天才な先輩
俺は早速文学部の部室へと向かった。ひとまず先輩に挨拶をするためだ。
「し、失礼します」
「あ、いらっしゃい!・・・先輩、来ましたよ」
そこにいたのは優一と眼鏡をかけた短髪の男性と長い髪を後ろで束ねたスレンダーな女性がいた。この二人が先輩だろう。
「君が優一が誘った新入部員か」
「は、はい。如月恭弥です。よろしくお願いします」
「僕は海原柊人。よろしくね」
海原先輩か。仲良くなれるといいんだけど...。
「ほら、空閑先輩も」
「私は空閑彩葉。よろしくねー」
「そして僕が星野優一。ようこそ、文学部に!」
部室はそんなに広くはないが、この人数ならちょうどいいくらいだろう。壁の本棚にはぎっしりと小説が詰まっている。
「まあ、とりあえず座ってよ」
俺は近くにあった椅子に座り、優一の話を聞く。
「文学部の主な活動内容は部誌を作ることだね。一ヶ月に一度のペースで短編小説とかを書いて、各教室に何冊か配るんだ。まあ、売れ行きは気にしないで」
そう言われてみれば、教室に置いてあった気がする。一回も読んだことないけど。
「だけど、この文学部には裏の顔がある。まずは海原柊人、彼は天才ミステリー作家の柊カイトだ!!」
「・・・。ええっっ!!!???」
俺は思わず立ち上がる。まさか大好きな作家がこんな近くにいたなんて、夢にも思っていなかったからだ。
俺は荒れる息を抑えながら、倒した椅子を戻して座る。最初にこの事実を知ってしまってはもう何にも驚かない。
「ふふーん、驚くのはまだ早い。続いては空閑彩葉、彼女は正体不明の恋愛小説作家、古鳥空葉だ!」
「うんうん・・・うえぇぇ!!??」
古鳥空葉といえば、メディアに一切コメントなどもせず、その正体についてはネットで論争になっているほどだ。その人がまさかこんな所にいるなんて・・・。
・・・待てよ?この展開だと、まさか優一も?
「そして僕が有名小説評論サイト『STARs』の管理人、YUIだ!」
「へー」
「え、なんか二人に比べて、反応がしょぼくない?もっと驚いてよ」
「常日頃から言ってるだろ。お前の裏は俺たちに比べて弱いんだ。せめて最初に話せ」
「てか、話さなくてもいいんと思うんだけどー」
「ひどいっ!!」
『STARs』のことは一応知っている。てか、小説を読む人は誰もが知っていると思う。このサイトの評価は間違いないと何人もの人が言っている。それだけ凄いサイトではあるのだが、まあ二人に比べると弱いよな。
「あれ、恭弥?大丈夫?」
「あ、ああ。すまない、ちょっと現実を受け止めきれなくてな。お前はこんなすごい人たちに囲まれていたのか」
「うん!僕の唯一の自慢だよ!」
「もっと他に誇れることを探せよ。今のところ、お前はただの悲しい奴だぞ?」
「恭弥までそんなこと言わないでよ〜」
「まあ、何はともあれよろしくお願いします、先輩」
「ああ、よろしく頼むよ」
「よろしくねー」
「ところで、一つお願いがあるのですが・・・」
近くにこんなすごい人たちがいるんだ。チャンスは今しかないだろう。
「俺に小説の書き方を教えてください!!」