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21.久しぶり親友

とりあえず俺はオカルト研によって緒花から無理矢理、携帯の連絡先を聞き出した。

これで必要な時にすぐ連絡できる。

教室まで戻るともういけすかないグループは一人もいなかった。

学校中を探し回っても見つからない。

俺は途方に暮れてしまった。

こうなったら和美の家に先回りして拉致するしかない。

流石に警察沙汰になるな。

万事休すだ。

そう思いながら下駄箱を除くとまだ靴がある。

ってことはまだ校内にいるのか?

くそ一体どこに居やがるんだ?

こうなったら学校中しらみつぶしに探してやらあ!




和美は困っていた。

初めて会ったかなりごつめの男が無遠慮に肩に手を回してくるというシチュエーションはかなり怖い。

英子の奴めと心の中で毒づいた。

そもそもかっこいい先輩紹介するって言いだしたのは柏木英子だった。

誘われるままについていったらそこはサッカー部の部室だった。

そこにいたのは軽薄そうな金髪をさらりと書き上げるいけ好かないチャラ男だった。

こいつ確かヤリチンて噂が絶えない男だ。

サッカーの練習をしないことで有名な弱小サッカー部のヤリチン男に魅力を感じるかと言えばそれはノーだった。

英子に恨まれている自覚はあった。

英子の狙っている男が実は和美の事が好きだった。

そんなはた迷惑な話のせいで恨まれるのは納得がいかない。

英子は和美ほどではないがその見た目の良さのせいでかなりプライドが高い。

和美は見た目も中身も自分が上だと常々思っていた。

その見下した態度が英子の恨みを買っている原因とはかけらも気づいていなかったのだ。


「あのー、ごめんなさい。私実はーちょっと用事があってー。」


そう言って、何とかこの場を抜け出そうとする。

さっきから男はべたべたと和美に触りながら見え透いたお世辞で口説こうとしていた。

和美からすればこんなこ汚い部屋で口説く男なんて論外だ。


「は?何言ってんの?話が違うだろ!」


グイっと顔を近づけてきた。

和美はあまりの気持ち悪さに相手をひっぱたいてしまった。


「あ?おいおい。テメエ何調子乗ってんだよ。聞いてるぜ!遊ぶ男が欲しかったんだろ!俺が遊んでやるからよお!」


誰がそんなことを言ったのか分かり切っていた英子だ。

男はそう言って和美を押し倒してきた。


「は?何してんの?マジありえないから!」


いくら暴れても無意味だった。

シャツを無理矢理引っ張られてボタンがはじけ飛ぶ。


「イヤアアアアアア!」


「いくら叫んでも誰も来ねえぜ!この部室は人がほとんど来ねえからな。今までここで人にばれたことがないんだぜ!」


おそらくこの男の言う通りなのだろう。

この男はきっと何度も同じことをしているのだ。


「助けて!誰かたすけてえええ!」


和美は構わず叫び続けた。

黙って言いなりになるなんて冗談じゃない。

その時ガチャリとドアの開く音がした。


「誰だごらァ!!」


チャラ男が叫ぶが誰も何も答えない。

空いたドアから手がすうっと伸びてきて部室の電気を消した。

真っ暗になったと思ったら鈍いごんという音とともに蛙がつぶされたようなうめき声がした。

何かが和美の手をつかみ強くひっぱった。

ひかれるがままに和美はついていく部室を飛び出すと外はすっかり日が暮れて真っ暗になっていた。

かすかな明かりで浮かび上がった横顔は見知った顔だった。



なんなんだこれ?

意味が分からない。

俺は和美を探していたはずだった。

そして柏木英子がいるのを見つけて、和美のことを聞こうとした時話声が聞こえてきた。

和美が前から気に食わなかったこと。

チャラ男をたきつけて和美を口説かせようとしたこと。

今頃サッカー部の部室でお楽しみ中だろうということ。

盗み聞きした後俺はここにやってきた。

そこで悲鳴が聞こえてきてその後は行き当たりばったりでこうなってしまった。

我々は今全力疾走しています。


「マテヤゴラア。」


後ろから何やら変な声がする。

はいあれはチャラキンパーツという南国にいる珍しい鳥の鳴き声なのです。

いやあ勉強になりましたねえ。


「殺すぞ!」


ハイ嘘です。

あれはチャラ男です。

しかもどこからともなく仲間を召喚しました。

群れです。

俗にいうチャラ男が仲間を呼んだというやつです。

我々を追ってきています。

とても危険です。

しかも今はいろいろはだけた女性を連れています。

正直追いつかれるのは時間の問題です。

俺は和美の手を引いて部室の隙間の陰に飛び込んだ。

倒れこむようにして隠れた。

男たちが走り去る足音を聞きほっと一息ついた。

殺されるところだった。

しかしまたいつ戻ってくるかわからないためうかつに動くことができない。


「ねえ。」


しかしここにいつまでもいるわけにいかない。


「ねえちょっと。」


ここもいつ見つかるかわからないのだ。


「ねえきいてるの?」


っていうか早く緒花のところに連れて行かなくてはいけないのだ。

頭をスパンと叩かれた。


「なんだよ。」


「ちょっと。早くどいてよ。」


「うるせえな。声を抑えろよ。見つかったらどうするんだよ。」


「大声出すわよ。」


「やめてください。ごめんなさい。っていうか俺のおかげで助かったんだろうが。あのチャラ男の代わりにオタノしみしていいんだぞ。」


「イ、イヤ……!」


慌てて口を押える。


「わかった。わかった。何もしないよ。お前あのチャラ男から逃げたいんだろう。静かにしろよ。」


「あんたに襲われるぐらいなら、あのチャラ男のほうがましよ!」


こいつ!どつきまわしてやろうか?

どこまでも人をコケにしやがる。

そもそも俺はこんなところにいる場合じゃないんだよ。

こいつを拉致してでも緒花のところへ連れて行かなきゃならないんだ。

こんなことになってなきゃ家の前で待ち伏せして無理矢理連れてけば良かったんだ。

なのに今はチャラ男から逃げ隠れでいっぱいいっぱいだ。

何でこいつはいつもいつも男でも女でも話をややこしくするんだ。

早く呪いを解かなきゃ頭がおかしくなるぜ。


「何よ、あんた変な顔してないで何か言いなさいよ。」


「お前本気で言いてるのか?あのチャラ男の方がまし?お前そこまで言うかよ。だったらこのままあいつとよろしくするか?」


オレ達友達だろうが。友達だっただろうが。

確かに喧嘩ばっかだったけどお前の事、俺は今みたいに助けてやるぐらいには大事に思ってるんだぞ。


「なによかっこつけて、あんただって私とそういうことしたいんでしょ。そうだ土下座して頼んでみなさいよ。もし助かったらさお礼に良い事してやってもいいわよ。」


「へえ。そうかそうか、それがお前の本心か?」


お前は俺にとって大事な友達だったんだ。

ずっとお前に文句ばっか言ってたけど、実はお前に甘えっぱなしで自分で何も

してこなかったけど、今度は俺が助ける番だと思ってるんだ。


「何?かっこつけてても男の頭の中なんてみんな一緒でしょ。素直になればいいじゃん。」


「そんなこと言うなよ。」


本気か?本気かよ?お前本気でそんなこと言ってんのかよ。


「な、何?なんで泣いてるの?」


和美が驚いた。


「お前のことが大事だと思ってるからだよ。」


和美が目を見開いて俺を見つめてきた。


「お前のことを体張ってでも助けたいっておもったからだ。俺が体張ってでも助けたいって思ったお前のことをお前自身が自分で傷つけるようななこと言うな。」


「な、なんなななな……、何言ってふ、何言ってるのよ!あんた……あんたと私なんて何の関係もないじゃない!」


和美が真っ赤になってうろた出した。

関係ないときましたか?どうすりゃ分ってもらえるのかね?

そうだな、この世界の俺だったらなんていうかな?


「そばにいるよ。」


「へ?」


「お前がピンチの時はいつもそばにいるよ。だから俺を信じろ。」


「は、はい。」


和美は真っ赤に名たまま、硬直してそれだけ返事をした。

その時足音が聞こえてきた。

思わず和美を抱き寄せて身を縮めた。


「あーあもったいねえなあ。あんないい女なかなかいねえのによ。」


「もうあきらめてナンパ行こうぜ。」


さっきのチャラ男の声だった。

別の声も聞こえてくるが、どうやらあきらめたらしい。

そうだそうだナンパでも何でもいいからとっとと消えちまえ。


「もう大丈夫だぜ。」


「何が?」


さっきまでと違い、場違いなほどのんきな声が聞こえてきた。」


「何がってお前な。」


自分の立場わかっとんのかこいつは?


「なあ善蔵俺たちなんでこんなところにいるんだ?」


善蔵?善蔵って言ったか?

慌てて顔を覗き込んだ、見た目も声もさっきと同じ美少女のままだ。

でもこの男みたいな口調、あっけらかんと何も考えてないようなアホずら、もしかしてと思った。


「和也か?」


俺は和美にそう聞いた。


「何言ってんだ?」


「!!」


「俺は和也に決まってるだろ?」


頭がついにバグったか?と毒づいてくる。

俺はその毒舌があまりにうれしくて和也を抱きしめて声を上げて泣き出してしまった。

和也は驚き慌てふためいている、多分後で無茶苦茶笑われて馬鹿にされるだろうが関係ない。


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