだったので、中は金色に塗装され輝いており夜も多勢の人が広間で話しているイメージだと思っていた。
「お帰りなさいませエリス様。今回も大変な目に…お悔やみ申し上げます」
突如右隣りから声が聞こえた。
「ああ…ただいま、リリシアさん」
黒い長髪に黒い瞳、そしてけしからない胸を垂らしてメガネをかけている日本人らしいその女性はリリシアと呼ばれていた。
「エリス様、そろそろ『さん』付けはおやめ下さい。エリス様は人の上に立つお方なのですから」
「年上に『さん』付けするのは当たり前だ、リリシアさんの方こそ『様』などと付けなくていいのに」
うわぁ…絶対この会話って毎日続いて、結局一生問題が解決しない会話だ。そう俺は思いながら…
「てかエリスって何歳なの?」
「私は16歳だが?」
「俺17歳なんだけど」
「なに!?ユウキって17歳だったのか!?てっきり私よりも同年代か年下だと思っていたぞ」
「あれ?年上には『さん』付けするんじゃなかったけ?」
「いや、何故かお前に対しては敬意が必要ないと脳が私に命令している。むしろしっかり面倒を見てやらないとどこかでの垂れ死ぬかもしれないとな」
「ちょっと待ったぁぁ!つまり俺は、面倒を見ないといけないダメ人間ってか。お前俺の事そんな風に思ってたのかよ!」
「別にダメ人間とは言っていないし、今のは私ではなく私の脳が思っていることだ」
「それ結局お前自身が思ってるってことじゃねえか!」
二人はそう言い合いながら互いに睨み合っていると…
「あのー、エリス様、そのとても失礼でおかしな格好をしている男は誰ですか?」
「誰が失礼でおかしな格好をしているだとぉ!」
「すまない、説明が遅れたな。こいつはハムラ・ユウキと言ってアレスト森林で出会った男だ。なにやら私達と一緒に戦うために他の国からこの国に来たらしい、なので騎士団員登録の為にここに連れてきた。
ユウキ、リリシアさんは騎士団本部の受付係の人だ、なのでこれからよく世話になるだろう。ちなみにお前より年上だ」
あそこって森林だったのかよ、木どころか草も生えてなかったぞ。それよりも、俺より年上かぁ…しかもよく世話になるならここで下手に出れないぞ…
「俺の名前はハムラ・ユウキって言います、先ほどは失礼致しました。これから世話になると思いますのでどうぞ宜しくお願いします」
「そんなに堅くならなくて大丈夫ですが、今後エリス様への言葉遣いは気をつけるように」
「やっぱエリスって凄い人なの?」
「エリス様を知らないんですか!?エリス様はルクシル騎士団副団長で次期…
「さあ!そんな話はどうでも良い、それより早くユウキの登録をしよう!」
「いきなり大きな声出すなよ、てかエリスって副団長なのかよ。でもなんか強そうなのはさっき会ってから薄々感じてた」
あの様な暗くて危険な中一人だけで周りに目立つ火葬を行い、数少ない転移魔法を使える、そしてあの可愛らしい外見から放たれる迫力からエリスが強者ということぐらいユウキでもわかる
「まあ色々とあるのだ。それより早く始めよう」
「ハムラ・ユウキさんの騎士団員登録ですね。ではいくつか質問しますのでその質問に答えてください」
「貴方の名前は『ハムラ・ユウキ』ですか?」
変な質問だな
「はい」
「貴方は他の国から来たらしいですが、どこの国から来たのでしょうか?」
「そういえばまだ聞いていなかったな。リュッセル王国か?バラム帝国か?」
「この世界には三つの国しかないのか?まさか日本から来たなんて言えないし…なんかバラム帝国って名前かっこいいからバラム帝国から来たって言うか」
「まさか幻のにほんこくなんて言わないだろうな?」
にほんこくなどという国があるのか。恐らくその国名付けたのは日本人だろう。となるとこの世界にはユウキ以外の日本人もいるということになる。だがこれは都合が良い。
「実は…その幻のにほんこくだったりする」
「おいおい、冗談を言っていい場面ではないぞ。それににほんこくなんて世界3大幻の一つだぞ、世界中の研究者が探しているが1回もそのような国は見つかってないのだ」
「ですがエリス様…嘘発見機が鳴っておりません」
「本当か…壊れているのではないのか?」
「そんなはずないのですが…一応新品のものと取り換えてきます」
「てか嘘発見機なんて隠し持ってたのかよ!」
「当たり前です、今この国は大変な状況なので騎士団に入りたい人なんてまずいません。しかもそんな見た目で、どこから来たのかもわからない人を簡単に騎士団に入れられるわけないでしょう。もしかしたら敵かもしれませんからね」
疑われても仕方がないのかもしれない。逆にユウキの事を疑わないエリスの方がおかしいのだろう。
そう言うと、リリシアは奥の部屋から新しい嘘発見機を持ってきた。
「ではもう一度聞きます、貴方はどの国から来たのですか?」
「にほんこくですよ」
その場は静寂に包まれた。当たり前だ、何せハムラ・ユウキの生まれた国は紛れもない日本国だからだ。
「鳴らない…嘘…まさか本当ににほんこくから来たとは…これはとんでもない事実ですよ、これが知れれば世界中の研究者があなたのところへ駆けつけるかもしれませんね…」
面倒ごとに巻き込まれるのは望ましくない、適当なこと言って誤魔化そう。
「あのー、この事この場にいる3人の秘密にして貰えませんか?あまり自分の国について知られたくないんですよ。俺の出生は不明にして貰えると助かります。
「そうですよね…なんせ幻の国ですからね…わかりました、こちらでなんとかしましょう」
「ユウキは本当にあの幻の国から来たというのか!?その…絶対に秘密にするので、是非今度にほんこくについて教えてくれないか。一生に一度の頼みだ!」
「さっき俺に散々言ってきたくせに?」
「さっきの事はすまないと思っている…なんせ喧嘩なんて久しぶりなので、つい楽しくなってしまった。それに、先にふっかけてきたのはユウキの方ではないか!」
「喧嘩して楽しくなるとかサイコパスかよ!しかもなんで嬉しそうな顔してんだ!」
「あのー私からもお願いします。にほんこくについて喋れないのはわかります…ですがエリス様が嬉しそうにされることは滅多にない事なので…」
確かにさっきのは俺が悪いところもあるしな、エリスがにほんこくについて話してくれなければ嘘発見機が鳴って今頃どうなっていたか…
「仕方ないなぁ、今度教えてあげるから絶対に秘密にしろよ」
「わかった!」
嬉しそうなエリスの顔、可愛いなぁ。
それにしても…
「誰か知らないけど、にほんこく作ってくれた人ありがう!おかげで助かりました!」