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エピソード6:君とこの町で生きていく②

 金曜日、時刻は間もなく14時になろうかというところ。

 白い半袖Tシャツにスキニージーンズという私服姿の名倉里穂は、仙台市の中心部にある図書館の自習室で、夏休みの課題をこなしていた。

 今の時期はしばらく、部活は午前中のみ、午後からは気温が上がりすぎて体調を崩す可能性があるとのことで、昨日の時点で各自調整と通達されていた。里穂も部活仲間から室内フットサル場に行こうと誘われたけれど、今日は無理だと断った。

 そして、とりあえず持ってきていた私服に着替えて図書館近くのファストフード店で昼食を食べた後、図書館で勉強している。『仙台支局』だと、どうしても知り合いがいることで、集中力が続かないと思ったのだ。

 半透明の間仕切りで仕切られた個別スペースが、ワンフロアに50席ほど並んでいる広い空間。今は全ての席が埋まっており、誰もが粛々と問題に向き合っている。

「……うー……」

 他の人の邪魔にならないように小声でうなりつつ、里穂はシャープペンシルで問題集を叩きながら、その答えを探した。去年、散々受験勉強をした時は、仁義や統治、政宗がサポートしてくれたけれど、今は1人だ。

 そして……きっと、これから向き合う別の問題の答えも、自分1人で用意しなければならない。

 今日1日、朝からずっとそわそわしている。何よりも朝、駅に1人で向かうのが……とても、とても寂しかった。


 ――里穂、行ってらっしゃい。今日も頑張ってね。


 いつも笑顔でそう言って見送ってくれる彼が、いない。

 分かっていても何度も改札の向こうを見てしまって、見慣れた彼の笑顔を探した。そして、電車の発車を告げる音楽によって現実に引き戻され、泣きそうな気持ちを引きずって電車に乗ったのだ。

 部活をしている間は、何も考えなくてよかったけれど。


「……そうだよ、里穂。これは僕のエゴなんだ」

 あの時、こう言った彼の顔を忘れることが出来ない。

 こうして1人になると、色々なことを考えてしまう。

 仁義とは、もう……会えないのだろうか。


「……分かんないっすよ、ジン」

 里穂が何も解けない現状に、小言に混じって大きな溜息をついた次の瞬間、斜め前の席に座っていた人物が、荷物をまとめて立ち上がった。

 座った時の目線の高さまで仕切りがあるので、立ち上がれば顔が見える。里穂は何となく顔をあげて――見知った顔に目を見開いた。


「名波君!!」


 大きな声で名前を呼ばれた彼――名波蓮は、ぎょっとした顔で振り返り、里穂の姿を確認する。

 そして、彼女の名字を呼ぼうとして……周囲から感じる「うるさい」という視線に気付き、とりあえずペコリと頭を下げた。


 その後、集中力が切れた里穂も荷物をまとめ、自習室を出たところで蓮に声をかける。今日の彼はグレーの半袖ポロシャツに紺色のジーンズという組み合わせで、その手には縦型のトートバックを持っていた。

 図書館の出口へと向かって歩く蓮に追いついた里穂は、隣に並んでいつも通り話しかける。

「名波君もここで勉強っすか?」

「えぇまぁ。ここだと集中できるんです」

 蓮は端的にそう告げると、彼女から視線をそらして前を向いた。その顔が、既に次の予定のモードになっていることに気付いた里穂は……「もしかして」と口を開く。

「これからバイトっすか?」

 刹那、蓮の表情が固まったことで、里穂は自分の直感が正しかったことを悟る。そして、廊下の突き当たりにあるエレベーターホールにたどり着いたところで、蓮は何かを思い出したように里穂の方を向いた。

「そういえば、先日……柳井君に出してもらった資料がとてもわかり易かったです。流石ですね」

「へっ!? あ、あー……そうっすか!! それは良かったっす!!」

 まさか仁義の話題になると思わず、里穂は不自然に声を上ずらせる。そして、丁度到着したエレベーターに乗り込むと、壁にもたれかかって……一度、息をついた。

 こんなに動揺してしまうなんて、我ながら情けないと思う。

 蓮はそんな彼女にこれ以上深入りすることなく、冷静に1階へのボタンを押す。そして、少し離れた位置に立ってスマートフォンを見ていると、「そういえば」と里穂が再び話しかける。

「名波君は、どこで片倉さんに化けてるっすか?」

「化けてる……」

 蓮がジト目を向けつつ、端的に答えを告げる。

「地下鉄の連坊駅(れんぼうえき)近くにあるワンルームです。そこに必要な荷物を置かせてもらっています」

「ああ、確か伊達先生の税金対策っすよね」

「……詳しくは知りません。確か以前は別の人が住んでいたらしく、伊達先生はその人が帰ってくるまでの間、管理を頼まれているだけらしいですよ」

「そうなんっすか。知らなかったっす……」

 里穂が目を丸くしたところで、エレベーターが1階に到着した。2人して図書館のあるメディアテークの外に出て……むせ返る熱気に、無言になる。

 2人の目の前にある定禅寺通りには、道路の中央に、青々とした木々が生い茂っているけれども……その日陰に入っていても、この熱気から逃げることは出来そうにない。

 先に動く決意を固めた蓮が、「それでは」と会釈して、地下鉄の駅がある西公園の方へ歩き出した。その背中を見送りながら、里穂はこれからどうしようかと思案して……。

「……とりあえず駅に移動するっすかねぇ……」

 政宗との待ち合わせは、15時に本塩釜駅。そのためにはまずここから仙台駅に行かなければならないので、とりあえず蓮とは反対の方向へ歩き始める。

 仙台駅方面へと無言で歩いている間……里穂は、こんなに緊張するのはいつぶりかと考えて、1年数カ月まえのことを思い出していた。


 それは、今から1年と少し前。仁義が高校生になり、里穂が中学3年生(受験生)になった時に、降って湧いたという言葉が相応しい……そんな、唐突な話だった。


「……え?」

 ゴールデンウィーク開始直前の4月下旬、日曜日の夕食後、2階の自室から1階のリビングに1人で呼び出された里穂は……机を挟んだ向かい側に座り、沈痛な面持ちで説明を終えた母親を見つめて、口元を引きつらせた。

 ちなみに今、リビングには2人だけ。里穂は既に髪の毛をおろしており、パステルカラーの部屋着を着用している。理英子は襟付きのシャツにロングスカートというシンプルな格好で、娘の身に降り掛かってきた災難を憂いた。ちなみに仁義は2階の自室、陽介は残業でまだ仕事中である。

 理英子からとんでもない計画を聞かされた里穂は、信じたくないと言わんばかりに早口で問いかける。

「お、お母さん……何言ってるっすか? 私はまだ中学生っすよ?」

 目に見えて困惑する里穂に、理英子もまた、呆れ顔で重苦しい溜息をつく。そして、里穂を見つめてこんなことを言った。

「そうなのよ、里穂。だから今のうちに相談しておこうと思って」

「相談……?」

 このの言葉にますます顔をしかめる里穂へ、理英子は事の概要を解説する。そして……。

「……どう? 勿論2人の意思を尊重するけれど……お母さんはこうなると嬉しいなって思ってるわよ」

 理英子の提案に、里穂は若干顔を赤くしながら目を泳がせて……膝の上で両手を握る。

「正直……考えたことがなかったっす」

「でしょうね。あんた達2人は、その辺の兄妹より仲が良いんだから」

 理英子はそういって楽しそうに笑うと……里穂に向けて、静かに頭を下げた。

「こんなことになってしまってごめんね。この話は絶対になかったことにしたいの。だから……少しだけ、前向きに考えてくれないかしら」

「お、お母さん、そんなことしなくてもいいっすよ!!」

 母親のこんな姿を見るのは初めてだったので、里穂は思わず狼狽えて顔の前で手を振った。

 理英子は静かに顔を上げると……綺麗な顔に不機嫌を宿して頬杖をつき、重々しい溜息をつく。

「だって……どう考えても時代錯誤すぎるでしょう。頼みの綱でもある兄さんは常識的な反応だったけれど……こういう時は本当に頭どうかしてると思うことがあるわ」

「お母さんぶっちゃけすぎっす」

 里穂がツッコミを入れると、理英子が「たまにはいいじゃない」と愚痴をこぼした。

「愚痴の一つくらいいいたくなるわよ……大事な大事な娘を35のおっさんに嫁がせろ、なんて、冗談でもたちが悪すぎるわ」


 理英子がその話を聞かされたのは、今日の午前中。具合が悪くて入院している母親――里穂の祖母の荷物を取りに、名杙本家に立ち寄った時だった。

 必要なものを揃えて車に戻ろうと、玄関を出たところで……門の方から歩いてきた男性2人に気付き、軽く会釈をする。

 前から歩いてきたのは、理英子も数回顔を合わせたことがある分家・名波家の人間だった。1人は60代後半の初老の男性、もう1人は初老の男性の2倍は体重がありそうな、40代くらいの巨漢の男性だった。

 とっさに下の名前まで思い出せなかった理英子が愛想笑いですれ違おうとすると、理英子に気付いた初老の男性が彼女の前で立ち止まり、白髪交じりの頭を深々と下げる。

「理英子さん、この度は我が愚息をお見初めくださって、本当にありがとうございました」

「はい……あの、一体何のお話でしょうか?」

 意味がわからない理英子が顔をしかめると、顔をあげた男性は口角を上げて、ニヤリと笑う。

 そして、とんでもない話を口にした。

「何をおっしゃいます。理英子さんのところの里穂さんと、うちの息子との婚約の話ですよ」


 その話を聞いた理英子の顔は、能面より感情がなかった。

 目の前の相手を引きずり倒したくなる衝動を抑えて話を聞くと、何でも、『名杙側から』そういう話があった、とのこと。

 無表情に「そうですか」と相槌を打つ理英子へ、初老の男性は上機嫌に言葉を続ける。

「5月の食事会でお会いできるのを、楽しみにしていますよ」

 その瞬間、今まで無言だった巨漢の男性(婚約者候補)が、口元に下卑た笑みを浮かべたのを……理英子は見過ごすことが出来なかった。


「――兄さん!! ちょっと領司兄さん!? いなくても今すぐ出てこい!!」

 兄の領司家族が住んでいる一軒家に飛び込んだ理英子は、靴を玄関先に放り投げてドスドスと無遠慮に入り込んだ。鬼神と化した彼女を運悪く発見してしまった心愛が、全身をビクリを震わせる。

「ひっ……!?」

「あら、心愛ちゃん……お父さんは、どこ?」

「おっ、おおおお父様は、多分、裏庭で……」

 泣きそうな心愛が理英子が入ってきた玄関を指差すと、騒ぎを聞きつけた心愛の母・愛美(まなみ)が、慌てて玄関先に飛び出してくる。

「理英子さん!? 何かあったんですか?」

「愛美ちゃん、今すぐに兄さんと話がしたいんだけど、連れてきてもらえる?」

 目が一切笑っていない笑顔で告げる理英子に、愛美は「わ、分かりました」と何度も首肯して、心愛に「お父さんを応接間に呼んできて」と耳打ちした。そして、足音から不機嫌な理英子を先に応接間へ案内しつつ……名杙本家が何をやらかしたのかと、自分の預かり知らない話に肩をすくめるのだった。


 その後、名杙当主であり実の兄でもある名杙領司に先程の話をして、「里穂の年齢を考えろ!!」と憤慨する理英子に、領司は疲れ切った顔で溜息をついた。

 そして事実確認をした後にこの話を凍結させることを確約してくれたけれど……理英子は不安が拭えない。

 いくら分家の話とはいえ、里穂は名杙直系の血筋だ。彼女に関するこんな話が領司の耳に届いていないこと、そしてあの親子 ――というか父親の自信ありげな表情から、強力な後ろ盾を得ているとしか思えないからだ。

 病院へも戻らなければならないので手短に話を終えて、車に乗り込んだ理英子は……『後ろ盾』になりそうな人物を思うかべて、ハンドルを強く握った。

 まるで、自分が結婚した時と同じような流れ。あの時の理英子も、名杙側から指定された相手に納得がいかず……駆け落ち同然で家を出た。今でこそ色々あって名杙の分家になり、本家への出入りも許されているが、未だに当時のことを持ち出して説教をしてくる人生の先輩方も多い。

「……見てなさいよ、慶次兄さん」

 そして……そっちがその気なら、という反抗心と共に、『あること』を実行にうつそうと心に決めたのである。


 

 里穂は自分の部屋に戻ると、ベッドに転がって天井を見上げた。

 母親がこの話を――自分と、会ったこともない20歳以上年上の男性との婚約話を――してくれたのは、ゴールデンウィークに一族や支援者が集まる会合があるからだろう。いつもは仕方なく参加しているし、統治が気を遣って2人を自分の部屋に呼んでくれたりすることもあるけれど、彼も次期当主と呼ばれている手前、あまりそういうことも出来なくなるだろう。

 あの場に政宗がいてくれれば、まだ楽しいのだが……政宗は名杙本家でもその影響力を気にしている人がいるため、こういった、彼が人脈を広げそうな会合には一切招待されていなかったし、彼もまた、そんな機会を必要としていなかった。

「政さんも、うち兄も……強いっすねぇ……」

 しみじみと呟いてベッドの上を転がる。そして……扉の方を見つめた。

 仁義の部屋は、階段を挟んだ反対側にある。彼は勉強をしているか、政宗の仕事を手伝っているのだろう。彼が中学卒業と同時に『仙台支局』で働きたいと頼み、それを断られたこと、そして、まずは簡単な手伝いから始めていこうという話でまとまったことは、里穂もよく知っていたから。


 仁義もいつか、仙台に――石巻の外に、遠くに行ってしまうのだろうか。

 いつか、この家を……出ていってしまうのだろうか。

 考えたことがなかったけれど、彼の家は元々ここではない。だから、いずれそうなってもおかしくないのだ。


 それが彼の意思であれば、里穂が止めることは出来ない。けれども、もしも、仁義が『この話』に便乗してくれるのであれば、彼とは文字通り、ずっと一緒にいられる。

 ただ……この提案は、彼に無理強いをさせるのではないかという不安も強かった。天涯孤独のような仁義の立場を利用して、思い通りに動かそうとしているのではないか。

「……」

 里穂は仰向けになり、無言で天井を見上げる。

 胸の内は仁義にしか分からない。少なくとも、今、自室のベッドに転がっているだけでは何も分からないだろう。

 だったら――

「……当たって砕けた時のことは、砕けてから考えるっす……!!」

 里穂は決意と共に起き上がると、一度、深呼吸をしてから……彼の部屋を尋ねることにした。


「里穂、こんな時間にどうしたの? 数学の課題が終わってないとか?」

「お、終わってるっすよ!! 大丈夫っす!!」

 夜に自室を訪ねてきた里穂に、仁義は首を傾げなから彼女を自室に招き入れた。

 里穂の部屋と同じく、ベッドや勉強机、小物を入れる三段ボックスと衣服を入れるチェストなど、必要なものが壁際に配置されている。いつも通りベッドの上に腰を下ろした里穂は、何の疑いもなく隣に座る仁義を見つめ……赤面した。


 仁義がこの家で暮らすようになって、随分長い時間が過ぎた。

 最初の頃は引っ込み思案で、里穂の影に隠れるように人と接していた彼は……里穂と同じ学校に通い、同じサッカークラブに入った。駆のとりなしもあって、優しい彼が輪に溶け込むのは里穂が思っているよりも早くて、嬉しかったものだ。

 その頃、里穂と仁義は……なるだけ彼の髪や目の色を隠さないように決めた。

「だって、ジンは何も悪いことをしてないっすよ。里穂は、ジンの髪の色も目の色も、大好きっす!! きっとみんなも大好きになってくれるっす!!」

「……ありがとう、里穂」

 里穂がこう言えば、仁義が笑ってくれて……彼の笑顔を見ることが出来て、とても嬉しかった。


 そして、仁義がレギュラーになった小学校高学年の頃……練習や試合を見に来るギャラリーに、女性の割合が増えた。今まではクラブに所属しているメンバーの身内や友人ばかりだったのが、わざわざ違う学校から見に来る人も増えた。そして、その中からクラブに入会する人も出てきた。

 里穂は純粋に女子サッカーの仲間が増えて嬉しかったのだが……彼女たちのほどんどが仁義目当て。中には仁義と仲がよい里穂の陰口を言ったりする人もいたけれど、里穂はあまり気にしておらず、仁義の方が気にしていたように思う。

 彼がどこか申し訳なさそうにしている様子を見て、里穂はわざと原因に気付かないフリをして、こう、笑い飛ばしたものだ。

「ジンと話したいなら話せばいいっすよねー。ジンは怖くないっすから」

 そう言うと、彼がどこか安心したように肩をなでおろすのが分かったから。

 里穂はそれでいいんだと思うことで、彼との関係のバランスを保っていた。


 だから、改めて彼を見つめると……仁義が、その辺のアイドルよりよほど格好良いことに気付いてしまう。

 透けるような銀髪と碧眼は言うまでもなく、中学生になって急に身長で里穂を追い越し、声も以前より低く、落ち着いたように感じる。けれど、その物腰の柔らかさは変わっていないので……中学校で『王子様』と呼ばれていたことは、里穂も何となく知っていた。

 知っていたけれど……今まで、『王子様』だと思ったことがなかったのだ。

「里穂?」

「へぁっ!? あーえーえっと、じ、ジンは何してたっすか? 政さんの手伝いっすか?」

 その問いかけに、仁義は首を横に振る。

「今日はもうそういうのも終わったから、本でも読もうかと思って。だから大丈夫だよ」

「そ、そうっすか!! それは良かったっすね!!」

 自分でも不自然に声が上ずっているのが分かる。そして、そんな里穂を……仁義が怪しんでいることも。

 空笑いをする里穂を、仁義が真面目な顔で見つめ、落ち着いた声で問いかける。

「里穂、何があったの? 僕に何か……話があるんだよね?」

「っ……!!」

 こういう時の仁義は誤魔化せない。そして、里穂自身も……彼に嘘は付きたくないから。

 震える手を隠したくて、膝の上で握りしめる。心臓の音が外にまで聞こえるんじゃないかと

 里穂は耳まで熱くなっていることを自覚しながら、必死に彼を見つめ……恐る恐る、口を開く。

「あ、あのね、ジン……!!」

「うん」

 真面目に頷く仁義に、里穂は一度目を固く閉じてから――もうどう砕けてもいいやと決意して目を開き、決定的な一言を告げる。


「わ、私と……私と結婚して欲しいっす!!」

「……」


 真面目に彼女の言葉を受け止めた仁義が、一呼吸おいて、その意味を正確に理解した瞬間――


「……ええええぇっ!?」

 極限まで目を見開いた後、自分を見つめる里穂の表情と震える両手から……この言葉が本気であることを悟ったのだった。

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