第51話 雷竜降臨
「ギャオォォォォォ!!!」
ドラゴンが叫ぶ。
「マジかよ、こいつがライガなのかよ。」
俺らは全員身構える。
目の前には巨大なドラゴン。俺らは疲労と負傷でボロボロの姿。
さてさて、さーて、これはどうすればいいんだ、止めるは確定だけどどうすればって事なんだよなー、
俺がそんなことを考えているとドラゴンは雷を迸らせ俺に襲いかかってくる。
俺はそれを避ける。
敵の攻撃は大振り、雷にさえ注意していれば避けることは造作もない。
だが、近づくことが出来ない。
ドラゴンは雷を纏っているため、当たったら感電してしまう。
威力はライガの時よりもヤバイ気がする。
ドラゴンは何度も何度も俺だけを狙い攻撃を仕掛けてくる。
このクソドラゴンめ、俺だけ狙いやがって、ふざけんなよこっちは疲れてんだよ!!
俺が逃げている時に、ドンっとドラゴンに火球が当たり、動きが止まる。
「大丈夫かい?」
「ありがとうございます!ルルクさん!」
ルルクさんが打ってくれたようだ。
「いやー、あれだね、こいつは俺だけを狙ってるみたいだから俺が引きつけるから背後から攻撃とかよろしく。」
「分かったよ!」
「はい、分かりました。」
「んじゃあ、ドラゴン退治といきますか!ノア頼む!」
「ほいさ!光り輝け!」
全員の体が光り輝き、小さな外傷が消えていく。そして、身体能力の向上。
「さて、やろうか!こい、『纏嵐』」
嵐を体に纏い、ドラゴンからの攻撃を避ける。
そしてその間に魔法組が詠唱からの攻撃をする。
音は大きく聞いているように見えるが纏っている雷のせいで効いていないだろう。
そして、俺ばかり狙っていたドラゴンライガも攻撃されればそっちの方を向き、襲いかかる。
「ギャオォォォォォ!」
ドラゴンライガが叫び地ならしをする。すると地面から雷の柱が現れ、俺たちに襲いかかる。
俺はそこに竜巻を作り出し、相殺する。
「なかなか、やばくなってきたな。さて、どうしようか。」
「このままじゃジリ貧だよ、魔力もいつか尽きる。ねぇ、リュウ、何かいい案はないの?」
俺は考える。巨大なアイツに攻撃を与える方法は、何があるかを。
要はあいつは加護の力の塊、それを無効化出来ればいい。そう、雷をければいい。
加護を無効化出来るもの、ああ、あれがあったな。
「一か八かの賭けに出る。」
「それって、大丈夫なの?」
「ああ、まぁ、いきなり負けるってことはないだろうから失敗したらキツいってだけだ。」
「どんな方法?」
俺はあの魔道具を取り出す。俺が持ってる加護無効化の力を持つマフラー。
「これだよ。このマフラーをアイツにかける。」
「それってあの可愛いリュウになっちゃう奴じゃん。」
「これならアイツを人間に元して正気に戻せる。」
正直どうなるかは分からない。成功するかどうかは賭けである。
だが、やってみるのも手なのだ。
そして俺はマフラーを首に巻く。姿が少女の姿へと変わる。
「なんでマフラーをつけるの?」
「少しやってみたいことがあるんだよ。あと、こっちの方が近づきやすい。」
さて、やりますか。
ぐっぐと屈伸をし準備をする。
「さぁ、反撃開始だ!」
ドラゴンライガへと俺は向かっていく。
やっぱりこのモードは身体能力が超高い。ドラゴンライガの攻撃を余裕を持って避けれる。
そしてここで俺の試したいことをやる。それは新しいこのマフラーの力の事だ。
実戦ではどのくらい使えるかを知っておく必要がある。
幸いにも相手はドラゴン。テンションが上がる。
「状態変化・翔」
すると俺の姿が少女の姿から金髪ポニーテールフリフリの服の女性へと姿が変わる。
「おお!リュウが変わった、凄い、可愛い!」
ノアさんがめちゃくちゃ興奮していたが俺は気にせずに背中に力を集中させる。
そして羽を動かし、空へと飛び立つ。
「飛んだ!?凄い!」
ノアさんが更に興奮をする。
テンションたけーよ。
んで、こっからが真骨頂って訳だ!
「状態変化・剛」
俺の姿が再び変わる。黒髪のショートに赤い和服の姿へと。
俺の背中から羽は消え、俺は落ちていく。一直線にドラゴンライガに向かって。
「オラッ、ライダーキックじゃー!」
物凄い速さの蹴りがドラゴンライガへと突き刺さる。纏っている雷を裂き、ドラゴンライガを地に伏せさせた。
「ギャオっ!」
どシーンと大きい音と共にドラゴンライガは、倒れる。
そして、ドラゴンライガの体が小さくなっていき、人間の姿に戻る。
おっと、倒してしまったか。マフラーをまく計画だったんだが、まぁ、いいか、元に戻せたんだし大丈夫だろう、たぶん。
「いやー、凄いねリュウ!なんかパワーアップしてるじゃん。」
「思った以上に強かったからビビった。流石はヘルダってかんじだわ。」
俺はマフラーを取りながら答える。
そして倒れているライガの方を向く。
「なぁ、アイツ生きてるのかな?動かないけど大丈夫か?」
「やばいんじゃない?」
と、こんな会話をしているとライガは頭を抑え、ゆっくりと上体を起こした。
「・・・ぐっ、お、俺は、どうなってんだ。」
ちっ、生きてたか、じゃなくて、良かったわ生きてて。
しかし、何か大分混乱をしているようだ。
もしかしたらドラゴンになっていた時の記憶がないのかもしれないな。
「おい、ライガ、生きてるな。」
「勝手に殺すんじゃねぇよ、そうか、俺は負けたのか、無様だな。」
ライガは自分自身を、はっ、と鼻で笑いながら答えた。
「そうだな、俺の勝ちだよ。で、お前はさっきの事を覚えてるか?」
「さっきの事?何のことだよ、お前との戦いのことか?」
やっぱり、記憶がないのか。
にしてもあのドラゴンライガにどうしてなったのだろうか?
俺に負けた時の悔しさとか、か?でも俺が感じたのは強い怒りだ。
胸糞悪くなるようなどす黒い怒り。
俺は前に風神が言っていた言葉を思い出した。
「怒りに支配されるな。」
か、俺も気をつけなければいけない。ライガのようにいつ暴走するか分からない。
だって俺とライガの加護は似ているのだから。
「お前、ドラゴンになってたんだよ。めちゃくちゃ暴れて大変だった。」
「俺が、ドラゴンに?それは本当なのか?」
「ああ、本当だぜ、まっ、後で話してやるよ。とりあえず休もう。俺もう疲れた。」
「そうだな、明日、昼、俺達が会った食事処集合でどうだ?」
「おけ、じゃあな。」
俺はライガをあとに去っていく。
「なんか意外と話せるじゃん。嫌いじゃなかったっけ?」
「あー、本当だ。色々吹っ切れたから、じゃないかな。」
ライガとガチで戦ってなんか昔の色々が飛んだ気がする。まぁ、昔は結構仲良かったしな。
「とりあえずギルドの様子を見に行くか。めっちゃ頑張ってくれたし。」
「そだねー、皆もそこにいると思うよ。」
他の奴らは俺とライガが話している時に先に移動したらしい。俺たちもそこに向かう。
「よう、ギルド、調子はどうだ?」
「あ、カザカミさん、お疲れ様です。調子は大分良くなりました。」
ギルドは上半身だけを起こし、答えた。
「そか、良かった。すまんな無理させて。」
「いえ、こちらこそ先程はお手伝いできず申し訳ありませんでした。」
「いや、いいよ、お前がいなかったら『雷竜』に勝てなかったよ。力を貸してくれてありがとな。」
なんか今回ギルドにはとても苦労をかけたなー。これは労ってやらねばならない。
「いえ、以前カザカミさんに助けていただきましたので恩返しが出来て良かったです。」
ええ子や、めっさええ子やで、この子。マジ良い奴と知り合えた!奇跡だね!
そして勇者一行にもお礼をいい、その場をあとに、俺たちは宿に戻ることにした。
「ケコもありがとな、守ってくれたおかげで助かったわ。」
「いえいえ、仲間ですからね、当然ですよ。」
「ねぇ、ボクには?言ってくれないのー?」
「あー、感謝してるよ。してる。」
「むー、なんか適当だなー。」
ノアは頬を膨らませるように怒った。
「ハハハッ、まぁ、そう怒るなよ。」
俺たちはこんな調子で宿へと戻った。
次の日、待ち合わせの店に行くと既にライガとその仲間たちの『雷竜』のメンバーと勇者一行が来ていた。
「よう、リュウト、久しぶりだな。」
「いや、昨日会ってるだろ。お前は体調とかいいのか?」
「はっ、俺を誰だと思っている、ライガ様だぜ?」
ライガはにやっとして俺に言った。
元気そうな強気な口調を聞き体調は大丈夫だと判断した。
「よし、じゃあ昨日の話をしようか。」
俺はそう言ってライガの前の席に座った。
そして俺は昨日のことを、ライガがおかしくなった時から全て話した。
その間ライガは静かに聞いていた。
「・・・マジかよ、そんな事があったのか、ちっ、迷惑をかけたな、リュウト。」
「やめろよ、お前はそんな奴じゃないだろ、あれは何かがおかしかったんだよ、なんか黒いなんかのせいだ。心当たりないか?」
俺がそう言うとライガはうーんと頭を悩ませていた。
「・・・これが関係あるのかは分からないが、雷神に夢の中で言われたんだよ「怒りに支配されるな」ってな。」
「・・・えっ、マジかよ。」
まさかのライガも言われていたとは。
詳しい話を聞くと俺と同じなような内容だった。「力に溺れるな、怒りに支配されるな、自分を貫け」、これら全てを雷神から言われたらしい。
全く同じ言葉、これは何かあるのだろうか?それとも単に加護の力が似ているものだからなのだろうか?
俺の中に不安が募る。これが杞憂で終わってほしいと願う。




