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25.魔女の追憶

藤子視点です。

私は文芸部の部室に駆け込みその場に座り込んだ。

まるでマラソンを走った後のようにハアハアと息をつく。

手に入れた。もう一度手に入れてやった!

この魔方陣さえあればまだ希望はある!

藤堂寺君を手に入れるチャンスはまだあるのだ。

彼に恋に落ちたのは高校の入学式の日、一目ぼれだった。

こんな美しい人がいるのかと信じられなかった。

それでも告白なんてできなかった。

彼と仲良くできる女の子がうらやましくて仕方がなかった。

しかしチャンスが巡ってきたのはしばらくたった後だった。

私の友達の善蔵君が藤堂寺君の友達だとわかったのだ。

何故か私にいつも話しかけてくれる男の子、お内気な私がいつの間にか善蔵君と名前で呼ぶようになっていた。

もしかしたら善蔵君を通して藤堂寺君と仲良くなれるかもしれない。

心の中で善蔵君に申し訳ない気持ちはあった。

友達を利用するようで藤堂寺君を紹介してもらうことができなかった。

なかなか踏み出せないままもやもやと思い悩む時間が過ぎていった。

そんなある日、また天気が訪れた。

隣のオカルト研の前を通りがかった時中から何か話声が聞こえてきた。

中を覗いてみると、たった一人の部員留戸さんが自分の部室で独り言を言っていた。

呪い、効果確認、実験、そんな言葉が断片的に聞こえてきた。

その時は何を言ってるか分からなかったがそんなことが何日も続くと段々わかってくる。

どうやら男の娘を女の子に変える呪いを研究しているらしい。

気持ち悪いと思った。

一人で部室にこもって呪いの研究しているなんて、しかも時々漏れてくる笑い声が何か魔女のようだった。

それからは気にしないようにしてもどうしても目に入ってしまう。

彼女は呪いを実際に人に試すようになっていった。

それはなんと驚いたことに効果があるらしい。

しかしそんなことは人に言う訳にはいかない。

私が頭がおかしいと疑われてしまう。

そんなある日、一冊のノートを拾った。

持ち主を調べようと中身をのぞいたら様々な複雑な模様が書き込まれたノートだ。

中を読んでみてようやく留戸さんのノートだとわかった。

そこには様々な呪いが書き込まれていた。

気持ち悪いと思いながらパラパラとめくっていくと一つのページで目が留まった。

恋のおまじない、ハートマークをつけられたその頭の悪い一文だが私はそのページにくぎ付けになった。

恋のおまじない、しかも留戸さんの呪いは実際に聞くら良いことはわかっていた。

もし、もしもこれを使えれば藤堂寺君の心を奪えるかもしれない。

心臓がどきどきと止まらなくなってしまった。

私は自分に言い聞かせた。

そんなことはしてはいけない。

効き目なんかありはしないし、もしあったとしたらこんな不気味な物を使ってはいけない。

最初はそのノートを落とし物として学校に届け出た。

しかしその日からあのノートのことが頭から離れなくなってしっまった。

寝ても覚めてもあのまじないを使うことを、そしてその後藤堂寺君と付き合うことを考えただけで胸の高鳴りが止まらなくなってしまう。

それからだノートを盗むようになったのは。

盗んでは使うか悩み勇気が出ずそのまま返し、また盗むの繰り返し。

そして私はその誘惑に負けてしまった。

試すだけ、効果なんかないと言い訳しながらそのおまじないを藤堂寺君のノートに書きこんでしまったのだ。

そのあとすぐに藤堂寺君に告白した。

そして彼からの口づけ、夢のようだった。

和也君は私のものになったんだ。

しかし夢はそこまでだった。

なんとそこに善蔵君が表れたのだ。

あの男、私の和也君の前で突然泣き出したのだ。

和也君の前で私のことが好きだとそういったのだ。

寄りにもよって和也君の前で、恥知らずな男だ。

私は怒りに燃えた、あの汚らわしい男、なんのかちもない男だ、許されるならこの手で八つ裂きにしてやりたいぐらいだ。

しかし思わぬ誤算があった。

私がおまじないを書き込んだのはなんとあの汚らわしい男のノートだったのだ。

それに気づいて合点がいった。

私のおまじないはあの男に効いてしまったのだ。

おかしいと思ったのだ、なぜあの男が私なんかを好きになったのか!

哀れな男だ私のおまじないに操られているとも気づかずに私のような女が好きと思い込むなんて!

そうだもう一度、もう一度このおまじないを使えば和也を操ることができる。

和也は私のものになる!

震える手で魔方陣を紙に書き写す。

もう少しもう少しで……。

その時私の手を誰かにつかまれた。

心臓が飛びあがるほど驚いて、振り向いた。

そこにいたのは私のまじないの犠牲者、香川善蔵だった。


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