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ブリジット王国の城下町

 亮太達がシェザの森を抜けると、そこに大きな街が現れた。

 ブリジット王国の城下町だ。

 遠くから見ても沢山の人の往来を見て取れる。

 商売も活気がありそうだ、露店が大通りに軒を連ねていて、客引きも多い。


 よく見ると、人の他にドワーフや小人のホビットの姿が見える。

 以前フィーネが、


「ブリジット国王は人間だけでなく多種族の融和を推奨しているの。だから、いろいろな種族が見られるわ、またこの国は産業が発達しているから、様々な珍しい商品があるわよ」


と、言っていただけの事はある。


 俺達はさっそく城下町に入っていった。

 大きなメインストリートは人やドワーフ達で賑わいを見せる。

 今まで見た事のない活気に亮太達もはしゃいでいた。


 亮太が一番最初に目をつけたのは、やはり武器屋だった。

 大きな赤レンガ造りの商店の窓から中を覗き込むと、剣や矛がずらりと並んで陳列されている。

 その内の一つ、雑多な陳列とは別に特別に設置されている渋めの銀光沢を放つ剣が目に止まった。


「あれはなんだろう?」


 亮太は気になって、その店に入りその剣を手に取ってみる。

 軽い。それなのに頑強に思える。この剣はいったい?

 亮太が眺めていると、店の店主が寄ってきて、


「にいちゃん、その剣はいいだろう?ミスリル製の剣だよ。うちの職人が打った業物だ。今なら安くするよ?!」


 幾らか聞いたら、3000ガネーだよとの返事。


 俺はジャスティンの方を見た。ジャスティンは目を合わせずそっぽを向く。

 更にフィーネを見る。フィーネも視線を外し、何故か急にチャロと話しだす。


 後で聞いてみたら、その剣の価格は元いた転生前の世界で30万円に相当するとの事だった、高すぎる。なるほど、みんながそっぽを向く訳だ。


 ちなみに、この国には通貨が存在する。

 今まで物々交換で旅をしてきたから、お金などこの世界には無いと思っていた。


 通貨単位は『ガネー』。

 価値としては、1ガネーが100円ぐらいか。

 貨幣経済が成立しているとは思わなかった。

 この世界にも金や銀や銅があり、それなりに価値が高い。

 どの世界でも金や銀って魅力があるんだな。


 金貨1枚で100ガネー。

 銀貨1枚で10ガネー。

 銅貨1枚で1ガネーとの事。


 さて、この剣だが、


「ミスリル製?」


 俺は思わず店の店主に聞いた。


「おいおい、ミスリルを知らないのかい? にいちゃん、田舎から来たんか? この国はリル鉱石が取れる鉱山があってな、そのリル鉱石を精錬するとミスリルという純度の高い金属になるんだよ」


「へー、このミスリルは軽いけど、鋼と比べて硬度はどうなの?」


「鋼では比べ物にならんよ、買うなら鋼より軽くて頑強なミスリル一押し、そしてウチの職人が打った剣は出来栄えが最高ランクだ!!」


「そうかーー」


と、亮太の目の色が変わったが、ジャスティンが亮太を店の外まで服を引っ張り出した。


「なんだよ、ジャスティン?!」


「買い物は後だ、他にやる事があるしな」


「そうよ、リョウタ。お金は私がちょっとは持っているけど、まず宿屋を探しましょ」


と、亮太達と今後の行動について話をしていた。


 チャロはパタパタ飛びながら、


「あ、あの焼き菓子美味しそうだわ。おお、あっちの水飴も捨てがたい」


と露店の食べ物に心奪われていたが、急に現れた網に襲われ捕らわれそうになる。


「きゃーーーーーーーー」


 その声を聞き、亮太はすぐその事態に気付く。

 紺のコートを纏いフードを被った体格のいい男が、虫取り網みたいなものを使ってチャロを捕獲しようとしたのだ。

 すぐ駆けつける亮太。後にフィーネ、ジャスティンも続く。


「その子を放せ!!」


 剣の柄を握り、いつでも抜ける体制を取り、亮太は鋭く牽制した。

 紺のコートの男は、フードの中で目がギロリと光らせ、亮太を睨みつける。

 

 ネコ科の目をしている。

 遠目からみたらただの人間に見えるが、近くで見ると違う。

 何かの獣人なのか?

 亮太の声に男は動きを止めた。


 その一瞬の隙を突き、フィーネは魔蚕の糸に覇気を込め、その人物の網を切断した。

 チャロは網から開放され、一目散に亮太の後ろに隠れる。


「ち、邪魔な奴らだ。命が惜しくば消えろ」


 低いがよく通る声が聞こえる。凄みのある声だ。


 一触即発の状況だったが、周りの見物客達も騒ぎ始めたのを見て、紺のコートの男はちっと舌打ちして人込みの中に逃げていった。


 後を亮太が追おうとしたが、ジャスティンに服を引っ張られ止められた。


「なんで?」


「今追うと、みんなバラバラになる。それにな、あの男にはもう追手が付いているようだ」


 紺のコートの男が逃げた方をチラリと見る。

 そう言われて見てみると確かに、何人かの見物客がコートの男を追いかけてる様にも見える。


「まさか、『漆黒の隼』? ここにもいたのか?」


「わからんが、俺達は約束通り、彼らからの接触を待つとしよう」


 亮太はうなずき、まずは王都の城下町で宿屋を探すのであった。


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