15.それいけ善蔵!仲直り!
「それで?説明してもらおうか?」
緒花は頬を膨らましてぷいっと顔をそむけている。
この女!
「わかったよ。ごめんもうお前の乳をもんだりしないし、裸に剥いたり、服をしゃぶったり、ヌードを写真に撮ったり、その写真をご神体に新興宗教を起こしたりしないから。」
「そこまでするつもりだったの?!」
おっと少し言い過ぎたかな。
「な?信用しろよ。」
「ううっ!信用できない。」
「このままでいくとこのノートを学校中にばらすことになるぞ。」
美少年の女体化量産計画ノートを目の前でひらひらと振って見せる。
緒花がノートを取り返そうとしてくるが俺が緒花の頭を手で押さえてノートを手の届かないところに持ち上げる。
むーっと唸りながらパタパタとてをばたつかせる。
可愛そうだが仕方がない。
「さあ話せ。何でこんな呪いをかけた。」
「……だから。」
「なに?」
「好きだからよ!」
「は?」
「ほんとは男でありながら女の体になってしまった美少年。本当は男のはずなのに徐々に女性化していく体と心。イケメンにときめいてしまう美少年!俺はほんとは男のはずなのにと思いながらも自分の気持ちに逆らえずメスになっていく美少年!そんなシチュエーションが私はたまらなく好きなのよ!」
へ、へ、ヘンタイだ~!
頭が痛い。
しかもノートの中身を見てみるとかなり様々な魔方陣や呪文がびっしり書き込まれている。
「どんだけの呪いをばらまいたんだ?」
「そうね。」
緒花がんーと少し悩むそぶりをした。
「だいたい百ぐらいかしら。」
緒花の頭をアイアンクローで締め上げた。
「どうやってそんなにばらまいたんだ!」
「イタイイタイ。いろんなところに女体化の呪いを仕込んだのよ。落とし物のノートに女体化の魔方陣を書いた紙をはさんだり、理科室の椅子に座ったものを女体化させる呪文を書き込んだり!」
最悪だこの女。テロリストかよ!
「なんだってそんなに仕込んだんだ!」
「しょうがなかったのよ!どの呪いが本当に効くかなんてわからなかったからいろんな種類を試したの。」
緒花はバタバタと暴れながら弁解する。
「呪いの対象は美少年じゃないといけないから、まず呪いの対象は、男に対してときめきを感じちゃう美少年とか男のほうが女よりも上だと思っている見下し系とかいろいろあるでしょ。」
「なんでそんな無差別に?」
「さっきも言ったけど呪いは感情をエネルギー源にして初めて効果があるの。だから様々な感情で作動する呪いを作る必要があったわけ。」
変態の癖にすさまじく手の込んだことをしていたらしい。
しかもなぜか少し自慢げに見えるのは俺の気のせいだろうか?
「呪いのきき方も難しかったわ。いきなり女体化はできないから徐々に変化させないといけないわけまず見た目はそのままだけど女性の匂いがし始める、顔や体が少し中性的になり、体が本物の女性になってしまうの・・・・・。」
なんて手の込んだ奴だ。
「最終的には存在そのものが女性化してしまうわ。」
「どういうことだ?」
「生まれた時からさかのぼって過去改変してしまう呪いよ。」
コワッ!なんだこいつ一体何考えてるんだ?本物の危険人物だ。
今日こいつを見つけなかったら危なかった。
大事なのはこれからだ。
「それで呪いを解くにはどうすればいいんだ?」
「教えたくないわ。」
「あ゛?」
「違うの!聞いて!だってこの呪いを完成させるために本当に苦労したのよ!」
「違くないだろうが!結局呪いを解きたくないだけだろうが!」
「わーん!だってだって!」
「何がだってだよ。お前どんだけ迷惑なことしてるか分かってるのか?」
「なによ!善蔵君が直接困ることなんてないでしょ!」
おれはじっと緒花をにらみつけた。
「関係あるんだよ。実は女体化したのは俺の親友なんだよ。」
「え?なになに?なんでその話をしてくれなかったの?それでどうなった?ドキドキした?すきになっちゃった?いかがわしいことはした?」
こいつは本当に一切反省していない。
「お前は本当に揉みしだかなきゃわからないらしいな。」
「ごめんごめん!そんなつもりじゃないの許して。」
「少しはまじめに考えろ。」
俺が睨みつけても反省するどころかこちらを涙目で睨んでくる。
仕方がない。俺は重々しく切り出した。
「実はな。俺の親友は女体化した時だれにも頼れないものだから俺の一人暮らしの部屋で一泊泊まったんだ。」
緒花の音がきらりと光った。
「あいつはマジで追い詰められてなあ。俺のアパートに入ってくるなり泣きながら俺に抱き着いてきて。実はその時に……。いやこれ以上はさすがに言えない!」
ちらりと緒花を見るとギラギラと目を輝かせている。
「なに?なにがあったの?じらさないで!早く!早く!教えて!早く!」
食いつき方が怖い。
「もしも呪いを解く方法を教えてくれるなら続きを教えてやってもいい。」
「はい!」
何やら複雑な模様が書き込まれた紙を差し出してきた。
「これをその人に当ててその人が心から男に戻りたいと思ったときに元に戻るわ。」
「お、おう。ありがとうよ。
「いいのよ!だって困っているんですものね。助けてあげるわ!」
目をキラキラさせながら言ってもなあ。
「ああ。とにかく俺は行くから。」
紙を受け取ると俺は教室を出ようとする。
「急いでね。呪いが最終段階まで行ったら本人含めてみんなの記憶からその人が男だったってことも忘れちゃうから、その人を男に戻そうとも思えなくなるわよ。」
後ろから声をかけられた。
早くそれを言え。
ちくしょう!あいつから謝るまで助けないつもりだったのに!
何で俺が折れないといけないんだ!
そう思いながら俺は走り出した。




