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護法魔王尊~サナト・クラマ~  作者: でうく
第Ⅱ章.思慮の神・思兼神と岩戸隠れ計画(プロジェクト)
12/21

Ⅻ.神々の集結~全員集合?~

全員が揃った。天津麻羅(アマツマラ)伊斯許理度売命(イシコリドメノミコト)玉祖命(タマノオヤノミコト)天児屋命(アメノコヤネノミコト)布刀玉命(フトダマノミコト)天手力男神(アメノタヂカラオノカミ)天宇受賣命(アメノウズメノミコト)。て、あら天津麻羅が居ない。



「・・・もういい。始める」

何気にボロボロな思兼神(オモヒカネノカミ)。長い黒髪が其を物語っている。あちこち跳ねて、頭頂部の毛は天空を目指す。


「君達に集まって貰ったのは他でも無い。天照大御神(アマテラスオオミカミ)をあの岩屋戸から出し、太陽の無い世界を救う為だ」


すぐに辺りがざわつく。(しか)もなかなか収まらないのが彼等だ。其の侭話は脱線し、話し合いは単なる雑談で終る。この事が予想できていた思兼は、だからこそ天安河原(あまのやすがわら)の集会では話をしなかったのだ。

思兼のイライラが募る。彼等の雑談はまだ終らない。その内、思兼は身体を上下左右に揺らし、駄々を捏ね始めた。

「・・・どしたの?オモヒカネさん」

伊斯許理度売(イシコリドメ)天宇受賣(アメノウズメ)に耳打ちをする。いつの間に仲良くなったのか。天宇受賣(アメノウズメ)はツンとした顔で思兼を見ると、彼に聴こえるようわざと大きな声で彼女の問いに答えた。

「あいつ子供だからねー。話聴いて貰えないと、すぐああ遣って荒れるの。皆の纏め役っていう位だから、どれほどスゴイ神かって、想像してたでしょ。背とか余り高くないしー」

「正直・・・・・・」

そう()って、また雑談へと戻ってゆく。自尊心の高い思兼は恥しいやら、腹が立つやらで、裏返って甲高くなった声をぎんぎんに皆に向かって怒鳴りつけた。

「もう!もう!私の話を聴けーぃっ!!」

・・・確かに、まるで子供である。布刀玉は相も変らず体育坐りでそのさまを眉一つ動かす事無く観察していて、天児屋は驚いた顔で此方を見ていた。

「・・・・・・どした?」

天手力男(アメノタヂカラオ)の気を遣った暢気な質問に、思兼の神経は逆撫でされた様だった。感情に任せて天手力男に当り散す。

「まだ解らぬか!この脳内筋肉男!!」

何故そこまで怒るのかわからないので、天手力男もはいはいとは今度は聞けない。立ち上がり、思兼の許へと寄って口答えをした。

「何で俺が御前(おまえ)に云われなきゃいけないんだよっ」

「話についていけないならばせめて黙って聴いておくべきだ。君にはそうしても理解は出来ないだろうがな!」

「うるさい!大体、俺は黙って聴いてた!話してるのは女性陣だろ!」

「その私語をしている輩を静かにさせるのも、補佐の役目だろう?云われないと判らないのか?」

「なんだと!?」



「うるさい!!」



いつまでも続きそうな口喧嘩に突如終止符を打ったのは、玉祖命であった。不機嫌そうで気難しげな顔をしている。二柱は黙った。



「要するに、御前が謂いたいのは、あれだろ!世界が亡びるかも知れないんだろ!」



「世界が!!?」



チーン。布刀玉が楽器を鳴らした。その音を皮切りに、夫々(それぞれ)の夫々に拠る夫々の為のシンキング‐タイムが開始された。

「7柱も神が在ながら、事情を呑み込めるのが玉祖だけとはな・・・・・・」

思兼は軽く失望する。自問自答をくり返し、今生に別れを告げる諦めの早い神までいる。まぁ・・・其は天児屋だが。

「ええい!うろたえるな下郎共!!」

玉祖がブチ切れる。天宇受賣(アメノウズメ)が真先に反発し、玉祖の(もと)へ高いヒールをかつかつと鳴らし近づいていった。

「下郎ですってぇ!?」

細く白い腕を振り上げる天宇受賣(アメノウズメ)を思兼は颯爽と制止すると、久々に冷静に珍しく天七神を取り纏め始めた。

「思兼・・・・・・」



「全ては天照大御神が太陽を拒んでいるが故だ」



「天照大御神を岩屋戸から出せば其でよかろう!」

「うるさい!ひとの話を聴け」

玉祖はムカッときたが、ここで怒ってはまたいつ話が元に戻るのかわからないので、ぐっと堪える事にした。


「天照大御神が岩屋戸へ(こも)った理由は、弟君素戔嗚尊(スサノヲノミコト)と喧嘩をされたからだ。これ、其処。憤怒すな。話が進まなくなるだろうが」


両手を突き上げ「ふんぬー」の姿勢をとる伊斯許理度売(イシコリドメ)に、思兼はサラリとツッコんだ。怒りを表現していた割に、云われると何だか嬉しそうである。


「素戔嗚尊も根の国へ()っては(マガ)を撒き散らしたり、無駄に生き物を殺しては其等を玩具としている模様」


「怖い・・・・・・」

天宇受賣(アメノウズメ)が四肢を曲げて身体を小さくする。根っこの優しい彼女は、こういう類の話は苦手だ。思兼は其方に眼を遣る。布刀玉が彼女の身体を包み、伊斯許理度売(イシコリドメ)が手を握ってあげていた。女性神というものは、こういう時の包容力が素晴しい。


思兼は安心した様に視線を戻し、話を続けた。


「天照大御神を岩屋戸から出したところで、素戔嗚尊が居れば意味が無いだろう。また同じ事のくり返しだ」


で、と思兼は間髪入れずに大きく言った。玉祖が一言云いたそうな顔をしていたからだ。前置きはいいと云いたいのだろう。



「素戔嗚尊の事は、彼の兄君月夜見尊と、天照大御神より呼ばれし金星の使者・サナト=クラマが何とかするらしい。そして我々八神が担当するのが―――」



天ツ神六神がごくりと唾を呑む。皆の眼が思兼に集中する。思兼は片手を挙げ、張りの有る声で皆に伝えた。



「天照大御神を岩屋戸から出す事だ」



おぉー、と感心の拍手が起きた。天手力男はずり落ちる。玉祖は拳をプルプルと震わせて、我慢ならんと叫び(まく)った。

「俺が言った事まんまじゃないかぁーーー!!」

「只!!」

と、耳を塞ぎつつ思兼は彼の上から声を被せた。周りのみならず、怒り心頭であった玉祖もビクッとする。

声を低くして、思兼は云った。



「之は重大任務だ。ツクの力の一番大きい十五夜にしか勝ち目は無い。失敗は許されないのだ」



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