気が合う友達
「君、本好きなの?」
星野が話しかけてきた。
「ああ、昔から小説はよく読んでいるぞ」
「じゃあ好きなジャンルは?」
「うーん、どのジャンルも読むけど、敢えて言うならミステリーかな」
「それはなんで?」
「まず小説としての面白さから、ミステリーに必要な謎解き要素まで考えているのが純粋にすごいと思うからだ。あんなの絶対に思いつかない」
てか、俺が質問したはずなのに、いつの間にか立場が入れ替わってるんだけど。まあ、いいか。
星野は黙ったまま、動かない。俺、なんかまずい事言ったかな?
「す、すごいよ!僕とまったく同じ意見だ!こんな人に会えるなんて、今日はついてるなー。あ、僕は星野優一。君の名前は、えーと、なんだっけ?」
なんだ、こいつ。急にキャラが変わりすぎだろ。まあ、こっちの方が話しやすい気はするけど。
「俺は如月恭弥。よろしくな、星野」
「よろしく。それと優一でいいよ、恭弥」
「お、おお。分かったよ、優一」
星野もとい優一は満面の笑みを浮かべた。俺はその笑顔に少し見惚れてしまった。いやいや、男だぞ?しっかりしろ、俺。
「そうだ、この本は『さざ波のリグレット』っていうミステリー小説でね、柊カイトの最新作なんだ。あ、柊カイトは知ってる?」
「ああ、もちろんだ。『兵隊の子守唄』や『コーヒーを飲み干して』などの多数の人気ミステリー小説を多数書いている人気作家だ。知らないわけがないだろう」
「さすがだね」
「でも、それはまだ読んでないんだ。ちょっと最近忙しくて、買えてないんだ」
「そっか。でも、絶対に読んだほうがいいよ!これは最高傑作と言っても過言ではない。僕なんてもう2周目だよ」
「早すぎないか!?」
「ついつい集中して読んじゃってね。たまにご飯ですら忘れることもあるよ」
「本当に好きなんだな」
「うん!・・・あ、そうだ。恭弥って部活に入ってる?」
「いや、どこにも入ってないけど」
「じゃあさ、文学部に入らないかい?」
「文学部かー。どんなことをしてるんだ?」
「所属しているのは僕と先輩が2人だけなんだけど、基本的にみんな自由な時間を過ごしているよ。まあ、本を読んでるのは僕だけなんだけどね」
「先輩2人は?」
「それは・・・入ったら分かるよ」
いや、教えてくれないのかよ。そんな悪いことをしてるのか?
「ごめんね、こればっかりは口止めをされてて。でも、危ないことじゃないから」
うーん、悩むな。自由なことを出来るのなら入ってもいいが小説を書く時間はあるのかな。
「お願い!先輩が卒業したら、人数が足りなくて廃部になっちゃうんだ。もし、あれだったら入るだけでもいいから。・・・ダメかな?」
昨日といい、今日といい、よくお願いされるな。そんなの聞かされたら、断るに断れないだろ。・・・この展開、昨日と一緒だな。
「分かった、入るよ。ちょっと待ってろ」
「本当かい?やった!!ありがとう!本当にありがとう!」
俺は職員室に入部届けを取りに行き、その場で必要事項を書いて、入部を完了した。
これで俺は今日から文学部だ。