12.助けてあげたい友がいる!けどやってられないこともある
さて、これまで俺は図書館というものを心から信奉していた。
様々な時代の世界中の様々な知識が納められた本たち、専門書、学術書、小説、等知りたいと思うことはすべて知ることができる。
そこで解けない謎はない、まさに人類の最後の砦ともいうべき聖域であった。
今日までは……!
しかしさすがに、一瞬のうちに男が女体化する知識などは得られなかった。
「はーあ、無駄足だったな。」
図書室からの帰り、廊下を二人で歩いていくが、足取りはどうしても重くなる。
俺の横で和也が俺を責めるような口調でそうのたまいやがった。
はあっと溜息をつきながら肩のコリをほぐすように腕をぐりぐりとまわしている。
うぜえ!こいつ当てこすりみたいなこと言いやがって、アホの癖に!
お前はほとんど調べてないだろうが、なにに疲れたんだよ。
「っていうかさ。図書館で調べられるようなことならネットとかでわかるんじゃないのか?」
やれやれと首を振る。
こいつアホの癖に正論をはいて俺を責めようとしてやがる。
アホの癖に!
オレ達は図書室の中でそれらしい本をあらかた調べていった。
それこそオカルト関係の本から医学関係の本まで、しかしそれらしい情報は全く得られなかった。
「しょうがないだろうがお前がまさか学校まで来るなんて思わなかったんだから!あのときはとっさにいいアイデアだと思ったんだよ。」
そもそも和也を隠すための作戦として考えたのが図書室避難作戦だったのだ。
俺を責めるなと和也にそう強がったものの、之で解決の糸口をつかもうと思っていた切り札が無駄骨に終わったこともあって疲労も余計重く感じられる。
これからどう動くべきかの作戦がないのもまた事実だった。
「まあ大事なところでいつも抜けているお前らしいけどなあ。いたいったいたたたたあ!」
俺がアイアンクローで和也の頭蓋骨を締め上げると和也は北斗神拳伝承者のような叫びをあげだした。
「っていうかお前は図書館で全く手伝わないでずっと火の鳥読んでただけじゃねえか!お前大概にしないとマジで泣かせるぞ!」
「なんだよ。俺が手伝おうとしたらお前が邪魔だからあっち行ってろ言ったんだろうが!」
まるで自分はまるで悪くないみたいないい方しやがって!
「呪いの本持ってきてと言ったらか冠婚葬祭の本持ってきやがって!お前は祝うと呪うの違いも分からんのか?」
俺と和也は間合いを取るようにお互いにぐっとにらみ合う。
ピリッとした空気が流れ、緊張感が走った。
「お前っていつもそうだよな!なんだかんだ言って心の中ではいつも俺をバカにしてんだろ!自分だってバカの癖に!」
「俺がバカなのは今関係ないだろ!お前だって俺のことイケてないとか、ダサいとか、、オーラの無さがアカデミー賞クラスとか、モテ度が世界恐慌を起こして連日ストップ安とか!言いまくってるじゃねーか!」
ギーっと音がしそうなほど鋭い視線をぶつけ合って、ふんとお互いに顔をそむける。
全くこいつの神経を疑う、
もともとは自分のトラブルだろうが!
男の癖に女になるなんてビックトラブルもいいところだ。
どう考えても一介の男子高校生である俺の手に負える話ではない。
「あーもう止めだ止め!お前の面倒これ以上見きれるか!」
そう言われて和也はぐっと言葉に詰まったが、負けじと言い返してきた。
「上等だ!これ以上お前に任せていても元に戻れないだろうしな!」
こいつ言わせておけばぬけぬけと……。
「あー!あー!そうか!わかったよ!じゃあこれからは自分一人で何とかするんだな。男に戻る方法も自分で探せよ。」
そう言って俺は和也に背を向けて歩き出した。
「ああわかったよ!細かいことグダグダ言いやがってそんなんだから女にもてねえんだぞ!」
余計なこと言いやがって!決めたもう絶対に助けねえ!




