6.目の前の女は巨乳らしい
「んでお前は女になったわけだ。」
俺はそう言いながらも懸命に目線を下げないようにする。
そうかそこまで巨乳なのかこの女は、さっきから思っていたが……。
っていうかぶかぶかの服着てると思ったがこれ和也の服だったのか。
「いやあびっくりしたぜ。その後戻るわけにもいかないだろ?」
そりゃそうだ女になったんだから、というかもう少し早く気づいても良かったんじゃないだろうか?
「しょうがないから他の女のところ行こうと思ったら気づいたんだよ。ほかの女のところ
に行ってもおんなじことになるよな!」
当たり前だろ!っていうか女に追い出されて他の女に行こうとするな。
「それでしょうがないから友達の家にでも行こうかとしたんだよ。」
は?
「そこでまた気づいたんだ。この状態で友達の家に行ったら俺が追い出されてしまうんじゃないか?って」
なんせこんなにナイスバディ―だからな!とうそぶいて見せる。
こいつはバカじゃないだろうか?考えるまでもないだろうが!
まあ確かに胸はでかいが……イカンイカン。
「もうどうしようもないから家に帰ろうかと思ったんだけど。」
?????
「そこで俺は気づいたんだよ。このまま家に帰ったら家族が俺だって信じてくれないんじゃないかって!」
このまま同じことが繰り返される気がする。不毛だ!もう追い出そうか?
「そこでしょうがないからお前に頼ることにしたんだよ。」
「はいストップ!なんでそこで俺が出るんだよ。」
慌てて止める。
「なんで俺ならイケると思ったんだよ。」
「お前なら最悪俺が女だと気づかないかなあって。」
こいつは実は俺に喧嘩を売ろうとしているのではないだろうか?
女と男の違いぐらいすぐ気づくに決まっている!というかそもそも女に性転換した友達と信じたわけではない。
こいつは頭のおかしい和也のストーカーかもしくは和也の仕込みドッキリという可能性も捨てきれない。
「とりあえずお前が和也の知り合いだということは信じよう。」
和也は後で殺すとしてこの女はどうしてくれようか……。
「なんで俺の言うことを信じてくれないんだよ!」
そう言って俺の胸倉をつかんでガクンガクンと揺すぶる。
おいやめろ!揺すぶるたびに胸が揺れるだろ!
こいつほんとにデカいな。目の前でブルブルする二つのふくらみから目が離せない。
こいつもしかしてノーブラか?うれしいだろうが!
「当たり前だ。男が女になるわけがないだろうが。どうせ後から和也が入ってきて」
「流石に親友の女を寝取った後にそんなドッキリしねえよ!」
「ちょっと待てなんで?和也の野郎そんなことまでしゃべってんのか?」
昼間の光景が頭の中でフラッシュバックする。
あの時は一応申し訳なさそうな顔で反省しているかと思ったが全くそんなことはなかった。
「だから俺が和也なんだよ。どうしたら信じてくれるんだ?」
しかし俺はそれにこたえる余裕などない。
あの野郎俺の傷をえぐって七味唐辛子を塗りたくるような真似をしてきやがった。
いつも無神経で殺してやりたいと思うこともたびたびあるが、ここまで悪意があるのは初めてだ。
今すぐこの女をたたき出して……。
突然女がだるだるのTシャツの首元をぐいっと下げた。
あらわになる胸元に視線が張り付いて離れない。
やっぱりノーブラっぽく見える。
なんのつもりだろうか?
これはいわゆるOKのサインって奴だろうか?
イッちゃってもいいのだろうか!!!
「これで信じてくれるか?」
声をかけられて胸元から視線を引っぺがしたら、これでどうだ?と言わんばかりの顔で俺に笑いかけてきた。
「ダメに決まってんだろ。見苦しいもの見せるな。 」
「なんでだよ。お前巨乳すきだろ。お前の秘密のお宝本も巨乳のエッチなお姉さん物ばっかりだったろ。」
「そういう問題じゃ……ってちょっと待って!なんで?なんで!なんで知ってるの?俺和也にも教えてないんだけど……。」
「いや友達の家に来たらお宝本捜索はするものだろ。っていうかさっきからオレの胸ちらちら見てくし……。」
当たり前だろといわんばかりに胸を張る。中身が和也なみの女でもこんな美少女に知られるのは恥ずかしすぎる。
っていうか胸見てたのそんなに目立ってたですか?
「ふざけんなよ!そんな辱めを受けるとは思わなかったよ。だいたい胸を見せられたからって信じるわけないだろ!」
「何言ってんだお前そこじゃねえよ。ほら胸元の傷だよ。」
そう言って胸の谷間を見せつけてくる。
そう言われて思いだした。確かに和也には着替えの時に胸のところに傷痕があったのだ。
本人は小さい頃の怪我のせいだと言っていたが……。
よく見てみると確かに昔見た傷痕とそっくりな形の傷がある。
「お前犯罪者みたいな目つきになってるぞ。」
そんなに犯罪者っぽい顔しているだろうか?
っていうか真夜中に二人っきりで胸見せてこないでほしい。
「これで信じただろう。」
確かにこれは嘘とは思えない。
同じ場所に同じ大きさ同じ形の傷があるなんて確率はかなり低いだろう。
「確かに同じ形の傷だな。」
とっさに反論が思いつかない。
顔をよく見ると和也と同じ顔にしか見えなくなってくる。
今までの話を信じるしかないのだろうか?
何の理由もなく男が女になることがあるのだろうか?
「これで信じるしかないだろ。」
「うーん……。もう一度初めから話してくれ。」
やっぱり信じられなかった。
「だから―。」
和也がかったるそうにうめいた。