休日エンカウント
俺は奈々美のショッピングに付き合い、今は三軒目に来ていた。
「なぁ、まだか?」
「まだだよ〜」
「……ずっと言わないようにしてたんだけどさ、買い物長くないか?」
俺のその一言を聞いた奈々美は真顔でこちらを向く。
え、やめて?真顔怖いよ?
「はぁ。もう恭弥くんは分かってないな〜。女の子のショッピングは長いものなの。気長に待ってあげないとダメだよ?」
やはりそういうものなのか。自慢ではないが、女友達は少ない。故に女友達と買い物に行くことなんてないのだ。分からなくても仕方がないだろ?
「分かった、気長に待ってるよ」
俺は店の前のベンチに座って待つことにした。俺が離れると奈々美は携帯をすぐに触った。そういえばさっきからよく触っている気がするのだが、気のせいなのかな?
「ふぁぁぁぁーー」
俺が大きなあくびをため息まじりで吐き出すと、
「大きなあくびだねー。こんなところで何してるの?」
そこには彩葉さんがいた。あんたこそ一人で何をやってるんだよ。
「あ、俺は友達の付き合いで……」
「ふーん、こんな店の前にいるってことは女友達かな?」
「え、ええ、まあ」
なんだ、この人。学校で会う時とまるでテンションが違う。学校では無気力でやる気が感じられないが、今はとても生き生きとしている。
「ふふっ、実は彼女だったりして」
「ち、違いますよ!」
「おぉ?なんだ、今の慌て方は。もしかして本当に?」
「だがら違うって言ってるじゃないですか!」
「あははっ、冗談だよ。じゃあまた学校でねー」
ああ、無駄に疲れた……。ていうか、なんであの人はここにいたんだ。見たところ何も持ってなかったし、今から買いに行くところなのだろうか?
「恭弥くん、どうしたの?」
「おぉ!急に話しかけないでくれよ。びっくりするだろ?」
「ご、ごめん。……ん?あれは文学部の人?」
「あ、ああ、そうそう。前に部室に来た時見ただろ?」
「うん、そう…だね…」
「ん?何か気になるのか?」
「う、ううん!なんでもないよ!ほら、まだまだ行くよ!」
「まだ行くのか!?」
奈々美の返事が微妙だったことに違和感を覚えつつも次の店に向かった。
その後は雑貨や食器などを見て買い物を終えた。とても疲れたが、息抜きにはなったと思う。これも奈々美の優しさなのだろう。まあ、奈々美だけではないことも分かっているけど。
家に帰った俺は今日一日のみんなの働きに感謝して、小説の続きに取り掛かった。






