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19.さよなら親友

想定しうる中で最悪の状況だった。

緒花の奴マジで揉みしだいてやる。

俺は和也の性別を確認するために今教室にいる。

女だった。

完全に女になっている。

和也はまだ教室にいて男子たちに囲まれていた。

いつもだったら俺を見つけたら必ず話しかけてくるはずだがそれもない。

どうなってるんだ?

なんで平然としていられる?

女体化したにも関わらずそんなに笑っていられるんだ?

平静を装っているのか?

それとももしかしてホントの本当に心まで女になって記憶が書き換わってしまったのか?

くそ緒花の奴!

俺は何度目かわからない恨み言を心の中でつぶやいた。


緒花の用意した魔方陣の紙の効果のきき方が悪かったのか、それとも使い方が悪かったのか確認するために緒花にもらった魔方陣をもう一度見せた。


『あ。この魔方陣きかないわね。』


あっけらかんと言いやがった。

マジで揉みしだきの刑に処そうと思ったぜ。


『ちがうんですううう。藤堂寺君の呪いが強すぎてどうしようもないんですううう。』


泣きながら命乞いをする緒花、じゃあ和也をここに連れてくるから元に戻す方法を考えろと脅したが。


『無理じゃないかしら。私は呪いの効果が及ばないような魔方陣を持っているけど藤堂寺和也さんのことは言われればそうだったかもってくらいしか思い出せないもの。きっと他の人はあなたの言うことを信じないわよ。』


と答えやがった、マジで使えないやつだ。

なんで俺がこんな目に合わなきゃならないんだ。

和也改め和美をちらりと見た。

クラスの一軍どもに囲まれている。

なんだったらグループの中心にいる。

はあっと溜息をついて立ち上がった。

なんで俺があんな奴らに話しかけないといけないんだ?


「おーい。藤堂寺さん」


うわあ!藤堂寺さんだってよ!おえっ!


「ちょっといいかなあ。」


満面の笑み、とっておきの猫なで声、どうだ!パーフェクト余所行きフェイス!


「あ?なんだよ!」


おや。険悪!とっても不思議!こんなに愛想よくしてるのに!

藤堂寺に声をかけたのになぜか周りの連中が凄んできたよ!

ここでけんかをするのはまずい。


「いやあ。少し藤堂寺さんに用があってさあ。」


「なんでお前が和美ちゃんに用があるんだよ!」


「用があるならここで言えや!」


「もしかして告白でもする気か?ギャハハ!てめえきもいんだよ!」


あちこちから怒号が飛んでくる。

まいったねこりゃ。

和也のほうを見た。

なんだか困ったような、迷惑そうな、気持ち悪いものを見るような、ひきつった笑いを顔に貼りけていた。


「どうしても藤堂寺さんだけに話したいことがあるんだ。」


「ごめんね。今ちょっと忙しいからまた今度にしてくれないかな?加藤君。」


和也はそれで終わりとばかりにみんなとの話に戻ってしまった。

俺の名前は香川だよ。

言葉に出さずに心の中でそう言った。


「おら!消えろよ!気持ち悪いんだよ!」


どっと笑いが沸いた。

和也の奴も控えめに笑っている。

分かった。話さなくてもわかるこいつは和也じゃない。

和也だったら俺がここまでコケにされていたらきっと黙っていなかった。

取り巻きどもに囲まれていい気になっているいやな!いやな!勘違い女だ。

アホどもの笑い声を背中に浴びながら俺は教室から出た。

最悪の気分だ。

親友だと思っていたのになんだ?

性別が変わっただけで俺の親友だったはずなのに今度は俺を笑いものにするのか?

いやもともとあいつは俺をちょくちょくバカにするけど心の底から俺を見下すようなことはなかった!……はずだ。

多分、メイビー、おそらくは……、いやまあ本心はさすがにわからないかもしれない。。


「善蔵君?どうしたの?」


後ろから声をかけられた。


「藤子さん。」


そこにいたのは俺の思い人だった。やっぱり眩しいなあ。

見ているだけで心が和んでいく気がする。


「クスクス。変な善蔵君。」


ああ!クスクス笑ってるめっちゃかわええ!クラスのビッチどもより百倍可愛い。


「いやちょっと考え事をしていただけだよ。」


「だいじょうぶ?何か悩みがあったら相談してね?善蔵君は私の唯一の男友達なんだから。」


ああ!なんて優しいんだ。俺のことを唯一の男友達なんて……何?

一瞬引っ掛かりを感じてすぐにああそうかと思った。

この世界では和也が和美なんだ、だから和也が藤子さんにとっていない人なんだ。

和也と藤子さんがキスする事件も起こってないんだ。

ってことは……。

思わず胸が高鳴る。

ってことはこの世界なら俺は藤子さんと付き合えるのではないだろうか?

前の世界では藤子さんは俺と和也が友達だから俺に近づいたと言ってた。

でも今は違う。藤子さんはそんな下心なしに俺と友達になったんだ。


「今日は大丈夫?」


「え?何か約束してたっけ?」


「忘れたの?善蔵君が欲しがっていた本が見つかったって言ったじゃない?」


ああそうだ藤子さんは文芸部なんだった。

藤子さんにぴったりだよな、しかもこちらの世界の俺はそんな約束をしてたのか。

本なんか興味もないくせにどうするつもりだったんだろうな。


「わかったよ。じゃあこれから文芸部室に行けばいいのかな?」


「なにいってるの?そんな他人行儀な。」


「どういうこと?」


「あなたも文芸部員じゃない。」


驚いた。俺は藤子さんに近づくためにそんなことまでしてたのか。


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