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武人

 亮太達は街に出た。

 大きな街ではないが、商店が立ち並び活況を(てい)している。

 建物などを見ながら、建築技術などは自分の住んでいた世界の方が進んでいるんだな、などと考えた。

 木材を使った建物が多いが、石でできた建築物などもある。

 道の隅にも露店がならび、見知らぬ食材がてんこ盛りに並んでいて、亮太もテンションが上がる。


「おい、ジャス、あれ美味そうだぞ」


 香ばしい匂いに誘われるようにそちらを眺める。


「リョウタ、今は飯どころじゃないぞ」


「お、おう、武人の所に行くんだろ?」


「そうだ」


「場所は知っているのか?」


「知らないが、聞けば誰か知っているだろう」


「名前は?」


「ああ、ベルンハルトという男だ」


 ベルンハルト、強そうな名前だ。

 ジャスティンが推す男なのだから、相当強いんだろうな。

 いったいどんな男なのだろうか?

 興味があり聞いてみた。


「その男はどれぐらい強いんだ?」


「ん、そうだな、こんな話を聞いた事があるぞ。魔族の軍団が、とある国に数万の軍勢で侵略しかけたんだ。人間達はその軍と激しく抵抗して戦った。中でもその国にいた一人の将軍は一万の敵をたった単騎で(ほうむ)ってみせたらしい。それ以来、その将軍の事を万夫不当の豪傑(ごうけつ)として、神威(しんい)将軍と呼んだそうだ。その神威将軍と勇名を()せた将軍こそ、今向かっているベルンハルトという男だ」


「ちょ、ちょっと凄すぎるんだけど。そんな凄い将軍がこんな辺境の街にいるのか?」


「ああ、今は何をやってるんだか、退役してこの辺境の街に住んでると風の(うわさ)で聞いてな。どうだ、会いたくなっただろ?」


「凄い人なんだね、ああ、会ってみたくなったさ。ジャスはなんかその人の事、嫌いとか言っていたけど?」


「嫌いというか、俺もその国に面白半分にちょっかい出してた事があってね。敵対して痛い目みた事があるんだよ。わはははは」


「本当なのか? なんか余裕かましているが、会って大丈夫なのか?」


「まあ、昔の事を根に持つような武人ではないと思うぞ」


 そう言って、ジャスティンと俺は街人に武人の家を聞いて回った。

 すぐその家は判明した。


「ここか、古い感じの家だね」


 大きな門のある屋敷だった。古い感じの屋敷だが、大きな中庭があり、池の周りには灯篭(とうろう)が立っていて、神聖な雰囲気を漂わせていた。

 俺はジャスティンと門の中へ踏み込む。

 途端、キーーンと耳鳴りに襲われた。

 なんだ?

 俺は思わず耳をふさいだが、ジャスティンは平気な顔をして、


「遊ぶなよ……」


 とつぶやいた。

 すると中から、2メートルはあろう大男が現れた。

 頬はやせこけているが、眼光は鋭く白髪を短く縛りあごひげを蓄え、青龍偃月(せいりゅうえんげつ)刀を杖替わりに持つ、筋骨隆々の偉丈夫(いじょうふ)がそこに現れた。


「がはははは、しぇしぇしぇ。ここへ来る大分前からお前の覇気は感じ取っていたぞ。まさかと思っておったが、本当にお前らしいな。ジャスティン=クレーバー?」


「ほう、俺様の覇気を感じ取っていたか、これでもかなり抑えてるつもりなんだがな」


「お前の覇気は癖があるからな、しぇしぇしぇ。死んだ噂も流れていたが、やっぱり生きていたか。

14年ぶりぐらいか?、容姿は大分変ったようだな、若返ったか?」


「あの時のお前は結構強かったよな、笑えるな、はははは」


 俺はその話題についていけなかった。14年前?? なんの事を言ってるんだ?

 ジャスティンは生まれていないだろうに。

 でも、この背の高い強そうな爺さんがベルンハルトなんだろう。

 すごく強そうに見える。何歳だろう?

 見た目は60歳前後にも見えるのだが。

 しかし亮太から見ても精気がみなぎっているのがよくわかる。


「何の用だ?まさか今さらわしに喧嘩を売りに来たわけでもあるまい」


「うーん、それなんだが」


 ジャスティンは頭をポリポリ書くと用件を伝えた。


「お前、この男どう思う?」


 といって、あごで俺を差した。

 ベルンハルトはそこで初めて俺に目を向けた。

 何事も見透かしそうな鋭い目で俺を見つめる。

 彼に見つめられ極限まで威圧されて萎縮しそうになった。


 その圧倒的な存在感の前で。


 俺は飲まれまいとして、必死に心の中で抵抗した。

 押しつぶされそうになるのを我慢し、

 叫びたくなるのをぐっと(こら)える。


「……ふーん、がははははは、しぇしぇしぇ」


 笑い声で威圧が解けた気がした。

 体が軽くなる。


「ジャスティンよ、面白そうな小僧を拾ったな」


「やっぱりそう思うか?そうなんだよ、面白そうなのだ、わはははは。

 そこでお前に頼みがある。こいつに『覇気』を教えてやって欲しい」


「ほう、『覇気』か。お前から見ても見どころがあると見ている訳だな。……確かに面白そうではあるな。」


 彼は何を思ったか部屋の中に入り中から酒瓶を持ってくると、

 盃に注ぎ亮太に差出し、自分も瓶ごと酒をあおる。


「ぷはーー、美味い」


 と言って亮太を見る。

 これはあかん、飲まないかんパターンだ、

 俺は酒を飲んだ事がないがここは男だ、ぐいっと。


 ぶはーー、げほげほ。


 熱い、強い酒らしく喉が焼けそうだ。

 そんな咳き込む俺を尻目に、ジャスティンも酒を勧められ、当たり前の様に飲んでいた。


「うん、まあまあ美味いな」


 ジャスティン、お前14歳ぐらいだろ!美味しそうに酒飲むなよーー!

 心の声でつぶやく。


 ベルンハルトはおもむろに俺に告げた。


「3ヶ月やろう!それで覇気を操る基礎を身に付けてみよ」


「さ、3ヶ月、そんなので身につくのか??」


「センスがなければこれ以上やっても意味はない、どうだ、やるか?」


 やるもやらないもない、俺の心は決まっているが、とジャスティンを見る。


 ジャスティンはうんうんと(うなづ)いている。


「是非お願いします。やらせてください。よろしく!!」


 こうして俺はベルンハルトに師事して『覇気』を学ぶ事になった。

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