プロローグ1 『君に贈る鎮魂歌』
ーーああ、もうすぐ俺死ぬのかぁ。
真っ赤な炎に囲まれて俺はそう呟いた。
熱さで身体中から汗がこれでもかと湧き出ている。息が出来ない。
これ程苦しい思いをするなら、いっそ早く死なせてくれと願う。
ただ部屋に引き篭もってアニメを見ていただけなのに、何故こんな事に
なってんだ。俺がなにかしたのか。
まあ大方想像はつく。この火事の原因は事故ではなく他者によるものだろう。
両親はどちらも出張で今家には自分しかいない、そして俺は部屋でアニメを見ていただけ。なので事故は決して起こらないはずだ。
つまるところ、隣の家からの燃え移りか、最近近くにいるという噂の放火魔の仕業だろう。
我が家は木造建築の一軒家であり、かつ冬場で空気が乾燥していているので火の燃え移りが速くなり
不覚にも、アニメに集中していた俺は気づかなかったってところだろう。
まあ今はそんな事どうでもいい。もうなにも考えたく無い。
ーー熱い、熱い、熱い、熱い、熱い、熱い。
ーー苦しい、苦しい、苦しい、苦しい、苦しい。
こんなところで終わりたくない、まだやりたい事が沢山あったんだ。俺が死んだら父さんと母さん、なんて思うのかな。
だんだんと『熱さ』や『苦しさ』が和らいでくる感覚がある。
ーーまだ死にたくない
ーー誰か助け・・・
そうして俺こと、ハムラ・ユウキは命の灯火を消した。