4.テッドはグリフォンの知識を手に入れた
前世の記憶を思い出して母様の魔法を見て魔力操作の可能性を見出した翌朝。
「テッド~、起きなさい~。ガラドが帰ってきてるわよ~」
「ふぁ~い!」
ね、眠い。あと五分って言いたくなるくらい眠い。
昨日調子に乗って暗くなった後も魔力操作の練習をしていたので寝るのが遅くなった。
前世の記憶ではもっと遅くに寝ていたはずなんだけどな。
やはりテッド君はまだ幼いから睡眠を体が必要としているからだろう。
知識チートによれば睡眠時間が短いと身体の成長に悪影響を及ぼすらしいから今日からはもっと早くに寝よう。
昨日は興奮していたから仕方ない。
しか~し、夜遅くまで練習したかいあって魔力操作レベルが上がった。
魔力操作がスムーズになった上に脳を強化すれば合計3か所も強化できるのだ。
今も脳、瞳、脊髄に魔力を巡らせている。
「・・・父様、お帰りなさい!」
予想だにしない光景に驚いて挨拶の前に変な間が空いてしまった。
決して父様が体が大きくて顔が強面だから驚いたわけではない。
テッド君の記憶にハッキリと父様の姿がありましたから。
・・・父様、ごめんなさい。ちょっと驚きました。
驚いた理由の大部分は父様と母様の体が光っていたからだ。
とくに心臓と臍の中間点が強く光っている。
フッフッフ、テッド君の天才的頭脳を持ってすれば答えはすぐに導きだされる。
この光の正体は魔力だな!
え?誰でも分かりますか、そうですか。
これで魔力を瞳に巡らせると魔力を視認できるようになることが確定だ。
魔力操作がもっと上達すれば他にも何かできることが増えるだろう。
考えるだけでもワクワクしてくる。
おっと、興奮して夜更かししないようにしないと。
「テッド、ガラドの顔が怖いからってそんな反応したらダメよ。」
母様、何を言っているんですか。
ぼ、僕は父様を怖がってなんていませんよ。
父様もそんな悲しそうな顔しないで!
「ち、違うよ!」
やべ、焦って噛んじゃったよ。
ますます父様の顔が暗くなる。
「でもテッドはガラドの顔を見てよく泣いてたじゃない。」
母様それはいったい何時の話ですか?
俺には全くそんな記憶はないんだけど?
父様が母様の言葉で死にそうな顔になってるんですけど。
「母様、それっていつの話ですか。驚いたのは父様と母様の体が光って・・・」
これって言っても大丈夫なのかな。
いや、せっかく父様もいるんだからいろいろ聞いて情報収集だ。
最近のラノベでは家族に冷遇される話もあるけど、父様と母様に限ってそれはない・・・はず。
「「光って?」」
おお、母様と父様がハモった。さすが有名オシドリ夫婦(勝手な想像)。
「えっとね。父様と母様の身体が光って見えるの。だからビックリしたんだ。ごめんなさい、父様」
「テッドが謝る必要はないぞ。俺が勘違いして勝手に悲しんだだけだからな。」
父様に元気が戻ってよかった。ちょろいぞ父様。
「キャー!テッド、あなたは天才だわ!」
「エ!エ!」
気が付いたら母様に抱き上げられていた。
さっきまで父様の隣にいたよね。
確認するかのように父様を見るがなぜかウンウン頷いている。
「テッド、光って見えるって言ったな?」
「うん。」
父様、近いです。
意識外から目の前に父様の顔が眼前に来るとビックリします。
「因みにどうして光って見えるか分かるのか?」
「たぶん魔力が光って見えるんだと思うよ。心臓と臍の中間点が一番強く光っているから。」
「テッドは魔力器官についてもう知っているのか。」
魔力器官って何ですか?
新しい言葉が出てきたぞ。話の流れから魔力を生成する臓器なんじゃないだろうか。
「魔力器官っていうのは知らないけど昨日母様に魔法を見せてもらったときに魔力を感じた場所がそこなの。」
「ん?昨日は魔力の光が見えてなかったのにどうして今は見えるんだ?」
父様なかなか鋭いです。
「たぶん魔力を目に集めたらかな?」
「スキルを授かる前に魔力を感じるなんてやっぱりテッドは天才に違いないわ。」
母様が頬擦りしてくれる。
グフフ役得役得
「エヘヘ~。」
やっぱ、俺って天才なんだ。
いや、神童も二十歳過ぎればただの人って言葉があったよな。
慢心ダメ絶対。
たまたま前世の記憶が蘇ってアドバンテージをとれただけだ。
ここで慢心せずに努力を続けないと本当の天才どころかちょっとデキの良いヤツにも負ける。
自分不器用ですから。
「そうか。」
「そうそう、昨日はたくさんお勉強もしたのよね。」
おいおいそんなに褒めるよな。テレるなぁ~。
「はい。アーズ王国のこと、学園のこと、騎士団のことを勉強しました!」
フッフッフ、今なら何でもできる気がする。
「テッドの将来が楽しみだな。」
「テッド、テッド。そういえばガラドに聞くことがあったんじゃない。」
父様に聞くことなんてあったかな?
う~ん、そういえば父様の体から魔力の糸が外に向かって伸びているのが気になるけどそのことじゃないよな。
この魔力の糸ってもしかして父様の従魔に繋がっているのかな。
思い出しました。
「父様、父様の従魔ってどんな魔物なの!」
「フッフッフ、俺の従魔は空を飛べるグリフォンだぞ。」
グリフォンってアレか。
ワシとライオンがコラボしているヤツだっけ?
空を飛べるってことだから多分合ってる。
「お空を飛べるんですか?」
「ああ、飛べるぞ。」
「僕も飛びたいです!」
「う、う~む。」
アレ?父様が渋い顔をしている。
グリフォンって恐らくかなり強力な魔物だから勝手に乗り回したりできないのかもしれない。
「そうだな、今は無理だがテッドが学園に行くときはグリフォンで送ってやろう。」
「やったー!ありがとう、父様」
父様に騎士団のことや魔物討伐、グリフォンについてとたくさん教えてもらった。
「・・・テッド魔力が見えることを他の人には言ってはいけないよ。」
父様が真剣な表情で俺に忠告してくれた。
スキルを授かる前にこんなことが出来た人が今までいなかったのかもしれない。
もしかしてこの世界はスキル至上主義でスキルなしで特殊なとこができるのは禁忌とか。
「はい、分かりました。」
こうして父様は再び騎士団の仕事に出かけて行った。
俺も魔力操作をもっと上達させよう。