第59話 白い空間
ラースが光の粒子となり消えていくと周りにいた眷属達も消滅した。
「さっすがは姫サマだ。きっちり仕留めてくれた。」
ルルがふらふらと姫に近づいて言った。
「結構ギリギリだったぞ。しかしよくやってくれた。おかげで倒せた。」
「当然ですよ。姫サマに頼まれたんですから。」
「獣王殿も助かりました。」
「気にするな。俺も奴と戦えた。それにまだまだだということを思い知らされた。もっと鍛錬を積まねばなるまい。」
しばらく3人は話をし、そして3人は俺のところにきた。
「よう、リュウト久しぶりだな。」
「ええ、師匠お久しぶりです。」
「お前、強くなったな。俺は嬉しいぜ。」
「師匠に追いつきたくて頑張りました。今ではSSランク冒険者ですよ。」
「ああ、知ってる。俺もお前の昇格を見てたからな。」
なんと!師匠はあの昇格式を見ていたのか。探せば見つけれたかなー?
しかしとても嬉しいな。努力を認められ褒められるのって。
「そう・・・ですか。」
なんだか眠くなってきた。さっきまでは疲れとかは無かったのになんだかどっと疲れがきた。
「おお、疲れてんな。今はゆっくり休め。後でゆっくり話そうぜ。」
「・・・ええ、そうします。・・・お休みなさい。」
俺はここで深い眠りに落ちた。
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「ふむ、生き残ったか・・・。」
ここはとある高台。そこからリュウト達を見ている2つの影が。
1人は女性、もう1人は男性だ。深くフードを被り周りからは顔が見えないようになっている。
「しかもアイツまで開放されてしまった。さて、どうしたものか。」
「・・・直接殺したらどうだ?」
女性が悩んでいると男性が答える。
「ふむ、それも1つの手だがそれでは面白くない。それに今の私たちでは覚醒したあの子には勝てないよ。」
「・・・そんなに強くなってるのか?」
「ああ、なっているとも。君も見ただろう。龍人となったラースを圧倒していた。そんな彼に私は勝てるとは思わない。」
女性は少し笑いながら答える。男性はチッっと舌打ちをし、不機嫌になる。
「そんなに怒るなよ。君も強くなれるさ。今はまだ勝てないだけで充分強くなれるさ。」
「・・・ハッ!うるせぇよ。」
「しかし、本当にどうしようか。彼はほかっておくとどんどん強くなる。それにやつらが復活したりすれば厄介どころじゃない。」
ふむ、と女性は悩む。
「・・・大罪の復活はどうだ?」
「・・・今復活させたら我々の手には負えないよ。特に『暴食』相手じゃ勝ち目は無い。喰われて終いだよ。」
「そいつらの対応をあいつらにやらせればいいじゃないか。いい感じに両方消耗してくれるんじゃねえか?」
「・・・ふむ、なかなかいい提案だね。しかし上手くいくとも思えないが、それならヤツらが復活したところで対応も出来るか・・・」
ニヤリと女性は笑う。
「よし、ならばそれでいこうか。予定よりも早いが『大罪』を復活させる。」
そして男性と女性はその場から姿を消した。
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俺が気がついた時はそこはいつもの白い空間だった。
しかしいつもと違う点があった。いつもならそこには風神さんだけなのに今は白い髪の少女となんか白く光ってる男がいた。
しかもなんかちゃぶ台を囲んで茶まで飲んでるし、ホント何があったんだよ。
「おっ、来たな。我たちは貴殿を待っていた。とりあえずこっちに来て座れ。」
風神さんが話しかけてくる。
俺は風神さんの言う通り、とりあえずちゃぶ台の前に行き、座った。
俺が座ると白髪の少女がお茶を入れてくれた。
軽く会釈をし、茶をすする。
うん、美味い。
「やぁ、カザカミリュウト君。久しぶりだね。いや、会うのは初めてだからはじめましてだね。」
俺が茶を飲んでいる時に白い男が話しかけてきた。
久しぶり?誰だよこいつ。俺、こんな奴知らない。
「ははっ、そんな顔をしないでよ。僕はヴアラス。神様だよ。」
ヴアラス、ヴアラスどっかで聞いたような、見たような・・・あっ!手紙のやつか。
「・・・えっと、あれか、お前は、自称神ってやつか。」
「自称神って酷いなー。僕は正真正銘神様だよー。」
「・・・まぁ、いいか。で、その神様?がなんでここに?ここって俺の精神世界みたいなところじゃねぇのかよ。」
「ひとつ訂正だ。今回は君だけの精神世界ではないよ。ここはね、《神域》だ。神様ならば誰でも来れる。」
は?どういう事だ?仮にそうだとしたら俺はなんでそんなところに来れてんだよ。
しかも今回は、ってことは俺が風神さんと会っていた場所とここは違うということ。
やべぇ、なんかよく分からなくなってきた。
「ははっ、よく分からないって顔をしてるね。簡単な説明をしてあげるよ。」
そう言うと神様はパチンと指を弾いた。するとどこからともなくホワイトボードとペンが現れた。
そしていつの間にか神様はメガネをかけていた。
・・・なんか何でもアリだな。よく見ると俺の後にパイプ椅子が出てきてるし。
まぁ、いいか、とりあえず座ろ。
俺が座ったところで神様はペンの蓋を開けた。
「さぁ、授業を始めようか。じゃ、まずは君が初めて風神君にあった空間の説明から。まっ、これは簡単だね。普通に君の精神世界だ。君の精神に風神君が干渉して風神君と会えたわけだ。」
神様はホワイトボードにイラスト付きで書いていく。俺の精神と書かれた円にめっちゃ美味いデフォルメされた風神さんが書かれた。
「んで、次に今は僕達がいる空間についてだね。ここはさっきも言った通り《神域》だ。文字通り神の領域。まぁ、言ってみれば僕の部屋だ。僕と僕が許可した者でないとここには来れない。」
なるほど、じゃあ俺はここの神様に招待された訳だ。
しかしあれだな。何でもアリの理由が分かった気がする。
「ただね、たとえ僕が招待してもここには普通の人間は来れないんだよ。」
は?どういう事だ。そうなると俺は普通の人間では無くなる。
俺は一体いつ人間をやめたんだ?
「ちゃんと疑問に思ってるねー。僕が説明してあげよう!君は一時的に風神になったんだよ。」
余計に分からなくなってきた。
いやもう、訳が分からん。一時的な風神とか分かるわけがないだろうが!
「いつ風神になったかと言うとね、君が龍人ラースと戦っている時さ。君は全力を出しても勝てなかった。でもそんな時に君は限界を超えた。」
ああ、あの時か。
負けたくないと思って、負けたらダメだと思って、でも今の力じゃどうしようもないと思った。
だからこそ限界を超えるしかないと思った。己の命を賭けてでもアイツを倒そうとした。
まっ、結果はダメだったけどな。
師匠達が来なきゃ俺は死んでたしな。
「ホントに驚いたよ。まさかあんな方法で第2段階に行くとはね。」
・・・第2段階?あんな方法?なんか更に訳分からんワードが出てきおった。
「いいかい、加護はね、進化するんだよ。正確には神化するだ。全力で努力を重ね、加護の力を使いこなせるようになり、神の力に耐えられる体を作り上げらと必然的に第2段階へと移行する。その努力は死に物狂いでやっても届かない。そりゃあ神の力だからね、簡単に手に入れられても困るよ。
だけど君はそんな努力を嘲笑うかのように強い意志だけでその扉をこじ開けた。開けてしまったんだよ。全く困ったものだよね。まだ体が出来ていないのにさ。」
クククと神様は楽しそうに笑う。そして説明を続けた。
「当然人が耐えきれるものではないよ。普通なら一瞬でも神にすらなれずに肉体の崩壊が始まる。でも君はなって見せた。そして使って見せた。完全に使いこなせてはいなかったけど、それでも君は神になったんだよ。」
とても神様が興奮してらっしゃる。なんか怖い。
凄い、とか言われても確か力を貸したの風神さんじゃね。ほら、《貴殿の願いを聞き届けた。》とか言ってたよね。
あれって気のせいだったの、ねぇ?
「うーん、なんか微妙に分からないって顔をしてるね。なら、もう少し説明をしようか。」
神様がメガネをカチャリと動かす。
「『風神の加護』ってのはね、知っての通り風神君の力を行使する加護だ。ただ、それは人間に合わせた力。大分セーブされているんだ。だけどね第2段階ではそのセーブが無くなる。完全なる風神君の力って訳さ。無理やり扉をこじ開けるって言ったけどそれは風神君が君を認めたって意味なんだ。」
なるほどな、存分に力をふるえと言ったのはそういう意味なのか。
簡単に言うと、やべぇ力と言うわけだ。
「よし、その顔を見ると分かったみたいだね。まぁ、まとめると君は凄いからここに来る権利を手に入れ、僕が君に用があるから呼ばれたわけさ。」
そりゃあそうだ、用がなけりゃ呼ばれないだろうな。
「・・・その、用ってのは何なんだ?」
「簡単な頼み事さ。まっ、その為にはこの子を紹介しなきゃ何だけどね。」
そう言って神様は白髪の少女を俺の前に連れてきた。
よく見たらこの子角があるな。
「この子はね、龍神さ。」
「どうも!こんにちは、私は龍神ドラグレイド・ゴッテスと申すのです。」
龍神ときたか、何かしらの神とは思ってたけど、龍神とは思わなかったな。
「ラグとお呼びください、ご主人!」
・・・ちょっと待て、なんだご主人ってのは。
いったい、いつ、俺が龍神のご主人になったんだよ!
「こら、ラグ。それだけじゃ分からないよ。ちゃんと説明をしなきゃ。」
「はっ!そうでした。私、悪龍に力を食われてしまっていたのです。なので悪龍を倒して私を救ってくれたご主人の力になりたいのです!私はご主人に仕えるのです。」
「だ、そうだよ。ご主人様。補足すると彼女は龍神になったばかりなんだ。ラースは昔に龍神の力も取り込んでしまってね、それを君たちが退治してその力が解放され彼女が新たな龍神として誕生したんだよ。」
神様がニヤニヤしながら説明をする。やべぇ、殴りてぇ。
まぁ、大まかには分かった。でも、俺さ、ラース倒せてないんだよね。
倒したのシーンさん。俺、違う。
「おやおや、その顔はラースを倒したのは俺じゃないって顔をしているねぇー。」
いや、なんでわかんだよ!
さっきから心を読んでない?
「それはですね、私がご主人を気に入ったからです!それにご主人はあの中で1番強かったのです!」
メインが気に入ったからって、んで、1番強かったか・・・
そうか、俺は師匠もシーンさんも獣王も含めて1番強かったのか、そいつは嬉しいね〜。
「・・・よし、分かった。ならよろしくな、ええと、ラグ。」
「はい!よろしくです!」
ラグが元気よく返事をする。二パッととてもいい笑顔と共に。
「よしよし、僕の目的の1つが完了した。なら、2つ目の願いさ。よっと。」
そう言うと神様は右手に光り輝く剣を呼び出した。
「これは神器だ。神器『エクスカリバー』だ。これをギルド君に渡してほしい。僕は少し忙しくてね、直接渡せないんだよ。」
俺はその神器を受け取る。するとそれはすーとどこかに消えていった。手にはキラキラと光る丸い玉が残った。
「あれ?剣がきえた。」
「ああ、それは君が持ち主じゃないからだよ。神器は神器に選ばれし者しか使えないからね。その玉を渡してギルド君が『神器召喚』って唱えれば神器は顕現するからね。」
そりゃあ凄い。正しく神の武器だな。
俺も神器欲しいなー!
「よし、今回はここまでだね。君はもうすぐ目覚めるだろう。」
そうか、時間切れか。てか、ラグはどうすんだろ、俺に仕えるって言ってたけど、どうやってあっちの世界にいくんだろうか?
まぁいっか何とかなってるだろう。
「そうだ、今回の僕のお願いを聞いてくれたお礼に少し凄いことをしようかな。何をしたかは秘密さ。楽しみにしといてね。それじゃあ!」
俺の体が透け始め、消えてった。
面白かったらブクマなんかを、よろしくです。




