第57話 回る風車
お久しぶりです。
なかなか忙しかったので更新が遅くなってしまいました。
「リュウーーーー!!」
泣きながら勢いよくノアが走ってきて、俺に抱きつく。
全身に痛みが走るがノアの体は柔らかく、いい匂いがする。うむ、役得だな。
「よお、ノアさん。痛てぇよ。」
「何がよう、だよ!えっぐ・・・ボクが、どれだけ心配したことか。1人で、ぐす・・・残って。でも、生きてて良かった」
ノアはわんわんと涙を流す。
いやー、済まなかったね、随分と心配かけたことで。
「ははっ、リュウト、女の子を泣かせるもんじゃないぜ?カミロウ治してやれ。」
「はい、分かりました。リュウト君、久しぶりですね。今から治療します。」
「ありがとうございます。カミロウさん。」
カミロウさんはいえいえと、言い俺に治癒魔法をかける。
じわりとあったかい光に包まれ、痛みが引いていく。
「かなりダメージを負ってますからしばらくは安静ですね。寝ていてください。」
「お前があいつの弟子か?」
俺がそうカミロウさんに言われた直後に1人の鎧を纏い、右手に槍、左手に旗を持った女性が師匠を指を指しながら言ってきた。
「はい、そうですが・・・」
「そうか、よくぞここまで耐えてくれた。感謝する。」
とだけ言うと女性は歩いていき、師匠の隣にたった。
「お前がダークドラゴンなのか?」
「いかにも我は闇竜王ダークドラゴン、またの名を龍人 ラース。貴様らはカザカミリュウトの仲間か?」
「そうだ。私はシーン=アル=グレイス。グレイス王国第一皇女だ。貴様を屠りにきた。」
シーンはビシッと槍をラースに向けて宣言をした。
そしてルルを小突いて、今度はお前の番だとボソリと呟いた。
はぁ、とため息をつき、怠そうにルルは答える。
「俺はルルガ=ヴァルトルネガ=アルマだ。一応この姫サマの護衛ですかね。」
えっ?師匠ってそんな名前だったの。そういや冒険者登録って音声認識だったよな、名前変えるのもアリなのか。
「・・・アルマ?貴様はあの忌々しきアルマの者か!」
ラースが怒りを露わにして叫んでいる。
何か相当根深い因縁があるようだ。
「あのは、わからんが、多分お前とは因縁があるな。」
「そうか、そうか、貴様だけは絶対にゆるさんぞ。だが、他の奴らが邪魔だな。ならば。」
と、ラースは残った1枚の羽を引きちぎり、地面に投げた。
するとそこから巨大な魔法陣が発生し、複数のドラゴンが出現する。
赤い竜と青い竜、それに闇竜王の眷属が数体現れた。
「貴様以外はこいつらに相手をしてもらうことにしようか。今の我ではこの人数はちときついからな。」
各ドラゴンたちは皆に襲いかかってくる。
赤い竜と対峙するはカタエさんとブレイドさん。青い竜と対峙するはイズさんとドゴランさん。
さすがはSSランク冒険者の人達だ。自分たちがそうなるように立ち回った。
そして獣王とシーンさんは1人で闇竜王の眷属と、獣王のお付の3人は3人で眷属と。
勇者はパーティで戦い、リンコさんはケコと一緒に対峙した。
そして師匠は1人でラースの前に立つ。
「あらら、分断されちゃったか。」
「我の体の一部を生贄として召喚した。さぁ、一体一の勝負だな。貴様を倒させてもらおうか!」
師匠はニヤニヤとしながらカチャリと剣を構えた。
「いやー、そう簡単にはいかないっぽいぜ?あいつらを舐めるなよ?」
「・・・どういうことだ?」
すると1匹の眷属が空高く舞った。また、ある1匹はバラバラに刻まれていた。
「ふん、この程度私の敵ではないな。」
「ガハハ!ぬるいな、もっと強いのを用意せい。」
コツコツと二人は歩いてくる。
1人は大きな槍と旗を持っている。
1人は大きな鬣に、爪の武器を持っている。
「なっ?言っただろ。舐めるなってよ。」
「おい、貴様だけ美味しいところを持っていこうとするな。私もこいつと戦いたい。」
「そうだぞ。俺もダークドラゴンには興味があったんだ。」
「こいつが勝手にやったんですって。俺は関係ないですよ。」
ラースと向き合うは3人。1人は我が師匠ルルガ、そしてもう1人は姫シーン、最後の1人は獣王。
これは最強の組み合わせであろう。見たところ姫は相当に強い。
そしてこれは俺の予想にすぎないが姫はあれだろう。
と、こんなことを考えていると各地で戦闘が始まる。
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「グオォォォォォオ!!」
目の前の赤竜が吠える。
「ダークドラゴンの方はルルに任せて大丈夫だろうな。」
「そうですね。姫様もいますし、とりあえず私たちは目の前の敵を片付けましょうか。」
ブレイドとカタエはそれぞれ武器を構える。
二人は勢いよく地面を蹴り、赤竜に切りかかる。
高速の剣技が赤竜に襲いかかる。だが、その鱗は硬く強いダメージにはなってない。
「・・・これは、硬いですね。どうやら普通の赤竜とは少し違うようですね。」
「そうだな、おそらく龍王クラスだな。少しばかり骨がおれる。」
竜には種類がある。一般的な竜はSランクに該当する魔物である。種類は多く山奥や谷のそこに住んでいるとされている。
そしてそこから希に龍王となるのもがでる。ランクはSS上位。
見た目は普通の竜なのだが、竜よりも強く、硬い。そして、龍王は自分が一定以上ダメージを受け、命の危機に晒された時に進化をするという所が竜と龍王の違いである。
「龍王ですか、なら少し本気を出すとしましょうか。」
そう言うとカタエは、腰からもう一本の剣を抜いた。
「ブレイドさん、サポート頼みます。」
「任された!」
二人は再び赤竜へと切りかかる。カタエの2本の剣から放たれる剣撃は赤竜の体に次々に傷をつけていく。
「ギャオォォォォォオオオ!!」
赤竜は叫び声を上げ、カタエに反撃をしようとするが全てブレイドによって弾かれる。
カタエが攻撃に専念をし、ブレイドが敵からの攻撃を防ぐ。
そして、赤竜は飛び上がり、ひときわ大きな叫び声を上げ、ピシピシと鱗がひび割れていく。
竜は進化し、龍王へと成り上がる。
鱗がひび割れ、出てきた姿は全身炎に包まれており、先程よりも大きな龍王の姿だった。
「炎龍王ですか、少し斬りにくいですね・・・、ブレイドさん、溜めます。」
「時は?」
「フルで。」
「うむ、了解した。では、その時間私が耐え凌ごう。」
二人は少し話をし、カタエは後ろへと下がり気をねる。ブレイドは炎龍王へと剣を向ける。
「お前の相手は私がしよう。少しばかり付き合って貰うぞ。」
獣人が持つ高い身体能力で炎龍王と1人で戦っている。相手の攻撃を避け、受け、凌いでいく。それにカタエの方に攻撃がいかないようにしているのは流石と言うべきだろう。
そして時は満ちる。時間にして3分間。カタエの全力のチャージが完了した。
「時間だ!後は頼むぞ!」
ブレイドは叫び、カタエに道を開けた。
「はい、了解です。リュウトも頑張ったんです、私も少し頑張りましょうか。では、私の奥義をおみせしましょうか。」
カタエの体にはオレンジ色のオーラがまとわりついている。
カタエは剣を前に構える。
そして、カタエの姿がぶれた。
「奥義 古流・原初天下無双」
一瞬で炎龍王の体は刻まれた。
超高速の剣技。剣技ができた原初の技。
集中と共に身体能力を上げ、その技の再現をして見せた。
剣術においてカタエの右に出るものはいない。
「ふう、疲れました。」
「ああ、大技を使ったからな。」
炎龍王VSカタエ&ブレイド、
カタエ&ブレイドの圧勝で終わった。
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ところどころが凍っている。ここは青竜とドゴランとイズが戦っている場面である。
「んー、もう、寒いよ♪こんなに凍らせちゃってさ♪」
「そうじゃの、つべたいわい。」
青竜は氷ブレスを吐いてドゴランとイズに襲いかかっている
だが、効いてる様子はなく二人は余裕綽々である。
「とりあえず、炎よ我に『ファイヤー』♪」
イズの放った炎の呪文は敵にあたるもそこまでのダメージにはなっていない。
「んー、効っかないなー♪じゃっ、次だね♪」
そしてイズは次の詠唱をはじめる。
その間に青竜は攻撃を仕掛けてくるがそれは全てドゴランによって防がれた。
「ふん、まだまだじゃのぅ。その程度ではワシにはダメージは与えられんよ。」
全ての攻撃を完璧に受けけるドゴラン。そして、詠唱が完了したイズからの炎の呪文により、青竜の体力は削られていく。
「ギャオォォォォォオオオ!」
この叫び声と共に空に舞い上がり、龍王へと進化した。
全身から夥しいほどの冷気を放つ。
「わぁー、変わったね♪氷龍王だね♪」
「あれはちと魔法には強いからのぅ。どうする?」
「んー、じゃあ♪リュウト君も頑張ったみたいだし、私もアレいっちゃおうかなー♪♪」
「なら、ほれ、ワシが時間を稼ぐからのぅ。後は任せたぞ。」
「りょーかい♪」
ドゴランがイズに渡したのは瓶の酒である。それもとびきりアルコールの高いものだ。
イズは蓋を開け一気に飲み出した。酒はすごい速さで減っていきあっという間にカラになった。
「ぷはぁー、ふぅー、気分がいいぜ♪」
イズの性格がガラリと変わった。
カラになった瓶を捨て、プラプラと手を揺らしている。
「さて、とっとと終わらすか♪」
イズは『酒呑の加護』を持っている。
『酒呑の加護』とは酒を飲むことにより自分の能力を上げるというものである。
だが、しかし、イズの場合は少し違った。普通ならば全体的に能力が上がるはずなのにイズの場合は魔力がとてつもなく上がるものだった。
ほかの能力も少しは上がるが。魔力程ではない。そしてこの桁違いになった魔力から放たれる魔法は超高火力。
「えーと、詠唱はどうだったか、まぁいっか♪適当に組むか♪」
さらにイズの凄いところは魔法の詠唱を勝手に変えられることである。無詠唱は出来ないが短文詠唱にしたり、自分のオリジナルでほかの人と同じ魔法が使えるようになる。
そして自分のオリジナルの詠唱は消費魔力が小さかったり、威力が高かったり、飛距離が長かったりと色々効果がある。
本来ならばオリジナル詠唱では魔法は発動できないのだが、イズにはそれが出来てしまう。故に彼女は超天才である。
「んじゃっ、こんな感じでっと♪爺さん退いてな!『星降る夜にご招待だ!!朽ち果てな。』」
氷龍王の下に巨大な魔法陣が現れる。それも1つではなく数珠繋ぎに複数の魔法陣が重なっている。
「いくぜ♪『スターダスト』!!」
空に放たれた魔力は氷龍王目掛けて降ってくる。それは流星のごとく。
「ギャオォォォォォ!!」
「ふぅ、疲れちゃった♪」
「ワシもじゃ。」
氷龍王VSイズ&ドゴラン
イズ&ドゴランの圧勝で幕を閉じた。
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