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「後をつけられてる?」
学園から出て市場に入った当たりから今までずっと同じ魔力反応を持つ生き物が俺の魔力探知内にいる。
「どう思うグミオウ。」
グミオウもポヨンポヨンしながら俺の考えに賛成している。
う~ん、どうしよ。必要な買い物が済んだのでここはラノベの主人公みたいに対処してみようか。しかし、慢心はダメだから一応保険はかけておこう。
雑貨店と八百屋に挟まれた小道を入って人の少ない裏通りへと進む。
この先にちょっと開けた広場のようになった場所がある。そこなら人の迷惑にもならないだろう。
目的地に辿りついて足を止める。
相手の気配は暫く動かなかったけれど、俺が動かないことに痺れを切らしたようでゆっくりと近づいてきた。
安全のためにグミオウに隠れてもらおうと思ったが頭から動こうとしないので諦めた。
灰色のローブで頭まで覆った人物が広場に現れた。
身長は俺と同じくらいだ。魔力視で見える魔力はフレアよりも多い。
かなり怪しい人物だが男爵の三男坊である俺には縁がなさそうな人物である。
父様を逆恨みした誰かの差し金か?
帝国や聖教国との戦争で父様に打ち取られた親類縁者の類ならあり得るかもしれない。
「そこのお前、その剣はどうやって手に入れた。」
どうやら父様は全く関係ないようだ。
「それはこの木剣のことか?」
この木剣一号は幼少期に父様からもらってからずっと俺の魔力を付与し強化してきたものだ。
父様から貰った大切な品だが物としては普通の木剣のはずだ。
「そうだ。その木剣だ。どこで手に入れた!」
なぜか灰色のローブの人物は怒っているようだが理由が分からん。
この木剣のことで怒っているようだが我が家にあった普通の木剣でしかないのに。
「どこでって、これは俺がまだ幼いときに父様から貰ったものだ。」
俺の言葉が気に入らなかったのかローブの人物の魔力が膨れ上がった。
いつ襲い掛かってきてもおかしくないほどだ。
ただこの人物がさして強くないことも分かった。魔力が溢れるということはそれだけ魔力を無駄にしているからだ。
父様やシオン兄さんならこんな無様なことはしていない。
「そんな見え透いた嘘で騙せると思っているのか!そんな濃密な魔力を纏ったものなど生きた世界樹しかない。つまりそれはごく最近世界樹から切り出したものだということだ。」
世界樹ってあの世界樹ですよね。
確かロック領の南にある森の奥にある巨木の名前だったはず。
シオン兄さんに教えてもらった知識ではエルフ国も世界樹の傍にあったはずだ。
ん?
ってことはこのローブの人物はエルフなのか!
おお、ファンタジー世界の定番ですよ奥さん。
「フッ、何も言えないということは肯定しているのと同じだぞ。友好国の人間だから穏便に済ませようかと思ったがやはりダメだな。世界樹を害した悪魔の手先となったことを悔いながら逝け。」
余計なことを言ったら火に油を注ぐと思って話を聞くとこに徹していたら勝手に悪者にされてしまった。
しかも既に俺に向かって魔法を発動しようとしている。
俺も勝手に悪人にされて黙ってやられてやる理由はない。相手が憧れのエルフだとしてもだ。
魔力を練って魔力をエルフにぶつけて魔法を阻害する。
「な?貴様何をした。」
発動途中の魔法を阻害したのが俺だと気が付いたようだ。フレアが初見で困惑していたのにな。エルフは魔法適正が人族よりも高いことが関係しているのだろうか?
「私が魔法だけしかできない人族の魔法使いと同じだと思うなよ。魔法がダメなら剣で攻めるだけだ。」
魔力を下半身に貯めたエルフは抜剣して一気に距離を詰めてきた。
フレアに比べれば早いがシオン兄さんよりは遥かに遅い。
つまり余裕で躱せるというわけだ。
エルフの剣を躱し魔法は阻害する。相手はアーズ王国と友好的なエルフだ。ただの誤解でエルフとの友好関係を壊すわけにはいかない。
「おのれチョコマカ逃げるな!」
何言ってるんですか?この暴走エルフは。
逃げなきゃ死んじゃうじゃん?
「いやいや、勘違いで死にたくないですから。」
「戯言を!悪魔の言葉に騙されんぞ。」
う~ん、全く聞く耳を持ってくれまない。何とか戦闘不能状態にしないとダメだな。
となると狙うはアレだな。
エルフの斬撃を躱しながらチャンスを待つ。ただ街へ被害を出さないためにエルフの魔法を阻害するのがたいへんだ。エルフだけあって魔力操作が巧みで魔法の発動までのスピードが速いので非常にシビアな対応が必要なのだ。
少しは街への被害も考えて欲しいものだ。
「こうなれば奥の手だ。」
どうやら何か大技を使ってくるようだ。それを態々言うってのは罠?それとも生真面目な性格なだけか?
エルフが魔力を高めて剣に魔力が渦巻いていく。
ただ生真面目なだけだったようだ。
エルフの剣に風が渦巻く。初めて見るがおそらくこれが上級スキルである魔法剣の一種だろう。
俺も効果は分からないが魔力糸を最大限木剣一号に渦巻かせる。
エルフは今までにないスピードで付きを放ってきた。
おそらく風の魔法剣で突きのスピードと威力を底上げしているのだろう。
ただそんな突きも俺の魔力視は捕らえている。
魔力糸を渦巻かせた木剣一号でお決まりのパターンであるが一気に巻き上げた。
「何!」
エルフは剣を巻き上げられ隙だらけだ。
このスキに自在剣で簀巻きにした。
「ギャ。」
バランスを崩して倒れた。両手両足を縛ったので受け身を取れずにおもいっきり地面に体を打ちつけたようだ。
「クッ、解け!」
捕縛して気が付いたんだけどこのエルフは女性だ。捕縛した結果立派な双丘が現れたのだ。
この世界のエルフはエロフだったのだ。
取りあえず合掌。
「な、なんだ。貴様いきなり手を合わせて!ま、まさか私を殺すのか!国際問題になるぞ良いのか!」
あなた俺を殺しにきて自分は殺されないと思っていたのか?
しかも何でそんな涙目になってんだよ。これじゃ俺が悪いみたいじゃんか。どうなってんだよ。
「テッド、これはどういう状況なんだ?」
どうやらシオン兄さんが俺の伝言を聞いてやって来てくれたみたいだ。
「俺は悪くないよ。」
一応無罪を主張しとかないとね。




