休日サクシード
「なあ、最初はどこに行くんだ?」
「えーと、二階だね」
「じゃあエスカレーターを探さないとダメだな」
「うん!」
私たちはまず二階の洋服屋さんに向かった。私は恭弥くんに作戦を悟られないために純粋にショッピングを楽しむことにした。
「うーん、悩むなぁ〜」
「これなんかどうだ?」
恭弥くんは色々と私に勧めてくれる。意外とノリノリで嬉しいんだけど……
「なあ、これとこれはどうだ?」
「うーん、ちょっと地味かな〜」
「ならこっちは?」
「それだとバランスが悪くなっちゃうかも」
「うむむ、難しいな」
恭弥くんはちょっぴりセンスがない。それは仕方のないことなんだけど。
それから二店舗目に向かった。恭弥くんはさっきの店で疲れてしまったのかあくびをして眠たそうにしている。それに会話も途切れてしまった。
ということで私から話を振ったりしてみた。恭弥くんの受け答えが雑だったので矯正した後、次の店に向かった。
三店舗目でとうとう恭弥くんが禁断の質問をしてきた。やはり恭弥くんは女心というものが分かっていない。私が何とかしないと……。
その会話の後、恭弥くんは店の前のベンチに座りにいってしまった。まずい、何とかしないといけない。
私はみんなにメッセージを送った。
『緊急事態です!誰か店の前に来てください!』
『どうした?』
『恭弥くんが店の前に行ってしまいました』
『私が行くよ』
『あ、じゃあ彩葉さんお願いします』
どうやら空閑先輩が行ってくれるみたいで助かった。私はすぐに会計を済ませに行った。
その後も色々な場所に行き、帰ることになった。なんとか一度も恭弥くんに小説のことを考えさせなかったと思う。
私は小説を書くという恭弥くんの夢を応援したい。いつも人のために奮闘するけど、少しぐらいは自分のことを考えてもいいと思っている。
あの事件からもう五年も経つけど、恭弥くんはきっと私に負い目を感じていることだろう。もうそんなこと考えなくていいのに……。
私はメッセージで手伝ってくれたみんなにお礼を言って、寝ることにした。