5.テッドは魔力視を手に入れた
父様に魔力操作のことを絶対秘密にするよう言われてた日から3年。
俺は8歳になった。
父様に魔力を操作のことは秘密にするようにと言われたことは今も守っている。
天才的才能に胡坐をかかずに練習しなければならないので誰にも見られないように隠れて練習している。
決してボッチではないぞ。ボッチとは友達がほしくても友達ができない人のこと言うんだ。
俺は望んで一人でいるんだ。
決してボッチではない。敢えて言うなら孤高の天才だ。
大丈夫、学園に行けばきっと友達100人できる。
そう後2年の辛抱だ。
とにかく毎日魔力操作特訓をした結果全身に魔力を巡らせることが可能になった。
それだけじゃなく魔力視(魔力を瞳に巡らせることと毎回いうのは面倒なので在り来たりだけど名前を付けた)も成長した。
以前以上に魔力をハッキリ視認ができるようになった。
それに瞳の状態を変化させることもできるようになったのだ。
そのおかげで遠くもよく見えるし夜も明かりいらず。
この3年で新しい出来事や発見もたくさんあった。
父様の許可がでた一年ほど前から素振りをはじめている。
入学試験には実技試験として模擬戦があるのだ。
前世では体育の授業で剣道をしていたくらいの経験しかない。
これは忌々しき事体だと父様に相談したところ父様やシオン兄さんが家に帰って来たときに俺の訓練の相手をしてくれることになった。
とは言っても俺が打ち込むだけ。二人が反撃してくることはない。
なぜかって?そんなの決まっている二人に反撃なんてされたら下手したら俺が死ぬからだ。
一度二人の模擬戦を見学したんだけど何しているのかほとんど分からなかった。
脳も目も全力で強化した状態で必死で見ていたのに関わらずだ。
普通、離れた場所で観察したら全体の様子が良く分かるはずなのにな。
ただ、何も得られなかったわけじゃない。
まず二人は身体強化スキルを持っているようなんだ。
俺の魔力操作と違って二人とも魔力が螺旋状に渦巻いていたんだ。
そして二人とも剣を振るたびに魔力の流れや強弱に変化が見られた。おそらくこれが剣術スキルの効果だろう。
というわけで魔力を螺旋状に渦巻かせる練習と剣を振るのに合わせて魔力を操作する特訓が今の主な練習になっている。
どちらもまだまだ。要練習だ。
この3年でクロード兄さんにも何度も合っている。
クロード兄さんも学園を卒業して希望通り王都で文官として働いている。
偶に帰ってきたときには俺にいろいろ教えてくれる。
おかげで学園入学試験に関してもバッチリとお墨付きも貰えた。
「クロード兄さんって頭良いよね。」
そうクロード兄さんはとんでもなく頭が良い。
王国の歴史、貴族の名前、貴族の繋がり、農学知識、基礎科学知識、算術等々思いつくだけでもこれだけの豊富な知識を持って俺の質問にスラスラと答えてくれる。
「そうか?」
「だって王国の歴史は年代から全部言えるし、貴族の名前は一族すべて覚えてる。難しい算術もできてその上農業知識もあるんだよ。将来は王国の宰相だね。」
年表を覚えるのってすごいと思うよ。俺が分かるのはいい国(1192)作ろう鎌倉幕府くらいだ。
それに貴族の名前。同じような名前バッカリでさっぱり。その上爵位がある。男爵と伯爵に同じ名前の人がいる。妾や庶子も入れたらとんでもない数。俺はもうすべて覚えるのは諦めた。
「何言っているんだ。そんなのは文官にとっては常識だ。その程度では宰相なんて夢のまた夢だ。もっと色々学んだ上で実績を積んでやっと本格的に文官としてスタートするんだぞ。」
ウヘェ。俺絶対文官にはならないぞ。将来の第一候補は冒険者で一山当ててあとは悠々自適に暮らすんだ。
「それにテッドに頭が良いと言われても嫌味にしかなってないよ。」
クロード兄さんがジト目で俺を見てくる。
クロード兄さんはイケてる眼鏡男子なので俺が女子だったら頬を染めているかもしれないが俺は男なので全然嬉しくない。
「嫌味ってクロード兄さんは人に自慢できるくらいスゴイ兄さんだよ。」
「テッドが嫌味で言ってないのは分かってるよ。ただ俺と同等の算術な上に俺が学園入学時以上に歴史を理解している弟に言われてな・・・。」
「え、え~と。ゴメン?でもクロード兄さんが物知りなのは間違いないよ。俺ご疑問に思ったことに何でも答えてくれるし。」
俺が算術がクロード兄さんと同等なのは前世の知識があるからだ。
前世で大学までいった俺と同等なクロード兄さんのほうがスゴイのだが・・・
歴史に関しても前世の知識に引きずられないように5歳のときから覚えたのだ。
「謝らなくても良い。俺も良い刺激をもらった。正直、同年代ではトップであると思っていたがテッドのお蔭で自分がまだまだだと分かったよ。」
いや~、クロード兄さんがまだまだってそれはないでしょ。
ヤル気に満ち溢れた瞳をしたクロード兄さんを見ながら思った。
今日も今や日課となった素振りを終えた。
「フ~、いい汗をかいた。そろそろ休憩しよう。」
毎日意識しながら素振りをやっているお蔭か魔力の流れや強弱の付け方がよくなっている気がする。
今は何とか体の外に魔力を出せないか思考錯誤しているが上手くいっていない。
どうやら今のままでは体外に魔力を出すのは無理なようだ。
取りあえず魔力を体外に出すのは今後の課題にしてもう一つのことをやってみようと思う。