第60話 目覚めたら龍がいた。
目覚めるとそこはいつも通り知らない天井だった。
どこかの宿かなんかのベッドに寝ているようだ。そばにはノアが突っ伏して寝ている。
俺は少し体を起こし、サラリと髪を撫でる。
「・・・心配かけたな。」
ノアは起きる様子は無かった。
それはそうとして、めちゃくちゃ気になる事がある。
左にはノアさんがいる。そして右には龍神の姿がある。どうやってここに来たんだよ。
「やや!ご主人起きましたか。では、こちらをどうぞ。」
そう言ってラグはお茶を差し出してきた。
うん、美味い。
「このお茶は龍人達が好んで飲むお茶です。疲労回復、血行を良くしてくれる効果があります!」
「へぇー、そうなんだ・・・って、そうじゃない。お前はどうやってここに来たんだよ。」
「それはヴアラス様がここに送ってくれました。」
あー、なるほどね、あの神様がやってくれたんだね。
「あっ!そうでした。ヴアラス様からの贈り物があります!」
そう言ってラグはポケットから小さな赤い鍵を取り出した。
・・・鍵?これがお礼なのか?何に使うかもさっぱり分からん。
「そしてご主人頼みがあります!私と契約してください!」
唐突だな。契約ね、魔法少女になれるのかね〜
とりあえず了承しておこう。
「どうやってやるんだ?その、契約ってやつは。」
「えっとですね、これ使ってもいいですか?契約にはアイテムがいるんですよ。あっ!安心してください、無くなったりはしませんので。」
そう言ってラグは女体化マフラーを手に取った。
それかー、もっといいアイテムは無かったのかね。
「・・・ああ、いいぞ。」
「では、血を一滴ここに垂らしてください。」
俺はポタリと血をマフラーに垂らす。ラグも垂らした。そしてラグはマフラーに向かって何かを書き始めた。
なんて書いてあるかはよく分からない。
ラグが書き終えるとマフラーには龍の紋章が浮かんでいてた。
更にマフラーと同じ紋章がラグの手にも現れ、マフラーの中に消えていった。
「・・・おうっ!?消えた?」
すると今度はマフラーからラグの姿が現れた。
「ふぅ、これで契約は完了しました。私はこのマフラーが無ければここに来れませんので。無くさないで下さいね。」
そう言ってラグはマフラーを手渡してくる。
マフラーが媒介になっているのか、なら、絶対に無くせないな。
「あっ、あとこのマフラーには『龍神の加護』がつきましたので・・・」
と、ラグがここまで説明をしていたらノアが起きようとしていた。
「おっと、とりあえず私は戻りますね。ではご主人、これからよろしくお願いします!!」
「・・・あっ、おい!」
ラグの姿が消えていった。
そして、ノアが目を擦り顔を上げていた。
「・・・んっ、ふわぁ〜あ、リュウ〜おはよぉ」
「ああ、おはよう。」
ノアは少し寝ぼけているようだ。少しぼーとしていてまだ眠そうである。
「・・・って!リュウ!やっと起きた!」
ばっと勢いよく立ち上がり、ノアはいつも通りの元気に戻る。
少しの間、この元気な感じでは無かったので安心する。
まぁ、俺のせいなんだけどね。
やっぱ、これでこそノアさんだな。
「よぅ。」
「何が、よぅ、だよ!もっかい言うけどさ、ホントに心配したんだからね!なんの相談もなしにさ、1人で残ってさ、ボクを逃がしてくれたのはありがたいけど、ボクはリュウに危ない目にあって欲しくないんだよ!」
ノアがプンスカプンスカと怒っている。
しかし、嬉しいことを言ってくれるねー、
危険な目にあって欲しくないって言ってもらえるのはホント申し訳ないなー、
「反省してるよ。すまなかったな。」
「ホントかなー、また何かやらかしそうな気がするんだけどなー、」
疑い深いなノアさん。
まぁ、それも仕方ない気がする。だって色々やらかしてるので。
「だって、リュウって絶対巻き込まれ体質だもん。まっ、ボクも大概だけどさ、」
うん、そうだよな。よく考えてみればさ、ノアさんの方が巻き込まれてね?
はじめに剣になるし、それにラースの眷属に襲われたりもしたな。
俺が女体化する以外は一緒に厄介事に巻き込まれてるので同罪だな。
「ははっ、そうだな。」
コンコンとドアがノックされ、俺が返事をする前にドアが開かれた。
「おーす、リュウトー、起きてるか?」
入ってきたのは師匠達『風車』それとシーンさんだった。
「よし、起きてるみたいだな。体調はどうだ?」
師匠は聞いてきた。なので少し体の動き等を確認してみる。
グーパーと手を握って離したり、ベッドから立ち上がり屈伸をしてみたり、そして風が使えるかどうかを確認してみた。
「・・・あれっ?」
「・・・どうかしたか?」
おかしい、風が集まらない。全く集まらないという訳ではないが集まりがいつもよりも格段に悪い。
「風が、使えません。」
「あー、そうか、それは多分加護の力を使いすぎたんだな。しばらくすれば治ると思うからよ安心しろよ。」
・・・使いすぎか、まぁ納得だ。
そりゃあ限界を超えた力を使って戦ったんだし反動はあるだろうな。
しかし、少しばかり不便になるなー。
しばらくは冒険者としての活動は中止かな。
「・・・おい、それはどのくらいで治るんだ?」
シーンさんが師匠にぶっきらぼうに尋ねる。
「俺には何とも言えませんな。まぁ、大体1週間から2週間くらいだと思いますぜ。」
「ふむ、そうか・・・」
師匠が答えたあとシーンさんは少し考えていた。
なんでそんなことを聞いたんですかねー?
俺にはもうさっぱりだよ。
ただ、これだけは言える。めんどくさそうだなー。
「よし、ならば、ルル貴様にカザカミリュウト護衛の任務を与える。時間は加護の力がある程度戻るまで、だ。戻ったら報告をしろ。」
「おお!姫サマそれってもしかして・・・?」
「まぁ、休暇のようなものだ。しっかりと休め」
「ひやっほーい!さすがは姫サマだぜ!」
なんだか盛り上がってるんだけど、よく分からない。
特に俺に護衛がつくのがよく分からない。
そしてどんどんめんどくさそうな方向に行ってることだけは分かる。
ただ、師匠達としばらく過ごせるのは少しばかり嬉しいかな。
「よし、しっかりと全うしてくれよ。必ず戻ったらすぐ連絡をしろよ。」
「へい、わかりましたよ。」
師匠は少し弾んた声で返事をした。休暇と弟子と過ごせるのが嬉しいのだろう。
「あと、カザカミリュウト。よくぞラースをあそこまで追いつめてくれた。この国を代表し改めて礼を言う。ありがとう。」
シーンさんは深く俺に頭を下げた。
「・・・えっと、その、頭を上げてください。俺は自分の大切なものを守るために戦っただけです。えっと・・・それに俺一人ではラースは倒せませんでした。・・・生意気かもしれませんが、その、こちらからもありがとうございました。」
しどろもどろになりながらも噛み噛みになりながらも俺もシーンさんに頭を下げた。
「ふふ、構わんよ。国から報酬を出す。また後日受け取ってくれ。」
シーンさんは微笑んで答えてくれた。
報酬だーい!金には困ってはいないけど、大切なガントレットが壊れたからな。その資金にしよう。
ヘルダに頼めるかなー。
「では、私はこれで失礼するよ。一応この国の姫だからね、色々やらねばならないことがある。」
そう言ってシーンさんは右手を上げ、この部屋を出ていった。
残されたのは俺とノアと師匠達だ。
「おし、とりあえずみんなに会いに行くか。リュウト動けるか?」
「ええ、大丈夫ですよ。」
みんなと言うのはラースと戦ったみんなだろうな。ケコにギルド達、それとまぁいるかは分からないが獣人国の面々だろうな。
それならば早く会いに言った方がいいな。
助けをくれた感謝をしたい。
「では、行きましょうか・・・っと、とと。」
「わっ、リュウ、大丈夫?」
少し動いたらふらりとよろけた。それをノアが支えてくれる。
おっと、やっぱり疲れが溜まってんのかな。
さっき屈伸をした時は大丈夫だったのになー。
「・・・すまんノアさん。あざす。」
「どういたしましてだね。しばらく休んどく?みんなに会いに行くならボクが支えるよ?」
「会いに行こう。スマンが支えてくれるとありがたい。」
「OK!ボクにまっかせなさい!」
俺はノアに支えられ、部屋を出て階段を降りていく。
1階にある食事スペースにはケコと勇者一行とリンコの姿があった。
みんなでテーブルに座り、話をしている。
獣王がいないな。
リンコがここにいるってことは帰ってはないな。多分城の方にでも行ってるんだろう。
帰る前に挨拶が出来たらいいな。
「あっ、リュウさん。起きられましたか。えっと、お身体の方は大丈夫なんですか?」
「あー、まぁまぁだな。少し辛い程度だ。こうやって支えてもらえれば大丈夫。」
「そうですか。良かったです。」
俺がテーブルに近づくとケコが1番に気づき、俺に声をかけてきた。
ケコにも迷惑をかけたなー、
そこからはみんなと少し話をした。
勇者一行やケコに謝り、リンコには感謝をした。ついでに獣王に会えるようにお願いをした。
あとは師匠達と少し。ここ数ヶ月の冒険の話をした。
あとは師匠達のことについてはまた後日教えてもらえるようだ。
本当に今回は疲れた。1人で背負いすぎるのもダメたって事だな。
あー、そういえば、ラグのことを話してない。忘れてた。
今日はもういいか、明日にしよう。疲れたしな。
明日は休養だな。ゆっくりと加護を治していこう。
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