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10.テッドはハンカチとチリ紙を手に入れた

俺は父様の横薙ぎの一撃を防ぎきれずに吹っ飛ばされたが母様の魔法で傷は完全に治った。

父様は母様にコンコンとお説教されたらしい。

俺は意識を失っていたので気がつかなかったけど。

そのあとシオン兄さんとも模擬戦で打ち合ったがやはり本気になったシオン兄さんに瞬殺された。

身体強化がレベルアップしたから良い勝負ができるかと思ったけどそんなに甘くはなかった。

今は慢心することが出来なくなったことを喜んでおこう。


この2年は新しい発見はできなかったが魔力の圧縮、魔力操作、魔力視、魔力糸を重点的に強化できた。

慢心することなく毎日訓練したおかげで本気の父様とシオン兄さんの本気の模擬戦で10回くらいは剣で打ち合えるようになった。

一度くらい勝ちたかったと言ったら「学生にすらなっていないヤツに負ける騎士がいるわけない。」と至極当たり前のことを言われた。

確かに守られるべき者に守るべき者が負けていたらダメだよな。

それにシオン兄さんは学園で不敗神話を打ち立てた天才。五つ以上年下の弟に負けるわけない。

いつかシオン兄さんに一太刀入れるのが目標だ。



「テッド、忘れ物はない。ハンカチ持った?チリ紙は?」

母様は心配性ですね。天才テッド君の辞書に忘れ物などという言葉はないのです。

「母様、大丈夫です。俺はもう学園に入学するのです。自分の身の回りのことは自分で出来ますよ。」

「そうだぞ。ハンナ。テッドはこれから一人で学園で生活するんだ。いつまでもハンナに世話をしてもらってたらダメだ。」

あ、母様そんな悲しそうな顔しないで・・・ダメだここは心を鬼にして母離れしないと。

「わ、分かってるわ。ただテッド、教会には十分に気を付けるのよ。」

「はい!」

そう、教会は面倒くさい。

スキルは魔族に対抗するために神から与えられた力だとか言って権威付けしている宗教だ。

特に神に名前があるわけではなくただ神と呼んでいる。

俺がスキルを授かる前にいろんなことができることが知られたら最悪排除されかねない。

うう、コワ。絶対にばれないようにしないと。


「それじゃ、母様。行ってきます。」

「いってらっしゃいテッド。体には十分気をつけるのよ。」

可愛い母様と離れたくないが学園で出会いが待っている。待っているよね。

前世の記憶を持っていてもそろそろ友達が一人もいないのは寂しいのだ。

学園の出会いというテンプレを我は所望します。

「そろそろ出発するぞ。テッドしっかり捕まっていなさい。ハンナも離れて。」

父様の言葉に母様は俺から離れ、俺はグリフォンに備え付けられた鞍に付けられた手すりを両手でしっかりと掴んだ。

「ヒオウ、飛べ。」

父様のグリフォンの名前はヒオウと言う。俺のグミオウと同じオウが付くのだ。どうやら父様のセンスを俺は受けついたらしい。

ちなみにグミオウは俺の肩に下げている鞄の中で寝ている。

グミオウもこの2年で成長している。サイズが10センチから一回り大きくなって12センチになった。体の色も緑色が深くなり、煌めくような輝きを放っている。

「ヒャ、すごい。あっという間に街が小さくなっていくよ。」

ジェットコースターが加速するときに近い感覚に目を閉じている間にグリフォンは街を飛び出していた。

門を通らずに街を出ていいのかだって?

そりゃダメに決まっています。

ただそこは男爵でありこの地域の領主様である父様ですから事前に話を通しておけば問題になりません。

「テッド、どうだ、グリフォンに乗った感想は?」

前世で飛行機に乗った記憶はあるんだがやっぱり生身に近い状態で空を飛ぶのとは比べられない。

「すごいです。地面があんなに遠いし、スピードも速いです。」

「そうだろ、グリフォンはおよそ馬の3倍のスピードで飛ぶからな。王都まで今日中に付くぞ。」

馬車だと五日かかるところを直線で進めるとはいっても半日で到着するなんて俺もほしい。

将来冒険者になったとして移動時間の短縮は必須だ。

出来るだけ野宿は避けないのだ。だって夜は風呂に入ってベットで寝たいだろ?

テイムって何匹まで出来るんだろうか?今度父様に聞いておこう。いや、学園に通うんだから自分で調べてみよう。

今までは何でもクロード兄さんに聞けば教えてもらってたけどそろそろ自分で調べれるようにならないといけない。

「ところでテッドは高いところは怖くないのか?」

「はい、怖くないですよ。」

前世では高いところが苦手だった。

いや、高いところから見る眼下の景色が苦手だった。

展望台や高いビルの端から下を見ると足が竦むだものだ。

しかし、今は全くそのようなことは無い。むしろ心がワクワクと踊っているのだ。

変化に気が付いて戸惑いを覚えるが、さしあたって害はないから良し。

もしかしたら風を感じないから怖くなってのもあるのかも。

風を感じない?

そう風を感じない、それどころか山より高い場所を飛んでいるのに寒くないのだ。

「父様、なぜこんなに早く空を飛んでいるのに風を感じないのですか?」

「フフフ、よく気が付いたなテッド、ヒオウには風をコントロールすることが出来るんだ。」

それってヒオウは魔法が使えるってことか?

確かに魔力視で見るとヒオウから周囲に魔力が流れているのが見えるがヒオウの前方の魔力は何故かボヤケテはっきり見えないんだよな。

もっと魔力視のレベルアップが必要なのかもね。

「つまり、ヒオウは魔法が使えるってことですか?」

「一応魔物が使うのは魔法でないと言うことになっているが確かなことは分からん。」

まぁ、魔法以外のものも魔力を使うからなぁ

「もしかしてグミオウも何か出来るようになる?」

グミオウは変化?成長?しているのは確かだけどヒオウみたいな特殊な能力はまだ開花してないと思う。

「可能性はあると思うぞ。」

そうか、そうか。

学園では俺だけでなくグミオウの成長も目指さないといけないな。

「頑張るぞ、グミオウ。」

鞄の中で眠っているグミオウに語り掛ける。

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