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好きな人ができたよ  作者: 白崎 仁
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五年前〜前編〜



 柊人さんに会った日の夜、俺は不思議な夢を見た。夢の中で、自分が夢を見ていることに気付いたのだ。


 そこはとても見覚えのある景色。いや、忘れられないと言った方が正しいか。


(五年前の夢か……。嫌な夢だ)


 五年前の俺は小学6年生だ。なんだか懐かしい気もするが、どちらかと言えば来たくなかった。


「恭弥くーん!」


 聞き覚えのある声が俺を呼ぶ。後ろを振り返ると、そこには今より少し小さい奈々美がいた。


「奈々美か。どうした?」


 話しているつもりはないのに、俺の言葉が聞こえる。所詮夢の中だから追体験しか出来ないのか。使えないな。


「今から美佳ちゃんの家に行くんだけど一緒に行かない?」


「悪いけど、少し用事があるんだ。だから一緒には行けない。ごめんな」


 この時、俺は母さんのお見舞いに行こうとしていた。だから奈々美の誘いを断ったんだ。今思えば、ここで一緒に行っていれば、あんな事件は起きなかったのにな……。


「そ、そっか……。用事なら仕方ないね」


 奈々美は悲しそうな笑顔を見せると、そのまま走り去っていった。俺も後ろを向いて、母さんのいる病院へと向かう。



 病院に着いた俺は、すっかり行き慣れた母さんの病室に向かう。病室に着くと、一応ネームプレートでちゃんと母さんの病室かを確認して中に入る。


「おはよう、母さん」


「あら、恭弥。今日も来てくれたの?お母さん、嬉しいわ」


「当たり前だろー。約束したじゃん。毎日行くってさ」


「それは嬉しいけど、友達ともしっかり遊ばないとダメよ?特に奈々美ちゃんは昔からのお友達なんだから、ね?」


「わ、分かったよ。ちゃんと遊ぶから」


「うふふ、いい子ね」


 それから俺は母さんに色々なことを話した。学校でのこと、小説のこと、母さんへの話は尽きなかった。実際に俺が話してる訳ではないのだが、久しぶりに話せた気がしてとても楽しかった。



 話し込んでいたら、気付いた時にはもう夕方になっていた。


「あら、もう夕方じゃない。暗くなる前に帰りなさい」


「うん、分かったよ。また今度来るね」


 俺は病室を出ようとした。その時、母さんに呼び止められた。


「恭弥」


「ん?何、母さん」


「少し……早く帰った方がいいわ。何か嫌な予感がするの」


「嫌な予感……?」


「ええ、少し漠然としてるのだけど、お願いできるかしら?」


「う、うん、分かった」


 母さんの嫌な予感は昔からよく当たる。俺は少し急いで家に帰った。


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