第54話 闇の竜は嘲笑う
これは、これは、ヤバすぎだね。
明らかに俺らじゃ勝てない。
「フハハハハハハ!!久しぶりにこの地に降り立ったぞ!実に気分がいい!」
こいつ、喋るのかよ。なら、かなりの知性があると見ていい。
野性的ではなくて、考えた攻撃が飛んでくる。これらなまだ、さっきの魔物の数が倍を1人で相手するの方が簡単な気がするぞ。
「ふむ、我の前に丁度よく人間がいるな。よし、手始めに貴様らから葬り去ってやろう。我が怒りの前に朽ち果てるがいい。」
完全に対象がこっちに向いたな。これは戦わざるをえない。
さて・・・どう逃げる?
まず、ダークドラゴンは近くにいるやつから狙い撃つ。
俺たちより先に魔物と戦っていたSランク冒険者達だ。
疲れて座って休んでいるところを狙われた。災難すぎるだろアイツら。
ドンっと敵の拳が飛ぶ。アイツらは何とか直撃だけはまぬがれたが、拳が地面に当たる衝撃で吹っ飛ばされていた。
ダークドラゴンの拳が当たった地面には巨大なクレーターが出来ていた。
「ふむ、今のを避けるか、よし、ならばもう少しはやくしようか。」
と言うとダークドラゴンは俺の目の前に来ていた。
・・・は?
「では、いくぞ。耐えられるかな、人間よ。」
俺は咄嗟に風を纏う。先ほどの戦闘で疲れが溜まっているせいで多くの風を纏うことはできないが、それでもかなりの防御をはれたと思った。
ズシリと重い拳が俺のカードをした腕に当たる。
ピシッ、嫌な音がした。それて俺は後に吹っ飛ばされる。
ギリギリ、ギリギリだが、耐えた。ダメージは最小限に抑えることに成功した。
だが、バキッと俺の両腕にはめてあるガントレットが割れ、砕け散った。
マジかよ、俺の『白鬼』が壊された。なら、これがなかったら?
考えただけでゾッとした。
「ほう、今のを耐えるか、素晴らしい!なかなかやるではないか人間よ。」
ダークドラゴンは余裕綽々でフハハと笑っている。
これは、逃げるしかない。
「お前ら!撤退だ。こいつには勝てない。逃げるぞ。王都に冒険者を要請する!」
「撤退とな、逃げるのか?我が逃がすと思ったのか?」
ニヤリとダークドラゴンは不敵に笑う。
ああ、思ってねぇよ、
俺は覚悟を決める。グイッとラウガから買ったポーションを、飲む。
体の疲れが抜けていく。
「俺が殿をする。お前達はサポート、サツキはテレポートの準備だ。」
「はい!分かりました。行き先は王都でいいですか?」
「ああ、頼む。ノア、疲れてるかもしれないけど俺に加護の力かけてくれ。」
俺はノアに加護を頼む。少しでも動けるようにするべきだからな。
「分かったけど、でも、大丈夫だよね?」
「心配すんな。大丈夫だ。」
俺はすぅーと息を吸い、深く吐き出す。
さて、やろうか。
「ふむ、話し合いは終わったか?では、いくぞ。」
ダークドラゴンは突っ込んでくる、サツキめがけて。
予想どうり!俺は素早く動き、先回りをする。
風の力で敵の攻撃をいなしながら防御をする。
拳を受け流し、蹴りを避け、徹底的に防御に徹する。
「防御だけではつまらんぞ!」
ダークドラゴンが怒りを露わにする。
つまらなくても仕方ねぇよ。これが一番いい。
俺は集中力を切らさないように全力で相手を迎え撃つ。
戦っている最中には援護も入る。
そして、テレポートの準備が出来た。
「準備が出来ました!いつでも飛べます!」
「そうか、なら早く乗れ、俺がのったら飛ぶぞ!」
「はい!」
俺はダークドラゴンへと対峙する。
他のみんなは倒れている冒険時を魔方陣へと運び込み、いつでも飛べる準備をしている。
そして俺はぐっと右腕に風を集中させる。
「逃がすと思ったか!ここで焼きつくしてくれる!」
口から炎が漏れ、ダークドラゴンが高温の炎のブレスを吐く。
「クソっ!ここでブレスかよ!」
俺はそのブレスを力の限り殴る。
ガントレットは砕け散り、『砕』の文字は発動しないが、風の力で炎を割く。
全ての炎を散らせる。
ダークドラゴンはすぐに俺の方へと向かってくる。
右腕を前に爪で切りさこうとしてくる。
ここだ!
俺はその腕を取り、背負投の形をとる。
相手が突っ込んできた勢いを利用し、風で補強しつつ、相手を投げる。
「グッ、がはっ・・・!」
ズシンと大きな音を立てダークドラゴンは背中から倒れる。
すぐに起き上がって来るだろうと予想し、俺はすぐさま次の行動に移す。
急いで魔方陣へと向かう。
その途中にもダークドラゴンは起き上がってくる。
ちっ、ダメージは無しか、まぁいい、時間は稼げた。
そして、俺はテレポートの魔方陣の上に乗る。
「いいぞ!今だ。」
「はい!テレ」
俺はこの瞬間に魔方陣から出て、攻撃してきたダークドラゴンを迎え撃った。
「ポート」
「なっ!リュウ!」
皆は俺が魔方陣から出たことに驚愕している。
テレポートで消える瞬間にノアの叫び声が聞こえてくる。
すまんな。
「仲間を逃がしたか。だが、貴様は逃げなくても良かったのか?」
「いいんだよ、てか、俺があそこで対応してなきゃ、てめぇは全員逃がさなかっただろ?」
テレポートの瞬間のダークドラゴンの攻撃は先程とは代わり、かなりの速度と攻撃力での攻撃を繰り出していた。
そしてダークドラゴンは的確にサツキを狙いうとうとしていた。
全く末恐ろしい。こんなのが魔物としているなんてなぁ、
「フハハハハハハ、そうだな、我は貴様らを1人として逃すつもりはなかった。だが、貴様は我の予想よりも強いらしい。これは楽しめそうだな。」
「そりゃ、どうも、」
ぐっと互いに身構える。
さぁ、いこうか。
先に動いたのは俺だった。『風神力解放』を使用し、相手に攻撃を仕掛ける。
風の力で殴る。蹴る。風の刃を飛ばす。
相手もそれに対応して攻撃を仕掛けてくる。
クソっ、完全に相手の方が上だ。スピードも、攻撃も、防御も・・・強すぎる。
「いいぞ!人間よ。我は楽しいぞ。もっとだ、もっと我を楽しませて見せろ!」
しかもこいつには余裕がある。全然本気じゃない。
さて、どこまで出来るか・・・
また俺の攻撃から始まる。俺も相手の攻撃は避けることは出来るのだが、全てを避けることはできずにダメージが蓄積されていく。
ジワジワと疲労も溜まり、動きが鈍ってくる。
「ぐわっ!」
相手の攻撃が当たり、後ろへと吹っ飛ぶ。
「フハハハハハハ、人間よ、疲れてきているな。もうおしまいか?」
「はっ、まだだよ。」
俺はよろよろと立ち上がり、息を整える。
もっと、力を。
「まだ、倒れるわけにはいかないんだよ!『風神憑依』!!」
俺の全力、風神憑依。今出せる力をあいつにぶつける!
風を纏い殴る、蹴る。先程とは違い、今度は俺が押している。
敵の攻撃を避け、こっちがダメージを与えていく。
「グゥ、なかなかやるではないか!こんな力を残していたとはな。では、我も少し本気を出そうか。」
と言いダークドラゴンはパンッと両手を合わす。
ゾクッと巨大なプレッシャーが押しかかり、俺は後に退く。
なんだ、何が起こる?何が来るにしろ、やばいことは代わりないか・・・
全身に力を入れ、身構える。
ダークドラゴンに黒いオーラがかかり、それが5つの玉へと変化する。
「フハハハハハハ、『黒竜玉』」
俺とダークドラゴンの2回戦が始まった。




