9.ガラドの呟き
俺の名はガラド・ロック。
爵位は男爵位と低いがアーズ王国・第四兵団・第一大隊の隊長をしている。
妻一人息子三人の5人家族だ。
個人的には娘が一人くらいいても良かったのだが。
いや、ハンナ別に息子達に何ら文句は無いぞ、ホントだぞ。
ただ娘に『私、パパと結婚する』って言われるのがちょっと夢だっただけだ。
父親なら一度は絶対に夢にみるものなんだ。
義弟のハンスも言っていたから間違いない。
え!ハンナそれはどうだろ?上手くいくかな?
でもエレンちゃん来年には12歳だぞ。ちょっと難しくないか?
寧ろ知られたら不味くないか?
あ、うん、ごめんなさい。
・・・さて我が家の家族を紹介に戻ろう。
まずは我が愛する妻、名前はハンナ。
可憐さ、強さ、賢さを併せ持つパーフェクトな女性である。
嘗ては第三兵団で隊長をしていた凄腕の魔法使いだ。
顔も可愛くて料理もうまい。俺のようなガサツな男には勿体無い女だ。
幼馴染とは言ってもなぜ俺のような男と結婚してくれたのか今でも分からない。
将来ロック家を次ぐであろう長男。
名前はシオン
顔はハンナに似ているが魔法の才は受け継がなかったようだ。
ただ剣の腕には目を見張るものがある。
かつて剣一本で冒険者から男爵になった祖先を彷彿とさせる腕前である。
幼少期からその才能の一片を見せていた。
その才能に胡坐をかくことなく修練を続けた結果、学園に入学してから卒業するまで学園最強であり続けた。
そして現在は第2兵団中隊長と同年代の出世頭である。俺も鼻高々である。
次男の名はクロード
顔は俺に似てイケメンである。間違いない。
ただ剣や魔法の才能に突出したものはなかった。
しかし、クロードはそんなことで腐るような男ではなかった。
そうそうに剣と魔法に見切りをつけると文官としての知識を身につけることに没頭したのだ。
もともと文官としての才能があったのだろうか。
いやあの努力を才能などというものと同列に並べてはいかん。
俺のような武力一辺倒な男から生まれたとは思えんほどの男だ。
いやハンナは俺と違って頭が良かったからその血だな。
最後に三男のテッド。
顔全体の印象はハンナに似ているが鼻とか口あたりが俺に似ていると思う。似ているよな?
ま、まぁ顔つきについては良いんだがこのテッドもしかしなくても上二人の兄より優秀なのだ。
そんなテッドに対する二人の兄の反応に不安があったのだがさすがハンナと俺の息子達だ。
長兄のシオンは自分が学園に入学したとき以上の実力を持つ弟に対して初めは大きなショックを受けたようだがすぐに立ち直って弟の越えられない壁であり続けようと今まで以上の鍛錬を行うようになった。
次男のクロードは学園入学可能の学力を持つテッドに呆然としていたがテッドにスゴイスゴイと言われているうちに気を良くしたのだろう。
弟の全ての疑問に答えるべき王国図書館全ての書物を読むのではと思うほど毎日大量の書物を読むようになった。
クロードのことだから大丈夫だと思うが少し心配になるくらいだ。
それで肝心のテッド本人についてである。
テッドはそれはもう可愛くて・・・・
違う違う。
テッドも5歳まではごく普通の子供だった。
しかし、初めてハンナの魔法を見たときからその才能を発揮し始めた。
まず、魔力を感知しその上視認しているというのだ。
魔法の才ある子供はスキルを獲得するまえに魔力を感知することがあるらしいが魔力を視認するなんて言うのはあるのかもしれないがスキルでさえ聞いたことがない。
一番心配なのは神殿の連中が魔族扱いしないか心配なことだ。
スキルとはスキルなしで魔法や高い身体能力を持つ魔族に対抗できるように神から授かったと神殿の連中が言っている。俺は神殿の連中が権威付けに言っているだけだと思っているがあいつらに目を付けられると面倒だ。
いつまでも隠し切れないと思うがテッドには魔力を視認できることを知られないように注意した。
テッドの規格外の才能はこれだけでは終わらない。
初めて剣の稽古をつけたとき、微弱ながら身体強化を使って見せたのだ。
しかも微弱な身体強化が日に日に強力になっていき今や間違いなく身体強化スキルと同等以上の力を発揮していた。
それだけでも十分驚きなのになんと魔物をテイムしたのだ。
街中にいる無害な魔物であるグミスライムだがテイムしていることには間違いない。
テイムスキルを持つ俺が確認したから間違いない。
俺から出ている魔力の流れを真似したらできたというんだ。
魔力を視認したことだけでも驚いたのに身体強化、さらにはテイムをスキルを授かる前にやってのけたのだ。
スキルを授かる前にそんなことができたと教会に知られたらほんとに不味い。
テイムしたグミスライム、グミオウはペットと言うことにしよう。
弱い魔物には良くあることだ。
テイムした魔物を良く飼いならした後、テイムを解除してペットにするということが。
とにかくテッドには十分注意するように言ってあるので大丈夫だろう。
何せクロード並みに賢いからな。
何かあれば俺が全力で守れば良いだけだ。