第56話 救え、闇の中から
時は少し遡る。
テレポートにて王都へと転移したノア達。
ノアは怒りと悲しみで頭がごちゃごちゃになっていた。
「・・・なんで、どうして、リュウは1人で残ったの?」
ノアは膝を地につき、困惑していた。
ノアは感じていた。リュウトがダークドラゴンに勝つことができないことを。
リュウトと一番長く旅をしてきたノアはリュウトの強さの殆どを知っていた。
どのくらいの強さを持ち、どのくらいが限界なのかを。
そしてダークドラゴンの強さも感じていた。
ピリピリとした空気を感じていた。
こいつはヤバい、全員が力を合わせてもかなわないだろうと。
だからこそノアは絶望をしていた。
勝つことの出来ない相手にリュウトはたった一人で挑んだ。自分たちを逃がすために。
「テレポートは?テレポートでもう1回向こうに飛べないの?」
「・・・ごめんノアちゃん。もう、テレポート発動に必要な魔力が足りないの。それにテレポートは1日に何度も使用できる魔法じゃないの、ほんとにごめんね。」
サツキは泣きそうになりながら、答えた。その顔には披露の色が見える。
大量の魔物との戦闘に加え、テレボートの使用により、魔力が枯渇仕掛けていた。
「・・・じゃあ、じゃあどうすれば、どうすればリュウを助けられる!!」
「ノアさん、一旦落ち着きましょ・・・」
「落ち着いてなんていられないよ!リュウが死んじゃうかもしれないんだよ?」
「・・・・・・っ!」
ギルドはそれ以上何かを言うことは出来なかった。
ギルドもリュウトの強さをそれなりに知っていた。
だが、ダークドラゴンの脅威も知っていた。『天災』と評される魔物。もはや魔物であって魔物ではない存在である。
『天災』に真正面から1人で挑んで生きて帰ってこれる保証はゼロに等しかった。
どうすればリュウトを助けられるか、命の恩人の命を救うことが出来るのか、どうすればこの状況を変えられるのか、考えた。
「・・・1つだけ、案があります。」
ギルドは思いついた。助けられる保証はないが助けに行くこと後できる方法を。
「それは何!早く、早く教えて!」
「これは賭けになりますが、転移の古代魔法道具を使うんです。」
「古代・・・魔道具?」
「はい、王城には必ずどこの街にでも転移することの出来る魔道具が1つあるのです。それをこの国の王様に貸してもらえればカザカミさんを助けに行くことができます。」
王城には多国へ行くためや重要な人物を呼び出すために転移の古代魔法道具が存在しているのだ。
「ほんとに!じゃあ早速王様に会いに行こう!」
「はい、とりあえず僕が表立って勇者として話をします。それでダメだったらケコリアさんの『神』としての名声を使わせていただきます。」
「はい、自分で良ければ力になります!」
ノアたちはギルドを戦闘に王城へと走っていく。
「すみません、僕は勇者です。ここの王に頼みがあってきました。謁見の許可を、お願いします。」
ギルドは勇者としての証を見せながら言った。
すると門の前にいた兵士はそれを見て、
「ええと、すみません。今すぐ許可というわけにはいきません。上に確認を取りますので明日また来てください。」
兵士は答える。
「今すぐとはいきませんか?一刻を争うことなのです。」
「すみません、あなたが本物の勇者であることが確認出来ていない状況で、信用のない方を通すわけには行きませんので。」
・・・なっ!なんで、勇者だよ?勇者でもダメなの?
「あの、自分は『豊穣神』の名を頂いています。ケコリアと申します。自分からもお願いします。王様に会わせていただけませんか?」
今度はケコが兵士に言った。
「はぁ、今度は豊穣の神様ですか。上に確認を取りますので明日また来てください。」
こいつ、全然信用していない。多分確認する気もない。
こっちは急いでるってのに、どうしたら?
これがあれば大抵の国に謁見できるようになるぞ、
ボクははっとなってこの言葉を思い出した。
そうだ、メダルだ。王家の印だ!
急いでメダルを取り出し、兵士へと見せる。
「こ、これ!これを見て。これは獣人国の王家の印だよ。コレなら信用できるんじゃない?」
兵士はそのメダルをマジマジと見る。そしてため息をした。
「はぁ、冷やかしなら帰ってもらえますか?勇者に『神』に獣人国の王家の印だとか言われても子供でも信じませんよ。」
「・・・なっ!ふざけてなんかないよ、これは本物だよ。獣王様に貰ったものだよ!」
「じゃあ、本物だって証拠見せてもらえます〜?」
こいつ、ムカつく!ぜんぜん信じてない。
でも、証拠なんて、どうすれば・・・
「それは本物だぞ。俺が保証しよう。」
後ろを振り返ってみるとそこにはいつぞやの執事っぽい人、四人の獣人。それにリンコ、そしてライオンの獣人。獣王がそこにいた。
「・・・獣王・・様、どうしてここに?」
「うむ、少し面倒なことが起きてな、それでここに呼ばれたわけよ。」
獣王は神妙な面持ちで答える。
「そういうオヌシは何故ここにおるのだ?」
「そうだ!リュウが危ないんだよ!」
「ふむ、カザカミがか、とりあえず中に入ろうか。そこで話をするといい。」
獣王はそのまま城の中へ入っていった。
そして、それに続きノアたちは城に入ることに成功した。
城の中を歩き、王の間を目指していると、1人の女性が近づいてきた。
「やぁ、獣王殿。此度は此方の要請に応えてくれて感謝するぞ。」
「おお!これはお嬢か、久しいな。して、今回の要請はお嬢のものなのか。」
「ああ、そうなのだ。困ったことになってな。ところで、獣王殿の後ろにいる方々は?」
その女性はノアたちを見た。
「こいつらはな少しこの王城に用があるらしいのだ。知っている仲だからな連れてきたのだ。話を聞いてはくれまいか?相当切羽詰まってるようなのだ。」
「お願いします!ボク達の話を聞いてください。」
ノアは頭を下げ懇願をした。
女性は少し考えて、
「いいだろう。獣王殿からの頼みでもあるからな。よし、では、向こうで聞こうか。」
女性が奥へと歩きだそうとすると1人の男の声が聞こえてくる。
「姫サマ、なんで勝手に行くんですか。こっちを置いていかないでくださいよ。」
現れたのは装いは冒険者風の、でもどこか高貴な感じがする男性だった。
「うるさい、大体お前にとやかく言われる筋合いはない!だってお前、私を置いて旅に出ただろう。」
「いやいやいや、俺その時休暇だった。休みもらってたよ。」
「ふん、貴様に休みなどはないわ!ずっと私についておれ!」
「休みくれたの姫サマだよね?そうだったよね?」
「まぁ、そんなことより、これから話をする。お前もついてこい。」
「そんなことよりって・・・まぁいいや、ついて行きますよ。」
その女性は歩き出し、それに付き添い男性も歩いていく。
ノア達はそれについて行き、案内されたのは応接間みたいなところだった。
「さて、話を聞こうか、っと、その前に自己紹介がまだだったね。私はシーンだ。一応この国の姫だ。」
シーンは応接間のソファに腰をかけた。
「ボクの名前はユウキ ノアです。今回は応じて下さりありがとうございます。」
ノアは深々と頭を下げ、向かいに腰をかける。
「ああ、いいさ、それで、用事とは何かな?」
「はい、実はボク達の仲間を助けるために転移の古代魔道具を貸してほしいのです。」
「転移の古代魔道具を?ふむ、もう少し具体的にお願いできるかな?その仲間がどういう状況にあるのかを知りたい。」
「はい、ボクの仲間は今、たった一人で闇竜王ダークドラゴンに戦いを挑んでいます。」
「「「なっ!?」」」
シーン、お付の男性、獣王が声を上げる。
「それは真か?ユウキよ。カザカミがダークドラゴンに挑んでいるというのは!」
獣王がノアに聞いてくる、
「はい、本当です。ボク達を逃がすために、今もダークドラゴンと戦っています。」
「そうか、もう復活をしていたか。」
ポツリとシーンは呟いた。
「もう、とは復活が近かったのか?」
「はい、今回の呼び出しの件はこのことについてだったのだ。復活した時の対処法をねろうとしていたが、手遅れだったか。」
シーンは悔しそうに握りこぶしを作り、立ち尽くす。
「いや、まだだ。ならば急速に対応すべきだ。もしかしたらそのカザカミとやらも、手遅れになってるやもしれん。そうなると近くの街にも被害が出てるかもしれない。お前はどう思う?」
「そうですねー、すぐに向かうべきですね。少し質問なんですが、獣王殿、そのカザカミってのはカザカミ リュウトで間違いないですか?」
お付の男性は獣王に向かって質問をする。カザカミとはカザカミリュウトの事か?と。
この人はリュウを知っている、恨みを持っているとか?いや、どうもそんな感じはしない。
なんだか少し懐かしむような感じだ。
「ああ、そうだが、オヌシ知っておるのか?」
「ええ、まぁちょっとありましてね。で、姫サマ、今のところ街には被害なしですね。」
男はニヤリと笑った。
「なぜそう言いきれる?」
「だって、カザカミ リュウトは俺の自慢できる弟子ですから。」
「え?弟子?」
ノアは驚き、思わず呟いた。
この人は何を言っているんだと思う反面、リュウトが師匠がいると言っていたことを思い出した。
「ああ、そうさ、お嬢ちゃん。俺はルル。あいつの師匠をやってる。そして、あいつならまだ戦ってるだろうさ。」
「何をかっこつけている、ほれ、早く準備をしろ。さっさとお前の弟子を助けに向かうぞ。」
ルルはシーンに蹴られる。
いててと尻を擦りながらへいへいと、返事をし、どこかへ歩いていった。
「獣王殿も手伝って頂けないだろうか?戦力は多いに越したことはない。」
「当たり前だ。俺もついて行く。」
「よし、では準備をする。出発は今から30分後。準備が出来たものはこの部屋で待機しておけ!」
「はい!」
ノアは元気よく返事をした。その目には希望の光が灯っていた。
これで助けに行けると喜んでいた。
そして準備をし終えたシーンが入ってきて、続いて執事っぽい人、それにルルに加えて、5人の冒険者っぽい人達が入ってきた。
少女のような人、犬の獣人、剣士の女の人、僧侶みたいな人、縦を持った男の人。
全員が歴戦の戦士であろう。
そして獣王の部下達と獣王自身はこの部屋から出なかったので、これで全員揃った。
「ここから赴く場は天災なり、覚悟はいいな?」
パーティ全体に緊張が、走る。
「では、行くぞ!」
執事っぽい人は魔道具を起動させる。
下に青白い魔法陣が出来上がる。
「では、飛びます。長距離瞬間移動」
一瞬で王城の部屋から始まりの街に着いた。
そして、全員は走って向かう。
向かっている途中、少し遠くで轟音が鳴り響く。それに強い風が吹いている。
「ほらな、さすがは俺の弟子だ。まだ、戦ってるぜ?」
「そうですね、良かった。」
「おっと、喜ぶのはまだ、早いぜ、ちゃんと無事を確認しなきゃな。」
ノアとルルは嬉しそうに歩を進める。
リュウトが、生きている、そう分かっただけでも良かった、そう思った。
だが、その瞬間、ピタリと風が止まった。
「・・・風が・・・止まった?」
ノアの顔から笑顔が消えた。
風が止まったすなわち、リュウトの死。そう思った。
そして次の瞬間、轟音とともに風の柱が上がった。
「なんなんだあれは!あれお前の弟子がやったのか?」
「多分そうだが、こいつはヤバいな。俺は先に向かう!」
と言うとルルは精霊の力を使い、ものすごい速さで走っていった。
「ボクも行きます!」
ノアもそれに続いて行った。あっという間に小さくなっていく二人を見て、他のメンバーも歩を早めた。
そしてルルは倒れるリュウトそれに1人の黒色の女性がいるのを発見した。
黒色の女性はリュウトに向かって黒い玉を投げていた。
ルルはいっきに走り込み、それを弾く。
「さっきは風がすげぇ荒ぶってたななー。やっぱめちゃくちゃ面白いねー、お前はよ。」
ルルはニヤリと笑った。
そしてノアが辿り着く。それに続いて他のメンバー達も走ってくる。
ルルはリュウトの体と褐色の女性の体を見る。
あいつがダークドラゴンか?それにしても相手もボロボロじゃないか。
こいつが1人でやったのか、すげぇな。
ルルは思わず笑がこぼれる。弟子の成長がうれしいようだ。
「1人でよく頑張ったな。あとは俺たちに任せとけ。」
「師匠!」
さぁ、今度は俺が頑張る番だ!
ルルは身構え、ラースと対峙した。
面白かったらブクマ、感想等々よろしくです。




