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消えない想いの幻想  作者: マテリアル
10/19

ターニングポイント

あの日の私は知らなかった。

想いはこんなに強いのかと…

あの日の私は気付かなかった。

想いはあまりにも残酷だと…

だから今は、少しだけ眠ろう…

私の刻んだ想いのために…

天候はだんだん怪しくなり、曇が空を覆っていた。

俺は、委員長の言った『今の時代の人間じゃない』という言葉の意味を考えていた…

(分からない…じゃあ過去からタイムスリップでもしたというのか?)

「陽子は、タイムスリップでもしているって事か?」

高山先生は、冷静に委員長にそう尋ねた。

「…はい、お姉ちゃんは、8年後の未来から来たって言ってました。」

委員長はそう答えた。俺は、気になったことを質問してみた。

「あの、そうだとするならなぜ忘れたいなんて思ってたんですか?」

委員長は、少し暗い顔をして答えた。

「それは…もと居た時代でのお姉ちゃんの話がとても辛くて悲しくて…思い出すのがあと一年早ければ…或いは遅ければ…でも思い出したものは仕方ないんだって言って…」

そして辛そうな顔をして委員長は続けた。

「『お姉ちゃんは、元々いなかったと思って生きていきなさい…どちらにせよ貴方のお姉ちゃんはもう戻ってくることはないから。

今のお姉ちゃんは誰かを愛する意味も、価値ももう分からないのだから』

と言われ、お母さんもお父さんも急に消えて辛そうだったけど、

『私は居ませんので元々居なかった者としてください』

っていう書置きが残されてて…みんな忘れるように努力してて…私も忘れなきゃって…」

「じゃあ…このブレスレッドは…」

俺がそう言うと、委員長は答えた。

「これは…元々お姉ちゃんの忘れ物で…だからこれも忘れなきゃって…そう想って居たら、

いつの間にか全部忘れてて…ねぇ!お姉ちゃんは今何処に居るの!?」

それは俺も知りたい事だと、高山先生が言おうとした時、屋上の扉の方から女性が言った。

「なんで、……が此処に居るの?」

一同が一斉に扉の方へ向く。そこにはやつれた顔の目がうつろな髪の長い女性が立っていた。

「まさか…陽子か!?」

高山先生が驚いた顔でそう言うと、女性は答える。

「そう?…そうだったかもね…。なら、今は眠って。」

…ドン!

「…ぐふぁ!?」

女性がそう言うと、何時移動したのか…いや、初めから其処に居たのか…何時の間にか高山先生の目の前に立っていて溝内を的確に攻撃し、高山先生を瞬時に気絶させた。

「え…嘘…お姉…」

…ドン!

「かはっ!」

同じように、委員長も気絶させる。

「お前…一体…」

…ドン!

「…!?」

訳も分からず、俺の意識も遠ざかる…胸に走る痛みが消え始める頃、同時に意識も薄れていった…

最後に覚えていたのは、少しずつ降り出した雨の音だった…


石英麗美と福井修也は、電車からホームへ降りると、雨の中急ぎ足で走りながら駅を出る。

「まさかとは思うが石英、その汚れきったガラクタが何かの手掛かりだったって事か?」

修也がそう尋ねると、麗美は真剣な表情で答える。

「…いえ、分かりません。ですがもしこの仮説が正しいのなら、彼等が危ない!!」

麗美のそう言うと、修也は言う。

「だがなぁ、そんな簡単な理由で目の敵にするとは思えんぞ?」

すると…麗美は学校の目の前で突然立ち止まった。

「…こんなに!?これ程までに強い想いがあるんですか…いえ、そもそも『変質』している…」

目の前には雨に打たれながら学校を去ろうとするやつれた顔の目がうつろな髪の長い女性がいた。

「…」

女性は何も言わずただこちらを見て立ち止まっている…

「おい石英。そいつはなんだ?何が見えている?」

麗美は答える。

「…彼女の周りを虹色の想いが…そしてそれを濃縮して濃いものにする為に、彼女の虹色の想いを覆っている膜のような想いがます…二つの想いが重なり合うことは本来ありえない!…もしそれが起こっている場合は、例外事情:『変質』と言います…」

修也には勿論見えていないが、麗美の目にははっきりと、その女性の異質で変質した想いが見えていた。

「…貴方は、知っているのか?貴方は…誰だ…」

女性が口を開いてそう言った。麗美は警戒した状態で、女性に話しかける。

「私は石英麗美です。私は人の感情等から生まれる想いを専門に依頼を受けていた者です。訳あって今は活動はしていません。貴方の名前を教えてください。」

それを聞いた女性は、虚ろな顔で答える。

「私は…私は祥…いや…私は陽子…橋本…陽子だ…」

(―――!)

麗美はその時気づいた。この女性は、高山先生の好きだった女性だと。

「陽子さん、ですね。」

そう麗美が言うと、陽子と思しきは言った。

「なんで…貴方は…そこまで耐え切れるの?…そこまで隠して刻みつけ続けるの?…私にはできないな…隠すなんて…」

「――!石英!避けろ!!」

…ズドン!

陽子と思しき女性は一瞬で石英麗美を捉えた…が、福井修也の瞬時の指示で、急所は避けた。

「っぐ!…陽子さん!貴方は何をしようとしているんです!?」

麗美は膝をついて力一杯そう尋ねる。そんな麗美を見て陽子と思しき女性は言った。

「…貴方、表に出すとその色、もうそんなに黒かったんだ。私は…あれ、私はなんで…」

急に陽子と思しき女性の様子がおかしくなる…

「なんでなんでなんでなんで???…アアアアアアアアア!!!」

陽子と思しき女性の周りを虹色の光が包み込み、そして吸い込むように消えていった。

「なんだ今のは…石英、大丈夫か!?」

修也は驚きながらも麗美を心配して駆け寄る。

「はい…大丈夫です…それより今の『光』が見えたんですか?」

麗美は今、陽子と思しき女性が消えた瞬間に現れた想いが一般人の福井修也にも見えていたのかを尋ねていた。

「…あぁ、最後に一瞬だけ見えた…それにしてもあの女は一体どこへ消えたんだ?」

修也がそう尋ねると、麗美は言う。

「恐らく…自分の想いに飲み込まれたのだと思います。ですがはっきりには言えません…初めてのケースですし…『変質』なんて…」

すると、気掛かりだった事を思い出す。

「そうだ、材架さん…」

麗美は痛む体を無理やり動かすように立ち上がり、そして小走りで学校の中へ入っていく。

「やはり無茶するか……ん?なんだこれは?」

「…とりあえず持っておくか」

修也は地面に落ちていた虹色のビー玉のような物を拾うと、ポケットに入れ、麗美を追いかけた。


「……っは!?」

とても長く眠っていたようだ。俺は目を覚ました。

「ここは…」

咄嗟に辺りを見回す、そこには福井と少しがっちりした男性が座っていた。

「ここは学校の保健室だよ。最も、一番長く寝ていたのは君だったようだけどね。」

男性はそう答えた。

「あの、貴方は…」

俺がそう尋ねると、福井は答えた。

「このおっさん、俺の親父で福井修也。この前話した変な企業の社長なんだよ。」

福井のお父さんはそれを聞いて福井にげんこつした。

…ゴン!

「痛ってえ!!何しやがるんだよ親父!!」

福井がそう言うと、福井のお父さんは答える。

「何しやがるんだよ、じゃないだろ!株式会社エニシング、だ。なんだかんだで色んな事に手をつけてるが、とても大きな企業なんだぞ?」

そんな福井のお父さんの言葉も虚しく、福井はそっぽを向いてしまった。

「…あの、俺は一体どうしたんですか?」

俺がそう聞くと、福井のお父さんは答えた。

「君は橋本陽子さんに気絶させられたんだ。その時に付けられたものか分からないが『警告』を示すファイブロライトという宝石に酷似した想いが出ていたという訳だ。」

俺は福井修也さんについて聞いてみる。

「あの、福井さんは一体…なんでその事を知っているんですか?」

福井のお父さんは答える。

「何でも何も、俺が石英と請負契約で依頼を頼んでいるからだが?だから想いについてもある程度なら分かる。そして君に付いていた警告は石英が取り除いた。他の二人も同様にな。」

すると福井が言う。

「でもまさか石英さんがそんなこと出来るとはなぁ、親父も知ってんなら教えてくれたら良かったのに。」

福井のお父さんは答える。

「契約上仕事の事は例え家族でも機密を漏らしたりしちゃいけないんだ。そこはいつも話しただろ?」

福井は少し不満そうな顔をして言う。

「はいはい、分かってますってお父様。…で、これからどうするんだ?その委員長のお姉さん?まぁ委員長に姉貴が居た事自体びっくりだが親父の話じゃ突然消えちまったんだろ?これ手掛かり無くね?」

修也は窓の外を見ながら答える。

「確かに、手掛かりは無い…いきなり消えたと言うだけだし何よりも…」

その時俺は、嫌な予感がして隣のベッドを見た。

「解決の糸口を持つ、石英自身が倒れてしまったからな…」

俺の寝ていた隣のベッドでは、死んだように静かに眠り続ける石英さんが居た。

「福井さん、一応学校の内部を回りましたが陽子は居ませんでした。」

高山先生が委員長と、保健室のドアを開けてそう言った。

「…そうですか、ありがとうございます先生。それと橋本委員長、大丈夫ですか?」

福井のお父さんは高山先生に感謝を言うと、委員長にそう聞いた。

「はい、材架くんのお陰で私自身の感情とも折り合いが付きましたし、何よりお姉ちゃんが生きていたことは間違いなく朗報ですので。」

委員長は少し悲しそうな顔をしてそう答えた。

「…あの、石英さんは何で倒れてるんですか?」

俺がそう尋ねると、委員長が言う。

「…材架くん、あの時何が起こったのか、覚えてるかな?」

俺は、気絶した時の事を思い出して言う。

「確か俺は、変な女の人に、盛大に溝内を決められて…」

すると、高山先生が続けて言う。

「そうだ、お前も俺も委員長も皆気絶させられた。そしてその時精神的な毒の様な物を流し込まれたらしい。」

(そうだ、福井から聞いている。)

そう思い出し俺は、直感で発言する。

「『警告』を示すファイブロライト…確かさっき石英さんが取り除いたって…まさか!?」

石英さんは無茶な取り除き方をしたと、俺は思ったが、福井のお父さんは言った。

「…何時もの石英なら、あの程度の取り除き方をして倒れる事は無い。むしろピンピンしているさ。」

「そもそもファイブロライトの『警告』自体、発生する事がそんなに無い。

恨まれたり妬まれたりしないと警告自体出ないからな。

出た場合は身辺調査をして要因を探し出して解決すればいい。

だがどういう訳か急に情緒不安定になり、無意識化で警告を出す事がある。

だがこれは比較的解除は簡単。

ファイブロライトを対象者に触れさせ、実体化させて消せばいい。

消すときはスギライトを実体化した想いに触れさせて浄化するだけだ。」

福井のお父さんは、石英から聞いた事を俺にそう教える。

「ならなんで…こんな昏睡したような状態に?」

俺がそう聞くと、福井のお父さんはやるせない表情をして答えた。

「実はな、橋本陽子と遭遇した。その時に間一髪で急所は避けたが攻撃を受けてしまった…何らかの毒素に似たものを三人同様受けたのだろう…普通に考えれば『警告』なのだが起きる気配が全くないんだ…一日待ってみればと思ってもみたが嫌な予感もする…」

…ガラガラガラガラ!

少し乱暴に保健室のドアが開けられる音がする。

「もぉー賢人何してるの?もう8時だよ!!晩御飯は!?…あれ?麗美?」

優秘と俺の両親が入ってきた。

「え!?ちょっと待って!?何で!?」

すると、高山先生が答える。

「何でも何も、お前は学校の生徒ではあるが両親も居る、つまり保護者が居るんだ。そんなお前がいきなり学校内で気絶させられたとなれば一教師として報告の義務があるだろ?勿論同じ生徒の橋本さんにも連絡をしている。もうすぐ迎えに来るそうだ。石英は福井さんが保護者と言う形だそうだ。」

確かにそうだが…倒れてから起きて、先生が報告したと考えても1時間30分しかかかってない…しかも優秘も迎えに行ってる…?

「ものすごく心配したから特急で来たよ。でもまぁ…賢人、その様子なら大丈夫そうね。」

母さんが安心した顔でそう言う。すると親父も安心した顔で言う。

「いやぁ、先生から聞いて仕事途中で放り出して飛んできたんだが割とぴんぴんしてたか!流石父さんの息子だ!まぁ、明日大目玉だけどな!父さん困っちゃうよ。」

(親父には仕事を優先してもらいたかったかな…)

俺がそう思っていると、さっきまで笑顔だった優秘の顔が眠り続ける石英さんを見たまま冷めた表情になっていた。

「麗美、なんでこんなに真っ黒なの?真ん中辺りがスギライトっぽいけど後はドロドロしてて…分かんない…」

!?

優秘のその一言で、周りの空気が凍り付いた。

「…確か君が、石英の報告にあった優秘ちゃんか?」

福井のお父さんが優秘にそう尋ねる。

「うん、そうだよ。材架優秘、今は小学3年生なの。それより麗美、何かあったの?こんな変な色が出る筈ないし」

優秘がそう答えると、福井のお父さんは真剣な表情で質問する。

「優秘ちゃん、その色を君が消す事は出来るかな?」

すると、優秘は俺の方を向いて言う。

「賢人、このおじさん誰?」

俺は端的に答える。

「そのおじさんは石英さんの友人だ。優秘、悪いがそのおじさんの質問に答えて欲しい。」

優秘は福井のお父さんをじっと見て答えた。

「分かった。えっとね、多分麗美はスギライトで前々から『何かしてた』んだと思う。理由は分かんないけど…でも黒いドロドロは分かんない…これはそのまま消した方が良いかも?分かんないし」

すると、福井のお父さんは腕を組んで考えながら言う。

「確か…石英が3年前の請負契約を結んだ暫くしてから言っていたが、想いを色として認識するという能力は石英の家の書物だと『10歳までしか発揮されない』らしい…その後も使い続けるなら『洗礼の義』というものを行うとかなんとかでそれにスギライトが必要だったとか聞いたな…」

すると、優秘は嬉しそうに言いながら持ってきていたカバンを漁る。

「うん、そうだよー、麗美の持ってた本にもそんな感じの事が書いてある!えっと、確か…あっこれ!」

それは少し古びた30年くらい前に書かれたとみられるような本だった。

「なんかこれももっと昔のを翻訳したりしてるって麗美が言ってた!でねでね、確かこの辺のページ!賢人も見て!」

俺は言われた通りに優秘の開いたページを確認した。

「えっと…洗礼の義には…スギライトというケイ酸塩鉱物が必要で…できるだけ粉末状に砕いておく…」

(宝石を…砕く?)

「…洗礼の義は賢浄者と呼ばれる人の想いを、色として認識する事が出来る者の、10歳の誕生日を迎える前日に、粉末状のスギライトを全身に振り掛け、その後誕生日が過ぎるまで粉末が出来るだけ飛散しないようにする。」

(つまり…体に塩をかけるみたいな感じか?)

「成功すれば能力は使えるままでスギライトの恩恵、癒しの効能を一生得る事が出来る…!?」

癒しの効果を一生とはどういう事か?その答えは続けて読めば直ぐに分かった。

「得られる効能の癒やしとは…賢浄者が主に想いの関わった事象に関わる際に精神的に病む事等があり、それらを『癒して軽減』する。その他自然治癒が通常の約1.2倍になったりするが、

『スギライトの持つ効能を別の使い方をしている時』は使い終わるまでこの

『癒しの効能は一時的に解除』される…」

俺は記憶を思い返す。


『そうだ、お前も俺も委員長も皆気絶させられた。そしてその時精神的な毒の様な物を流し込まれたらしい。』


『何でも何も、俺が石英と請負契約で依頼を頼んでいるからだが?だから想いについてもある程度なら分かる。そして君に付いていた警告は石英が取り除いた。他の二人も同様にな。』


『だがどういう訳か急に情緒不安定になり、無意識化で警告を出す事がある。

だがこれは比較的解除は簡単。

ファイブロライトを対象者に触れさせ、実体化させて消せばいい。

消すときはスギライトを実体化した想いに触れさせて浄化するだけだ。』


『実はな、橋本陽子と遭遇した。その時に間一髪で急所は避けたが攻撃を受けてしまった…何らかの毒素に似たものを三人同様受けたのだろう…』


俺は、思い返した会話と状況を繋げて考えを言う。

「…多分なんですけど石英さんが倒れたのは、『癒しを自分に使えなかったから』だと思います…」

夜の9時に降り続ける雨は、更に激しさを増していた。

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