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16.ご都合主義(都合よく解決するとは言ってない)

畜生いくら携帯に連絡してもつながりやがらねえ!

和也の野郎一体どこにいってやがるんだ?

とにかく早く見つけないといけない。

このままだとあいつが完全に女になってしまう。

そう言えば女になるのにどれくらいかかるか聞いてなかったなあ!くそ!

友達に片っ端から電話をしても捕まらなかった。

少なくとも俺が電話した奴らは和也が男だと記憶は残っていた。

あいつがもし俺の知らないどっかの女のところにいたら俺には見つけようがない。

あちこち探した挙句俺は和也の家に行くことにした。

あいつは家族と少し折り合いが悪い。

しかし他にあいつが頼る相手が思い浮かばない。

日も暮れてしまって見つけるのも大変になるだろう。

俺は何度かあいつの家に遊びに来たことがある。

相変わらずデカい家だった。

上品そうな家、見るからに上流階級だった。

和也の家のブザーを鳴らした。

全くなんでこんな家から和也が育ってきたんだか?

そんなことをぼんやり考えた。


ガチャ


「はいどちら様でしょうか?」


上品そうな女性が出てきた。

和也の母親だ。


「ハイどうも。あの僕です。善蔵です。」


そう言ったが相手は怪訝そうな顔をした。

覚えていないのか?


「あの以前何度か遊びに来たんですが覚えてないですか?」


それでも相手は怪訝な顔を隠そうとしない。

段々イライラしてきた。

少しくらい俺の事を覚えていないのか?


「あのあなたの制服。うちの子と同じ学校の子よねえ。」


「その通りです。はい。僕はお宅の……」


「うちの娘に何か用ですか?」


は?何言ってんだ?娘?娘って言ったか?


「いやあの。俺は和也君と友達で……。」


「は?家の娘は和美ですけど?」


とっさに声が出なかった。


「あの。どちらかと家を間違えてるんじゃないですか?」


「いやそんなはずはありません。この家です。」


「そんなことを言われても。うちに和也なんていないんです。もう帰ってください。気持ち悪い。」


呼吸が止まる思いだった。

ドアを閉めようとするのを手を差し込んで無理やり止めた。


「ちょっと警察呼びますよ。」


「一つだけ。娘さんは帰ってきてますか?善蔵が来ていると伝えてくださいそれだけでいいんです。」


相手がぐっと息をのんだ。


「一度帰ってきましたがすぐに出ていきました。」


「どこに行ったか分かりますか?」


「わかりませんよ。ただあの子も和也がどうしたとか言いだして……。」


「家を飛び出した?」


和也の母がうなずいた。


あいつはこの家に帰ってきてたんだ。


しかしあいつは呪いの内容を知らない。

母親が自分を女として扱うことに驚いて家を飛び出したんだ。


「もういいでしょ。もう帰ってください!」


ドアをバタンと占めてしまった。

くそ!万策尽き果てた。

最後に頼るなら家族のところだろ。

ここにいないならもうどこにいるのかわからない。

あいつの母親が呪いの影響にかかってしまった。

俺は今は大丈夫だがいつ同じようになるかわからない。

なのに和也がどこにいるのか見当もついていない。

いや違う。心当たりは一つだけある。

もしうぬぼれじゃないならあいつが最後に頼れるのはだれでもないこの俺だ。




自分のアパートに帰りつくと俺の部屋のドアの前に座り込んでいる女の子が一人いた。

深く深くため息をついた。

やっぱりここにいたか。


「こんなところで何やってんだ。和也!」


和也が顔を上げる。

俺と目が合うとダムが決壊するようにボロボロと泣き出してしまった。

泣き顔もかっわいいな畜生め!

和也の泣き顔を見てなぜか俺もほっとして膝から崩れ落ちそうになった。


「探したぞ。」


「うん。」


和也はズビズビと鼻をすすりながら答える。

俺は和也の目の前に座って目線を合わせた。


「お前に行ってやりたいことがいくらでもあるんだけど、まあその前にやっておくことがある。」


「?」


不思議そうな顔をする和也に一枚の紙を見せた。


「男に戻りたいか?」


「どういうことだ?」


「質問は後だ。早くしないと手遅れになるかもしれない。男に戻りたいか?」


和也はコクコクとうなずいた。


「それじゃ。心の中で男に戻りたいと強く念じろ。」


和也は言われるがままに目をつぶった。

全く大変だった。

こんな経験したのはたぶん世界中で俺だけだろう。

後で和也にも話してやろう。

俺は和也に魔方陣の紙を押し付けた。

これで和也は男に戻れる。


「気分はどうだ?和也。」


俺は和也に声をかけた。


「いや別に何も変わらないな。」


その声は相変わらず高い女のままだった。

よく見ると顔つきも女のままだ。

三角座りしていて膝に押し付けられて形を変える豊かな胸もすべてが女のままだった。


「あれ?」


どうやらあまり望ましくない事態になったらしい。


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