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その転生ちょっと待ったぁぁ!  作者: 葉山輝翔
第一章 『絶望の幕開け』
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第一章2 『その転生ちょっと待ったぁぁ!』

「それにしてもなぜこんなとこにいる、ここは一般人が居ていいような場所じゃないぞ。それにしても見ない格好だな…」


 そう今のユウキ格好は、なんといってもオールジャージ装備である。長袖に長ズボン、足には室内用スリッパが装備されている。これがユウキの勝負服なのだが、殆ど家にいるユウキが室内着として愛用してるだけなので勝手に勝負服となった。恐らくこの格好のまま現世で死んだのでそのままユウキと一緒にジャージやスリッパも異世界転生したのだろう。この世界だとジャージのレア度はS S Sだろうが、耐久度はDぐらいと考えられるので裸同然だ。


「でもいきなり「異世界転生してこの世界来ました!」なんて言ったら絶対痛い目で見られそうだし適当に考えて言っとくか」


「実は俺他の国から来たんだ、それでこの服はその国にしか売られて無い限定品だから見慣れないだけだと思う」


「そうか、私の知識もまだまだ浅いなな。しかし、何故この時期に他の国からルクシルに来るんだ、この国が今どれだけ大変な状況かわかっているのか?」


「ああ…もちろんわかってるさ」


「ではなぜルクシルに来たんだ」


そう、普通の異世界ものだとここで、「俺はハムラ・ユウキ!この国を魔の手から救いに来た!」と、かっこつけれる場面なのだろう。しかし、現実はそう甘くない。

確かにユウキの目的はこの国を救う事だ。それは間違いないだろう。

だが、あのプリシラとかいう自称天使はユウキに何も与えなかった。実は火葬場に来る前に本当に能力が使えないのか試していたのだ。「ーーハッ!」とか「ーーフンッ」などと、人前では絶対に出来ない恥ずかしい事をしていたがやはり何も起きなかった。プリシラの言う通り、ユウキには本当に何も与えられなかったのだろう。


言葉に詰まったユウキは、


「そのー、なんていうかなぁ、まあ、つまるところ、団の皆さんを応援しに来ました!」


ハムラ・ユウキは咄嗟に嘘をついてしまった。自分は戦いたくない、だがこの世界にきた目的は国の救済の為に、悪の存在と戦うことだ。なので『応援』という都合のいい言葉が出てきてしまった。しかし、今の状況をわかっていてあの発言は場違いにも程があることぐらいユウキにもわかる。


「ーーっ!」


「お・う・え・ん?応援とは…お前は私達騎士団を馬鹿にしに来たのか?これが見えていないのか!日に日に死者数が増え、まともに戦える奴が減ってきており、皆心身共に疲れているのだ!応援されて勝てるのならこのような苦しい思いはしていない!応援など邪魔にしかならない!そんな事をしにきたのなら、とっととこの国から立ち去れ!」


そう言いながらエリスはユウキの胸ぐらを掴んできた。


「ひっ!」


エリスが鬼のような形相でこちらを見てくる。あんな可愛らしい顔からこんな表情が浮かび上がるのは、先ほどのハムラ・ユウキには想像もつかなかっただろう。


「あっ…いや、違うんだ。俺の国では応援ってのは戦うって意味なんだ。つまり加勢に来たってことさ!だから誤解だ!」


 咄嗟の回答でユウキはまた嘘をついてしまった。今の自分では戦っても何も出来ず、このままだと隣で燃えている死体の山に仲間入りする事になってしまう。そんな目に遭うのは絶対に嫌なので、国を救うのは諦めてどっか他の所に逃げようかと考えていた。

 しかし、目の前に居る少女のあんな顔を見せられたら本当の事など言えるはずがない。「国を救いに来たけど無理そうなので逃げます」などと。


ハムラ・ユウキは17年間の人生で初めて見栄を張った


「ああ、そうなのか…すまない、私も見苦しいところを見せてしまった」


そう言って胸ぐらから手を離したエリスは頬を赤らめてなにか反省したような感じだった。


「え、可愛い」


「ーーっ!」


 ユウキは自身が発した言葉に驚いた、なぜなら自分で意識してないのに言葉を発したからだ。だが、その言葉は嘘偽りのないものだと確信できる。なぜなら、目の前の姿が本当に可愛かったからだ。異世界ファンタジー恐るべし。

 そしてエリスもまた、ユウキの発した言葉に驚いた。


ユウキは一瞬自分の発言に驚いたが、エリスがさっきと同じ顔になっているのに気づきすぐに自分のした事を必死に対処しようと頭を回した。


「いや、これは違くて、いや違くはないけど…でも!本当に可愛くて…その…怒らせたなら謝る。ごめん」


「ふっ、ふははは!」


「え!?俺なんか変な事言った?」


「いや、すまない。他人に可愛いとあまり言われたことがないのでな、ましてや初めて会った奴に言われたのはお前が初めてだったので驚いてしまった」


 「こんなに可愛いのに初対面で可愛いって言われるの初めてなのかよ、そんなにこの世界の顔面偏差値は高いのだろうか…」


「ああ、後、私は興奮するとあの様な顔になってしまうらしいのだ。驚かせてしまったのなら謝ろう」


「そうなんだ、良かったぁ。本気で死んだかと思ったよ」


「私はそんな野蛮な奴ではない!」


「嘘嘘、冗談だって」


「おい、あまり私をからかわない方がいい。命がいくつあっても足りんぞ」


「なんかさっきと言ってること違くない!?」


「ハハッ、嘘に決まっているだろ、冗談だ」


 笑っているエリスに一杯食わされたものの、その姿も見惚れる程可愛らしく、悔しい気持ちもどっかに飛んでいってしまった。

 もう空は真っ暗だ、火葬の炎も死体の山と共に消えようとしている。


「そういえば、まだ名前を聞いていなかったな」


「ああ、俺の名前は『ハムラ・ユウキ』改めてよろしく」


「そうか、ハムラ・ユウキというのか。いい名前だな、改めてよろしく頼む『ユウキ』」


「ああ、こちらこそ」


「そういえば、ユウキは他の国から来たというが、どこか行くあてがあるのか?その見た目だと何も持って無さそうだが」


「そうなんだ、実は行くあてもないしお金もなくて困ってたんだよ」


「本当にお前は何しにこの国に何しに来たんだ」


「ほら…言ったじゃないか、一緒に戦う為に来たって」


「お前という奴は…私は感動して涙が出そうだ」


そんなに感動することか?


「そうか…行くあても、金もないのか、それなら私が保護しよう。信用してくれて大丈夫だ」


それは助かる。転生した直後はかなり絶望感に囚われていた。なにせ周りには何もなく誰もいなく、食えそうなものもない。もし、この炎を見つけてなかったら、サバイバル体験なんてした事ないユウキだったら1日も持たずにの垂れ死んでたろう。エリスには悪いが、少しお世話になった後今度隙をみてどこか他のところへ逃げよう。


「本当か!ありがとう!」


「さあ、もう炎も消えそうだしそろそろ戻るか、『転移』」


エリスがそう唱えると、彼女の首にかかっているペンダントが青白く光りだした。その瞬間、目の前に高さが2メートルあるかないかの楕円形の真っ白なものが現れた。


「これって魔法!しかも転移って言ってたから転移魔法じゃん、生で見るのは初めてだけど案外普通だなぁ。でもこれが異世界かぁ、すげぇ!」


「『いせかい』?というのはよくわからないが、まあそう驚くのも無理はない。この転移魔法は世界にも数少ない古代魔法『エンシェントマジック』でな、

このネックレスがあると使えるんだ。使える奴は私を含めて世界で数人ぐらいしかいないだろう」


「へぇ、そんなレアな魔法なんだ、もしかしてエリスって凄い人だったりするの?」


「そんなことは無い、私は一介の騎士にすぎないよ。しかもこの魔法は魔力を沢山使うから使い勝手が悪いんだ。…さあ、早く戻ろう。そろそろゲートが閉じてしまう」


「そういえば戻るって言ってたけど、どこに戻るの?」


「王都にある騎士団本部に決まっているだろう。私達と一緒に戦ってくれるのではないのか?ならばまず騎士団員の登録が必要だ。なに、心配する必要はない。本部には騎士団員の寮もある、ご飯も出るので生活するには十分だ」


「まずい、このままではまずい、てっきり宿とかに戻るもんだだと思ってた。なに、騎士団員登録とかあるの!?聞いてないよ!しかも本部で暮らすの!?そんなことしたら逃げられないじゃん!」


「痛たた、あれ、急にお腹が痛くなってきたぞ?ちょっと用足したいんだけど女の子の前じゃ恥ずかしいから、少し離れたところでしてこようかな…あと、絶対に見ないでよね!」


「何故そんなおかしな喋り方になっているのだ…大丈夫、転移なら一瞬だ。本部にはトイレもある、こんなところでする必要などない。さあ行くぞ!」


そういってエリスにジャージを掴まれそのままゲートに引きずられた。


「その転移ちょっと待ったぁぁ!」


そう叫ぶのも束の間、ユウキとエリスはその場から居なくなった。










「ああ、ついに見つけた…待っていてくれ、僕が必ず君を救ってみせる」


そう言うと、その男はその場から立ち去った。






























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