休日大忙し
ある日曜日、俺は有木町の隣町である花咲町のショッピングモールに来ていた。……奈々美と。
「ほら、行くよ!恭弥くん!」
「分かった分かった、今行くから」
遡ること2時間前……。
俺はいつも通り、自分の部屋で小説を書いていた。休日にすることといえば小説を書くかゲームをするかの二択だ。当然宿題は終わらせてある。
小説を書きながらも少し行き詰まりを感じていたその時、ピンポーーンッッと玄関のチャイムが鳴った。休日に誰か来るなら、それは宅配便と相場は決まっている。俺は階段を降りて玄関に向かった。
印鑑を持ちながら玄関を開けると、そこには宅配便のお兄さんではなく奈々美がいた。
「やっほーー、今大丈夫だった?」
「大丈夫か大丈夫じゃないかで言えば大丈夫じゃないな」
「よし、大丈夫だね。ちょっと上がるよ」
「おまっ、勝手に入るなって」
「お邪魔しまーす」
奈々美は俺の話を全く聞かずに家に上がった。別に勝手に上がることは嫌ではないが、かまってあげられる余裕がない。冗談抜きで俺は今忙しい。
「で、どうしたんだ?」
「うーんとね、小説の調子はどう?」
「うーん、まあボチボチだな」
俺は少し見栄を張った。特に意識をしたわけではないけど気づいたら口から出ていた。
「その様子だと捗ってないね」
「え?」
なぜか一瞬でバレた。そんなに分かりやすかったか?
「恭弥くんがボチボチって言うときは全然ダメってときなんだよ」
まじか……。自分でも気づいてない癖とかってあるんだな。これから気をつけよう。
「まあ、その通りだ。実は全然捗ってない。今ちょうど行き詰まってる」
「やっぱりか……」
「ん?何か言ったか?」
「う、ううん、こっちの話!それでさ、気分転換と思ってちょっと付き合ってくれない?」
「……何に?」
「ショッピング!!」
こんな会話から今に至る。現在地はショッピングモール3階の洋服屋。奈々美の買い物は長く、一店舗目で1時間ぐらい服を見ていた。今はようやく二店舗目だ。
「これはどうかな?」
「似合ってると思うぞ」
「む、ちょっと雑だよ。女の子っていうのはね、褒められると喜ぶんだよ。だーかーらー」
「分かった分かった。……可愛いと思うぞ」
「うふふ、よろしい!」
こいつ、完全に楽しんでやがる。まあ、実際可愛いんだが、口に出すとなるとそれなりに照れる。
先のことを考えて、俺は頭を抱えた。