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消えない想いの幻想  作者: マテリアル
14/19

手紙の真実と突入作戦

真実はいつも残酷だ。

何時の時代も、隠された真実は残酷なものばかりだ…

きっと彼もその残酷さを知ってしまうだろう…

彼は…耐えられるのだろうか…

優秘が寝静まり、辺りも真っ暗になった夜、俺は自分の部屋であるものを取り出した。

「…いい加減、俺もこの手紙を読まないといけないだろう…」

正直な話、石英さんにも相談しようと思ったが、これは俺の問題だ。

優秘には話してしまったが、優秘ですら、俺宛の手紙だと言い好奇心すらなかったのだから…

そう決意し、俺は椅子に腰かけ、封をカッターで開けた。

そして、中の手紙を取り出し、広げた。

「えっと何々?……お元気ですか?」

手紙:お元気ですか?私はあまり元気とは言えません。というのも私が転校しなければいけなかったのは、

父と母が別れた為に母がそのまま行方が分からず、私は父に引き取られることになったからです。

父は愛情というものが感じられない人です。正直父程情が薄い人も、そう滅多に居ないでしょう。

私に感情がほとんど無かったのは、ある意味父の影響からだったのでしょう。

そんな私達は、当然のように分かり合えませんでした。

当然です、私は愛情を知りません。私は感情を深く知りません。そんな私は、

父の孤独を埋めることはできませんでした。

ある日、父は暴力を私に振るうようになりました。物を投げられました。頬を殴られました。

そして、私の母の思い出の品を、壊されました。

私は悲しいとか、辛いとかは思わずにただ、可哀想な人なんだなという理解しかできませんでした。

しばらくして、父は親会社に売られるとか、このままだとわしは殺されるんじゃとかと、

疑心暗鬼に取り憑かれ始めました。私は、そんな父はもう可哀想だとも思えなくなりました。

病気なんだなと、理解しました。それと同時に、私の身体がもうそろそろ、

限界に近いということを確認しました。そして、私はこのままでは近いうちに、

命を落とすんだと理解しました。だけど、ただ一人忘れられなかった友達が居ました。

そして、私にはやりたい事があったことに気づきました。

永遠に変わらない想い出、賢と過ごしたあの丘での事。

だからどうか、『私を助けに来て欲しい』

そして賢と、もう一度永遠に変わらない友達として話がしたい、

これが私の感情だから、秘めた心の底から期待する、再会を望むこの欲望が私の感情だから、

私の唯一の友達として、私を助けに来てよ、賢。

「………」

手紙はここで終わっていた。

そして俺は、この時初めて知った…自分と感じ方が違うからこそ、お互いの唯一の友達となった彼女は、

この手紙を俺に送るときに、『自分の感情を理解して、それを受け入れていた』事を…

「この手紙は…俺が中学一年の時に送られた物だ…差出人が分からなかったから、気味が悪いと…

確認しないまま忘れていた…とても…大事な……あぁ…」

俺は、手紙の文字は段々と滲んだ文字になっていたことに気づく、

…そして乱雑に落ちたような無数の雫…涙の痕を見つけた。

「…なんて事だ、俺は…見落としていたのか?こんな大事な…」

気づけば、自分の涙も手紙を濡らし始めていた事に気付いた…

だが、閉じる勇気も無かった…閉じれる筈がなかった…

「あああぁぁあああ…」

俺は、声にはならない声を上げ、泣いてしまった。

我慢ならなかった、自分のしてしまった行いが…自分の罪が…

「せめて…何か…」

すると俺は、手紙の封を開けたカッターを手に持っていたことに気付く。

「こんなんじゃ…俺は救えるはずが…無い……資格が……無い…」

目を瞑り、俺はソレを自分の首筋に当て、意識が遠のいた…

手紙を見た俺の意識は、ここで途切れていた。


「…自分の意志で一人で見た事は、大事な事だけど…押し潰されちゃうなら、

それはまだ早すぎるんだよ賢人。」

優秘は、カッターを自分の首筋に当てた賢人の首筋に、少しくすんだ金色の光を纏った右手を当てていた。

「まず、この手紙は想いが無いんだよね…だから私や麗美じゃなんとも出来ない…」

優秘の右手を纏っていた、くすんだ金色の光が消えると同時に賢人も脱力し、意識が途切れ、

持っていたカッターを落とした。

「とりあえずこの場凌ぎだけど、この手紙の事についての記憶を忘却させておくね…まぁ、

そのうち思い出しちゃうだろうけどね。」

優秘は手紙を手に取って10秒程度目を通し、それを閉じ、封筒の中へ戻した。

「なんか、懐かしい気がするかも…この書き方…とりあえずこの手紙は私が持っとこ」

そう言うと優秘は部屋の電気を消し、手紙を持ち去った。

「…頑張ってね、賢人。」

机に頭を伏せて睡眠を始めた賢人を見ながら、優秘はそう言い扉を閉めた。


…チュンチュン…

「痛ってててて…あれ?俺なんでこんなところで寝てんだ?」

朝8時、俺はあまりの身体の痛さに目を覚ました。

それもその筈…何故か自分の部屋の椅子に座り、机に俯せになって寝ていたのだから…

「あ痛たたたた…昨日何してたっけ…」

俺は立ち上がり、背伸びをしながら昨日の事を思い出す。

(確か何時も通り優秘の夕食を作って…風呂入ってテレビ見て…んでその後…あれ?)

その後、が思い出せない…何故かは分からないがその後から先が記憶に無いのだ。

「…まぁいいか」

俺は軽くそう思い、部屋を出た。

リビングでは、優秘が早速テレビを見ていた。

「おはよう優秘…朝から元気な事だなぁ…」

俺がそう言うと優秘はこちらを見て言う。

「おはよう賢人。…あのさ、もし大事な約束を忘れてたら賢人はどうするの?」

俺は、優秘が同じ学校の子と何か約束事をしていたんだろうと推測する。

「どうだろう…俺なら取り得ず謝りに行くかな?どんな約束であれ、約束は約束なんだし。

それと深く考えない事だな、むしろ失礼にあたるかも…しかし優秘が忘れ事をするなんて珍しいな」

俺がそう言うと、優秘はどこか少し優しそうで、悲しそうな顔をして言った。

「…まぁ、賢人も気をつけてね。何時どうなるかなんて分かんないし。」

……?

優秘が何を言っているのかあまり分からなかったが、とりあえず約束には気をつけるようにしろって

事だと俺は納得し、朝食の支度を始めた。

そういえば今日は、夏休み前の最後の学校の登校日だ。


最後の登校日は、二時間授業で昼には放課後となっている、高山先生は配布物などを配り、

夏休みの説明等をしていた。

「…なので、勉強に気は抜けないし夏休みという名の自習期間だという事は忘れたらいけないぞー?」

…Zzz…

俺の前の席から少し寝息が聞こえる…福井め、さては退屈すぎて眠りだしたか…

「…特に福井!!お前はより一層勉学に励むように!!」

高山先生が福井の近くに行き、大きな声でそう言うと福井はぱちくりと目を覚まして高山先生を見た。

「も、勿論ですよ!頑張って自由な勉強をしていきますよ!」

福井は何のためらいも無く、高山先生にそう言った。

「…一応確認するが、その自由な勉強は、本当に学校に関係のある勉強だな?」

高山先生は探るようにそう福井に質問する。

「……多分関係あるんじゃないですかね?」

福井は高山先生から目を背けてそう答える。

「…そうか、なら次の二学期始期テストは平均点越え間違いないな?なら自由に勉強するがいい。」

高山先生のその言葉を聞いた福井が絶望に満ちた顔を見せると、

周りのクラスメイトはクスクスと笑っていた。

「…さて、以上だ。もうチャイムが鳴るが…そうだ、材架、石英、福井、橋本。お前達はこの後、

科学実験室に行ってくれ。では皆さん、始業式で会いましょう。」

…キーンコーンカーンコーン…

チャイムと友に授業が終わり、生徒はそれぞれ早く帰ったり、愚痴り合い始めたりしていた。

「じゃあ福井、呼び出しあったし行くぞ」

俺がそう言うと福井は言う。

「えー、もう夏休みだし家でゴロゴロしたいよー」

…こいつはもう、完全に夏休みモードである。

「材架くん、福井くん、早く行かないと怒られますよ?」

委員長が石英さんと一緒に俺と福井を呼びに来た。

「分かりました…と言いたいんですけどコイツが…」

相変わらず福井は福井だった。

「…ちょっと殴ったらいいんじゃないかな?」

委員長が目は笑ってない笑顔を浮かべ、福井のほうを向いてそう言う。

「福井ー、お前いい加減にしないと委員長に酷い目に合わされるぞー?」

そんな俺の声がようやく届いたのか、福井はようやくその思い腰を上げ、立ち上がった。

「はいはい。行きますよー…」

(コイツ夏バテでもしてるんだろうか)

そういえば最近、熱くなってきた気もする…もう初夏だから当然ではあるが…


4人で化学実験室に入ると、そこには福井のお父さんと高山先生と何故か母さんと親父もいた。

「賢人、先に来ちゃったよ。」

母さんが満面の笑顔でそう言う。

「…なんで母さんと親父がいるんだ!?」

俺が驚きながらそう聞くと、親父は答えた。

「いやな、突然昨日高山先生から電話があったんだよ。なんでも例の『祥子ちゃんの件に参加するか』と聞かれてな。」

その時、俺は知った。

今回ここに集められたのは、ようやく福井のお父さんの調査が一段落したからなのだ。

…ガラガラガラ!!

突然扉が乱雑に開かれる。

「賢人!調査が終わったって本当!?」

学校帰りの制服の優秘だった。

「じゃあメンツも集まったことだし、高山先生、石英。

初めて問題ないか?」

福井のお父さんがそう尋ねると、石英さんと高山先生は教卓の方へ向かう。

「福井さん、初めて貰って結構です。是非ともお願いします。」

高山先生がそう言うと、石英さんも答えた。

「はい、私も心の準備は出来てます。お願いします。」

2人の了解を確認した福井のお父さんは、最初に席に着くよう誘導した。

「ではまず、各自自由に席に着いてください。」

俺も含め、皆がそれぞれの席に着く。

「次にプロジェクターを使うので電気を消させていただきます。」

福井のお父さんがそう言うと、高山先生が電気を消し、プロジェクターの電源を入れた。

白い黒板には、『乖離の異空間について』と表示されていた。

「皆様も知っているかも知れませんが、以前高山先生と材架賢人君と橋本清深さん、

そして石英は、ある女性に襲われ特殊な危機的状態となってしまいました。」

福井のお父さんがそう説明し、パソコンを使って次のページを表示する。

そこには虹色のビー玉の様なものが映し出された。

「そして、その時何故か突然消えたその女性が消える際に落としたのがこの虹色のビー玉のようなものです。

最初はこのビー玉の様なものは特に何も意味もないものだと思っていましたが、石英の協力の元調査した結果では、このビー玉の中に、その女性は居るという結論に至りました。」

そして次のページ…そこには幼い頃の祥子の写真とまだ高山先生と知り合った頃の陽子さんが写っていた。

「その女性とは、彼女等…いや、彼女の事です。

彼女は敬三祥子として生まれ、耳を疑うようですが本人からすれば8年前の世界。我々からすれば8年後の未来から、彼女は記憶を失い、橋本陽子として生きていました。」

親父と母さんは、物凄く驚いた顔をしていた。

「え!?てことは未来人!?」

福井がマヌケ面をしてそう言う。

「まぁ、我々からすればそうなるだろう…では話を戻しますが、では彼女は一体今はどうなっているのか…ここから先はあくまで推測の域になると思いますが説明致します。」

次のページには、ビー玉の様なものの内部構造についてが表示されていた。

「これが内部構造です、簡単に言うとこれは、石英や材架優秘さんのような一部の賢浄者にしか見えない扉の役割をしています。これを開けることによって、賢浄者でなくてもその先へ進むことができます。

そして調査の結果、その内部は現代の物理学や量子学では有り得ない異次元となっている事が分かりました。」

次のページは、脱出についてだった。

「脱出の際には、持ち込んだ水晶を空間内で破壊する事によって、原理は不明ですが脱出が可能という事も分かりました。」

そして最後のページには、空間と目的についてが表示された。

「これが、最後のページになります。ではこの空間はなんなのか、という事についてです。実はこの空間は陽子さん、又は祥子さんのどちらかが人格から乖離して、空間となった可能性が非常に高いと思われます。

そして目的は、彼女を一人の人間として失った人格の記憶を蘇らせる事です。正直、語りかけるぐらいしか打つ手は無いと思いますが彼女と関係が深い皆様と協力すれば達成出来ると私は信じています。」

福井のお父さんがそう言いながらパソコンを閉じると、高山先生は電気を付け、プロジェクターの電源を落とした。

「…なんか、すごい事になってきたな」

俺がそう言うと、母さんが聞いてきた。

「…一応賢人は無理に行く必要は無いのよ?」

俺は答える。

「母さん、俺にとってアイツはあの時の俺の唯一の友達でそれも生きてて苦しんでるんだから放ってはおけない。親父もそう思うだろ?」

親父は俺の顔を見て言った。

「まぁ、そいつが男ってもんだな。とりあえず母さんも父さんも一応は付いていくから安心しとけ。」

親父はそう誇らしげに言うが、母さんはそんな親父に少し不満があるようだった。

「福井さん…えっと、その…突入作戦は何時頃になるんですか?」

委員長は手を上げて福井のお父さんにそう尋ねた。

「既に準備は完了しており、今この場にいる人数分の水晶と安全装置の作成は完了してます。

まぁ、ただの気休めになるかも分かりませんが安全装置はあるに越した事はありません。

なので予定通り行けば明日の15時には突入作戦の決行が可能です。」

福井のお父さんは、事細やかにそう説明した。

「成程、てことは明日か賢人!」

福井が俺にそう話しかけてくる。

「まぁそうだな、今日のうちに色々俺の部屋で俺らだけの情報交換もしておいてもいいかもな…」

俺はそう言いながら、ふと優秘の方を見た。

「………」

優秘は、ただ無言で遠くを見るような目をしていた。

「優秘?大丈夫か?」

俺がそう尋ねると、優秘は答える。

「うん…でも気を付けてね賢人、それにみんなも…彼処はほんとに分からないから…」

優秘のその言葉は、周りの皆の心配から出たものだった。

「…お前、他人の事を心配出来るようになったのか…」

俺がそう言うと、優秘は不機嫌そうに言う。

「何言ってんの!私は結構気にしてるって!賢人こそちゃんと周りを気にしてよ!!」

割とコイツにしては最もな事を言っていると俺は感じた。

「まぁまぁ、材架はなんだかんだで一番誰かを頼りまくってるんだから優秘ちゃんぐらいに、

気にできるようになったほうが良いと思うぞ?」

福井は馬鹿にした様にそう言うが…お前にだけは絶対に言われたくないぞこの課題丸写し魔神め…

「翔太、それブーメランになってると思う」

優秘は馬鹿にしたような笑顔を福井へ向けてそう言う。

「ブーメラン?どういう意味だ?」

優秘が何処でそんな言葉を覚えたのかは分からないが、今の福井にはぴったりだと思った。

「では、突入作戦決行前の打ち合わせは以上で終了です。以上で解散となりますが教師、保護者の方は確認したいことなどがございますのでこのまま残ってください。」

福井のお父さんがそう指示したので、俺と優秘と石英さんと委員長と福井の五人は化学準備室を後にした。

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