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護法魔王尊~サナト・クラマ~  作者: でうく
第Ⅱ章.思慮の神・思兼神と岩戸隠れ計画(プロジェクト)
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Ⅸ.神々の集結~+タヂカラオ・イシコリドメ・天津麻羅~

「若いっていいさねぇ・・・」

「・・・・・・大丈夫か?御前(おまえ)

!肩に手を置かれて、恥しくて泣きそうになっていた思兼(オモヒカネ)が顔を見上げる。


第二の集合者・伊斯許理度売命(イシコリドメノミコト)天手力男神(アメノタヂカラオノカミ)が傍に立っていた。


慌てて立ち上がる。

「あぁ申し訳有りません!伊斯許理度売命(イシコリドメノミコト)。冠無しで御無礼を・・・」

恥らっていた割には切り替え早く、年長の伊斯許理度売(イシコリドメ)に詫びを入れる。意外に彼に、自尊心という意識は薄いのかも知れない。

「そんな畏まらんでほらー♪髪垂らしたが、似合う、似合う♪」

「いえ“伊斯許理度売(イシコリドメ)”の名は石の鋳型を用いて鏡を鋳造する老女の意。年上は敬えと・・・」

くわっ!伊斯許理度売(イシコリドメ)が物凄い形相で思兼と、その隣に立つ天手力男(アメノタヂカラオ)を睨みつけて黙らせる。この形相は、のちの般若の原型となった。

思兼が天手力男(アメノタヂカラオ)を肘で突く。天手力男(アメノタヂカラオ)は、は!?と一瞬思兼を見下ろした。

・・・・・・謝れという事らしい。

「はっ!?何で俺が・・・・・・!」

くわっ!!・・・何故か思兼が加勢している。とにかく恐いので、天手力男(アメノタヂカラオ)は不服ながらも取り敢えず謝っておく事にした。

「・・・・・・すみません」

言うや否や、伊斯許理度売(イシコリドメ)が歳など感じさせない愛らしい笑顔で

「天照大御神についてって()ってたけど、あたしは何をすればええんかねぇ?」

と、話を再開する。

思兼はそうですね・・・と呟いて

伊斯許理度売命(イシコリドメノミコト)を御待たせする訳にはいきましね・・・手力男(タヂカラオ)!私が伊斯許理度売命(イシコリドメノミコト)に依頼をしている間に、あのAV女優から冠を奪還する事!御前の面接は其から行なう」

なーによー!と天宇受賣(アメノウズメ)がふくれる。

「海老じゃ無いって言ってるでしょ!?と・に・か・く!あたしは絶対脱がないから!!誰があんたの為に!!」

「はぁっ!?海老!?脱ぐて、殻を!?」

「誰が私の為に脱げと言った!!君の滑稽な身体になど興味は無い!!」

「もうー最近の若い子達は♪」

ごった返す水鏡の草原。月夜見(ツクヨミ)がひっそりと独りで月を眺めていた時の趣の欠片も無い・・・突如、思兼が素に戻り、注文を付け加えた。

「あ、あと紐もよろしく。この侭じゃ冠に入り切れないや」

「オイ!」

「というか天津麻羅がいないと進まないのだった。天津麻羅早く来い!長老を待たせるな」

「長老って!ひでぇ!!」

頭の回転が速い分、話が飛びに飛び(まく)る。ついてこられるのはよくも悪くも天手力男(アメノタヂカラオ)のみ・・・そして、伊斯許理度売(イシコリドメ)の顔が変貌・・・と思いきや・・・



ちゅどーん!!



四柱が思わず空を仰ぐ。あれは・・・黄色い雲。金とも黄ともつかぬ色。


四柱が立ち尽してその光景を只見ていると、その雲は宙返りをして地上へ向かい、丁度四柱の立つ眼前に着地した。

その雲に乗っていたのは・・・



「あ・・・天津麻羅(アマツマラ)!!」



「やぁ。お待たせ」


天津麻羅(アマツマラ)。眼帯を纏った男。

今回派遣されたこの男の正式な名は“天目一箇神(アメノマヒトツノカミ)”といい『天津麻羅(アマツマラ)』という鍛冶集団に属する謎の多い男である。


「遅い!!」

最初に口を開いたのは、やはり思兼であった。偉そうに腕を組み、脚を肩幅まで開いてから

「老師が御立腹だ!!」

「えぇ!?更にいっちゃってる!?」

天津麻羅はゆっくりと顔を動かして思兼と天手力男(アメノタヂカラオ)に眼を遣ると、長い前髪を上げて二柱を凝視し、暫く黙って其の侭でいた。

「・・・・・・?」

と、思いきや、急に今度は伊斯許理度売(イシコリドメ)の方へ顔を180度ぐりんと向き、つかつかと歩いていって

「すみませぬ・・・老師。お待たせしてしまい」

と、言って伊斯許理度売(イシコリドメ)の両手を握り、掲げた。眼帯をせぬ左眼が、月の色を受けて金色に耀く。

月に向かって眼をいっぱいに見開きぎゅっと彼女の背を抱いて自分の側へ引き寄せると



「併し・・・!僕を()ち続ける貴女の瞳は、このツクの光よりも美しい・・・・・・!」



ガクッと、上空を視ていた顔が彼女の正面をとらえた。伊斯許理度売(イシコリドメ)、キュンとなる。


「いやん!やめてん、そんな御世辞。そんな事言ったら・・・月夜見さまに、怒られてしまうわーん」

「其はいけない!」

天津麻羅が伊斯許理度売(イシコリドメ)を抱しめた・・・老婆が、少女に、返った瞬間だった。


「おのれ月夜見神(ツクヨミノカミ)!僕の愛するものを傷つけるなんて・・・・・・!赦せない」


首回りを抱く伊斯許理度売(イシコリドメ)。天津麻羅は、其を確認しつつゆっくりと手を彼女から離し広げると、糸を手繰り寄せる様な振りを()った。



「僕の・・・!僕の愛しい・・・・・・!・・・・・・すみませぬ、御名前は」



・・・・・・天手力男は半白眼になって、その白銀から単なる白色へと萎えてゆく過程を、黒眼の端に映した。


手力男(タヂカラオ)!」


思兼の張った様な声に、手力男はフッと我に返った。思兼が天津麻羅が乗って来た雲の上から指示をしている。

「あの二柱は長くなりそうだから君等二柱にさっさと言ってさっさと帰そう。先ず、AVの君は岩屋戸の前で裸踊り。君は一頻(ひとしきり)其を観て笑った後に天照大御神を岩屋戸から引き出す。以上。帰ってよし」

「何の罰ゲームだ!!;」

手力男が我慢ならずにツッコむ。天宇受賣(アメノウズメ)は思兼の冠をぐしゃっと握り潰しビリビリに引き裂いた。

「あーーーー!!」

「あんたサイアクね!そんな事()らせて何が(たの)しいの!!」

甲高い声でそう叫び、思兼に攫み(かか)る天宇受賣。大袖から髪が()み出す。髪をすごく気にしながらも、思兼も負けじと彼女の腕を掴む。

「其は私の台詞だ!男の恥を!何という事をしてくれる!!」

「は?男の恥?笑わせんじゃないわよ!そんな変な冠してんのあんただけじゃない!!」

互いに泣き出しそうである。手力男が思兼を押えた。単独となった天宇受賣(アメノウズメ)に、すかさず天津麻羅が近づいてゆく。

「あっ!ちょ・・・御前



「泣かないで・・・・・・」



手力男は白眼になった。


天津麻羅が頬を伝う天宇受賣(アメノウズメ)の涙を優しく指の先で拾い上げる。()き場の無い涙を舐めると哀しげな顔をした。


「・・・・・・しょっぱい。とても、悔しかったんだね・・・・・・」


「天津麻羅さま・・・・・・」


・・・再び、今度は天宇受賣(アメノウズメ)を抱しめる!じわじわと、腰から肩、肩から顔、と手を滑らせると、接吻せん勢いで顔を近づけた。

眼と眼が、見つめ合う。



「・・・・・・すみませぬ、御名前


「ちょーい待ち!!」



老師ぃ~!?手力男は眼が飛び出すかと思った。


老師イシコリドメがめちゃめちゃカッコよく仁王立ちをし、容赦無い眼差しで二柱を睨んでいる。


「・・・あら、一体何の用かしら。ちょ・う・ろ・う」

・・・明らかな皮肉。老師対AV女優の男を巡る闘いが、今、始ろうとしていた―――!

「あぁたの様な穢れた女に、天津麻羅さまは渡せないね」

「そう思う貴女の精神が、穢れていると思わなくて?・・・大体、貴女の様な終りかけの女、天津麻羅さまが御相手してくださると思う?」

「笑止!!あぁたはこんな素敵な年寄りにはなれないよ!!」

天宇受賣(アメノウズメ)が舞い、伊斯許理度売が日像鏡(ヒガタノカガミ)日矛鏡(ヒボコノカガミ)を鏡合わせにした。両鏡の光を受けて、神楽を舞う天宇受賣の像が一体、草原の空間に現れる。


「・・・・・・もう、帰っていいすか」

手力男がゲンナリとして女の闘いに背を向ける。思兼は女の闘いに目を当てたまま

「・・・よし。解散」

許可した。




手力男がやれやれと頭を掻きながら思兼から離れてゆく。思兼は顎に手を当てて

(ふむ・・・やはり使えるな・・・・・・)

と、また思考を張り巡らせていた。

想えば、触ろうとしても透かしてしまう立体映像。何と不可思議で神秘的な現象なのだろう。




天津麻羅がフラフラと、とり憑かれた様に何処かへ歩いて()ってしまう。其を偶々(たまたま)目撃してしまう手力男。御人好(おひとよ)しな彼は無視できず

「おい、ちょっと待て。俺はもう話を聞いたからいいけど、思兼が伊斯許理度売(イシコリドメ)と御前をセットで話したい事が有るって言ってたぞ。御前はまだ帰れないんじゃないか?」

と、華奢な肩を掴んで引き留める。


と、急にチーンチーンチーン・・・と妙な音が聞えてきて、不気味に感じた手力男は周囲を見回した。

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