24.どこまで行ってもご都合主義!悲しき犯人の正体
言い忘れていたが和也は授業中はオカルト研の部室に隠れていたのである。
学校にいるのは別に女体化したのがばれたわけではない。
和也はとりあえず部室において授業をこなして放課後に合流する予定だったのである。
さて俺はただのしかばねとなった緒花は論外としても、本来一番焦るべき和也が何故か突然男の理想を凝縮したようなちょいエロ小悪魔に悪魔変身したことで話し合いは完全に停滞した。
これからどうしたものかと頭をなやあませているとコンコンと扉をノックする音が聞こえた。
人が来たのか?この怪しげな部室に?そう思ってはっとした。
和也を隠さなければ、和也の頭をガシッとつかむと机の下に押し込んだ。
同時にガラリと扉が開いた。
そこにいたのは瀬川藤子さんだった。
危なかった。今の和也は女になっているどう見ても不法侵入の部外者だ。
だからと言って和也に好意を寄せている藤子さんにだけは和也が女体化していることは知らせるわけにはいかない。
俺も恋に破れたとはいえ和也といちゃついているところを藤子さんに見られるのはなんとなく抵抗を感じてしまう。
「やあ藤子さん。一体どうしたんですか?」
「あら、善蔵君なんでここにいるの?」
不思議そうに首をかしげている藤子さんに思わず顔がにやける。
「いやあ、留戸さんと少しだけ顔見知りでして、くだらない用事があったんですよ。」
緒花とは呼べない。
あんな変人と友達などと誤解されては迷惑だ。
机の下から何やら怒りのオーラを感じるが今は無視だ。
「留戸さんはどうしたの?」
気絶している緒花を見つけて藤子さんがそう聞いてきた。
「どうも少し疲れているようで寝込んでしまっているんですよ。」
「そう。ちょうどいいわ。」
ちょうどいい?
「ちょうどいいっていうのはどういう意味です?」
「あ、それが、私実は留戸さんに貸している本があってそれを返してほしかったの。」
じゃあ、ちょうどいいっておかしくないか?
「まあいいや。それは何ていう本です?もしかしたらこの辺にあるかもしれない。」
藤子さんは緒花の寝ている(死んでいる)机に近づいて行って一冊の本を取り上げた。
それは一冊の数学参考書だった。
緒花の奴せっかく藤子さんに借りた本をあんなにおざなりな扱いをしやがって!
そう思ってよく見てみると机の上からなくなっているものがある。
例の緒花の呪い研究のノートである。(18参照)
さっきまでは確かにあったのに無くなっている。
さては参考書に挟まっているのか?
そう思ってみてみると確かに何かが挟まっている。
呪いのノートが挟まっているのか?
全く緒花の奴うかつにもほどがある。
「藤子さんその参考書何か挟まってますよ。」
無邪気なふりをして手を伸ばす。
ノートを回収しなければいけない。
「触らないで!」
参考書をガバリと胸に抱え込んで参考書を守る。
藤子さんが大声を上げたところを始めてみた。
その姿を見てなぜか疑問が浮かんできた。
確かあのノートは机の上に合ったなんで今参考書の間に挟まっているんだ?
もしかしてあのノートは藤子さんが挟んだのか?
その時嫌な考えが頭に浮かんできた。
和也の呪いを緒花は身に覚えがないと言っていた。
確かあのノートは5回失くしたと言っていた。
いくらなんでもそんなに失くすだろうか?
匿名で学校に届けられていた落とし物だが、本当は誰かが盗んでそれを落とし物として届けたのではないだろうか?
その誰かが和也に呪いをかけたということはあり得ない話だろうか?
そして……そしてその誰かというのが藤子さんという可能性はないだろうか?
あのノートには女体化の呪いが恋愛成就のまじないとして書かれている。
もし藤子さんが和也との恋愛成就を果たそうとしたのではないだろか?
オカルト研は藤子さんが所属する文芸部と隣同士だ。
絶対に不可能とは言い切れない。
「ごめんなさい。突然大声出しちゃって。」
藤子さんは慌てたようにそう言った。
「大丈夫よ。何も怪しいことはしてないから。」
俺の目をじっと見つめて藤子さんはそう言った。
「はい。もちろん、藤子さんを怪しむことは何もないですよ。」
俺がそう言うと藤子さんは笑った。
それはいつものようなふわりとした花の咲くような笑いではない。
まるで魔女のようなあくどい笑顔だった。
俺は藤子さんが教室を出ていくのをただ黙って見ている事しかできなかった。
「おい。お前ちょっとデレデレしすぎじゃないか?」
机から和也がはい出てきて俺に毒づいた。
俺はそれでも言葉が出てこなかった。
ただただ藤子さんが出て行った後の扉を見つめ続けていた。




