星野って誰?
「ほ、星野?」
「うん、星野くん。恭弥くんも知ってるでしょ?」
「あ、ああ。もちろん知ってるぞ!」
・・・まじで分からん。そんな奴いたっけ?俺の記憶には存在してないんだけど。
「星野くんってね、とってもいい子なんだよ!私と席が近くて、よく話したりするんだけど、話が面白くて上手なの!あとね、この前偶然帰り道で見かけた時に、道端に捨てられた子猫を抱きかかえて連れて帰ってたの!とても優しい人なんだなって思って、キュンってしたの!」
俺はそれからも長々と知らない奴の話を聞かされた。その時間がどれだけ嫌だったのか、こいつは知らないんだろうな。
「それでそれで・・・」
「分かった!分かったから、ひとまず止まって」
「う、うん。ごめんね、つい熱くなっちゃった」
「それはいいよ。それで、何でそのことを俺に言ったの?」
「えっと、一つお願いしたいことがあって・・・」
すごく嫌な予感がする。出来れば、その先は聞きたくない。
「星野くんと仲良くなって、色々と聞き出してほしいの。好きなものとか、趣味とか、か、彼女がいるのか、とか」
やっぱりそんな事だろうと思った。正直やりたくないなー。
そう思って黙っていると、
「お願い!こんなことを言えるのは恭弥くんしかいないの!
幼馴染のためと思って、ね?」
奈々美は上目遣いで頼んでくる。それはずるいだろ・・・。
「はー、分かったよ。やるよ。やってやる。その代わり、なんか奢れよ?」
「ほんと?・・・や、やったー!!ありがと!」
奈々美はこれまで見たことのないような笑顔を見せた。その笑顔を見て、俺は複雑な気持ちを抱いた。
これで良かったんだよな・・・。
俺と奈々美は教室に戻り、その日を終えた。明日から頑張ろう。そう心に決めて、俺は家に帰った。
◇ ◇ ◇
次の日、俺は少し早めに学校にやってきた。もちろん星野優一と仲良くなるためだ。
教室に入って自分の席に着き、そこから辺りを見回してみる。そこから探してみるが、全員知っている人で、もちろんその中に星野優一はいない。
まだ来てないのかと思って、ふと窓側の後ろの方を見てみると、本を読んでいるクラスメイトを見つけた。おそらくこいつが星野なのだが、前髪が長くて顔が分からない。もう少し短くしろよ。
そして俺は意を決して話しかけることにした。
「よ、よお。それ何読んでるんだ?」
星野が俺の方を向く。その勢いで前髪が左右に分かれた。それにより、星野の顔が見えるようになったのだが、俺は星野の顔を見て驚いた。
そこにいたのはとても顔が整ったイケメンだったのだ。