第41話 下方不注意
俺らは今は第5層にいる。そしてここまでで約2日かかっている。なかなか順調と言えるだろう。
さて、残りはあと約5日。ここから段々と難しくなるだろう。よし、頑張るか。
「さてさてさて、気をつけろよ、なにが起こるか分からんからな、」
「りょーかいだよ!でもリュウも気をつけてね!岩の時みたいにならないように。」
「へいへい、」
サクサクとモンスターを倒しながら進んでいく。道中は特に罠とかはない、と思っていたその時、シューとガスが流れ込んできた。
何だ?これ、睡眠ガスとかか?だがな、俺は風使いなんだぜ?
俺は周囲に風を起こし、ガスの侵入を防いだ。
ふふふ、どうだ迷宮さんよ、前に盗賊に風の弱点を教えてもらったからな、少し改良というか強化というか、まぁそんな感じのことをやっておいたのだよ!
「凄いですね、ガスがこっちに全く来ませんよ。」
「さっすがはリュウだね!良くやった!」
「おう、お褒めに預かり光栄だよ、あんま離れすぎんなよ、疲れるから。」
罠をもろともせずにズンズンと進み、6層へとたどり着いた。
第6層、5層までの雰囲気と少し違った。何か重い雰囲気がある感じだ。薄暗く、何が起こるか分からない感じが気味悪い。いっそう気をつけなければいけない。
進むペースを落としつつ警戒を強め進んでいく。モンスターのレベルも当然ながら強い。段々とモンスターが連携をとり始めたのだ。低ランクモンスターでも束になられたら結構面倒だ。取りこぼしのないように戦闘をする。
普段よりも集中力を高めていないとすぐにやられてしまう。迷宮ってのは恐ろしい場所である。
どんどん進んでいき、7層へいく魔法陣を見つけることが出来た。
よし、いくぞ、そう思った瞬間、突然に床が抜けたのである。そう、罠だ。
「やべっ!」
ふわりとした浮遊感が漂う。全員一気に落下をし始める。
「わあああぁぁぁ!落ちてるよ、どうすんのこれーーーー!」
「ま、まずは落ち、落ち、落ちてますー!」
ノアとケコが慌てている。うん、これはやばいよ、とりあえず下から上に風を発生させ、落下スピードを落とす。そして、状況確認だ。ピンチな時ほど冷静であれ。
これは、どうなるんだ?穴があって落ちたってことは下の階層にいくのか?いや、でも下の階層への移動は転移魔法陣、本当に下にいけるのか?
と考えていたら地面が近づいてくる。風に乗りながらふわりと着地をする。
周りを見渡そうとすると、再び足場が消えた。
… は?
「ふっざけんなよ!何でまた落ちていくんだよ!」
俺の体に浮遊感が襲う。本当に嫌な感覚だ。高いところから落ちていく感覚ってのは。
「ねぇ、また?また落ちてるよーー!リュウ頼んだよ!」
「もう、やってる。」
下から風を吹かせる。ふわりと風に乗る。段々と下降していき、地面が近づいてくる。
今度は落ちないよな、そう思いながら下を見てみるとそこには針がビッシリ張り詰められていた。
……ちょっとやばくね?ゆっくり落ちているとはいえこのまま行くと刺さるよね?アウトだよね?強風で移動させるか?いや、でもこの状態から強風を使うのはかなりきつい。ここは、誰かに頼むしかない!
「ノア、ケコ!どっちでもいい、針の上に落ちないように出来るか?」
「すみません自分は出来ません。地面に触れないと能力が発動できませんし、気候を変化させた所で意味が無いでしょう!」
「ボクに任せてよ!水よ!ボクに力を!『超流水』」
どこからとも無く現れた水が俺たちを運び、針から救う。
「さんきゅー、助かった。流石だな。」
「ノアさん流石です!」
「いやー、褒められるって照れるね!」
俺らは地面を踏みしめ、落ちないことを確認する。
よし、ここは落ちないみたいだな。しかし、ここは第8層か?確認するすべが無いな。うーん?
と俺が悩んでいるとわらわらとモンスターが集まってきて俺たちを取り囲んだ。
悩んでいる時間はないってことですか、武器を構える。
「さて、とりあえずここを抜けるぞ!」
「おー!」
「了解です。」
次々とモンスターを倒していく。だが、その数は一向に減る気配はない。
「はぁはぁ、数が多すぎやしねぇか?」
「てか、どんどん増えていってない?」
「気づいたんですが奥にたくさんの魔法陣があるみたいです。そこからモンスターが湧き出てきてるようです。」
「マジかよ、じゃあ俺らが落ちたあの穴は針で殺すか、モンスターで殺すかの罠ってことかよ。」
この場に留まったとしてもつかれてやられるのがオチだろう。ならば……
「強行突破する!俺についてこい!」
「「了解!」」
「一気に突破する。『風神力解放』」
体の奥深くから力が溢れ出る。風が流れるように…進め!
「オラァァァァァァァァァアアア!!」
真っ直ぐ一直線に駆けていき、道を作る。俺の後に続いてみんなが走ってくる。そして、モンスターの群れを抜け、次の階層へいく転移魔法陣を発見した。
急いでそこに飛び乗る。不思議な感覚が襲い、次の階層へと転移する。
「抜けたーー!」
「ふぅ、ありがとリュウ!」
「助かりました。」
「ああ、少し休んでいこう、疲れた。」
どっと疲れがくる。脱力感が身体中を駆け巡る。それと同時に眠気が襲う。
「ちょっと寝る。しばらくしたらまたはピンチになったら起こして、じゃ、おやすみ。」
俺はその場に横になり、寝た。睡眠は大切なのだ!!
しばらく時間がたち、自然と起きる。起きてみると全員は寝ていた。ソウまでも寝ていた。
えっ?なに?どういう状況?何でコイツらまで寝てんのさ、とりあえず起こすか、
「おーい、ノアさん起きろ、朝だぞー」
「…んっ、んぅ、ふぁ〜あ、ああ、リュウ起きたんだね。」
ノアさんは眠たそうに目を擦りながら大きな欠伸をした。
「で、何でお前らまで寝てんの?危なくね?」
「あっ、それは大丈夫だよ、この層はなんとモンスターがいないみたいなんだよね。」
「はぁ?どういう事だ?」
「ええとね、つまりねこの層には次の層に行くための魔法陣しかないんだよ、部屋もこの一部屋だけだし、モンスターが入り込む余地無しって感じなんだよ。」
「なるほど、なっと。」
考えるにたぶん次の層にキーパーがいるからって事だな。前の階層で、しっかりと体調なんかを整えて挑めってことか、迷宮の癖に気が利くね〜、
「睡眠も取れましたし、ボス戦といきますか、ほれ、ケコ起きろ、そろそろ行くぞー」
「…へっ、は、はい!了解であります。」
ケコはビシッと敬礼をして勢いよく立ち上がった。相変わらず敬礼がよく似合う。
最後の武器の点検をする。問題ない。
「リュウ!こっちは準備出来たよ!」
「ああ、じゃあいきますか!」
俺達は次の階層へいく転移魔法陣を踏んだ。
飛ばされた先には大きく赤く角が生えた生物がいた。腰には酒があり、手には棘のついた棍棒を持っている。そう、鬼だ。
鬼か〜!なるほどなるほど、しかも古代種の赤鬼ときたか、面白い。相手にとって不足はなし!
「嵐よ強く吹き荒れろ!『纏嵐・韋駄天』!!」
体に嵐を纏う。相手が叫ぶ!
「ヴォォォォォオオオオオ」
開戦の合図だ。相手は棍棒を振り回す。巨体の割に速いな。
俺らはそれを避け攻撃へと転じる。風を纏った刃が相手の肌を削、れない!?
なんだよ、硬すぎだろコイツ、さて、どうすっかね〜、
相手の攻撃を避けつつ色々試す。ケコの攻撃は打撃だが、あまり効いてる感じはしない。ノアの矢はというと、やはり弾かれる。
もっと攻撃力が必要だ。あの肌を砕く位の、ならば、韋駄天ではいられないな…
「フゥー、モードチェンジだ、風よ我に集まりて、その力を発揮せよ、嵐となりしその力今ここに!『纏嵐・天手力男』!」
1番足の速い神様から1番力の強い神様へと、
速さはかなり落ちた、だが代わりに力を得た。
「ノア、ケコ、サポート頼む。」
「「了解」」
ノアとケコが鬼を引き付けて隙をつくる。そのすきを狙って、
「じゃあまぁ単純な名前でも『暴風拳』」
鬼の腹を思いっきり殴った。鬼はヨレヨレと腹を抑えた。鬼の目にも涙ですね。
そして鬼はここから行動を少し変えた。怒りの力ってやつだな。
「ヴォォォォォオオオオオオ」
と咆哮をし、酒を手に取り、飲んだ。すると鬼の体に変化が生じる。シュゥゥゥウと煙が体から流れ出る。目が光、こちらを見る。来る!
ダッと鬼は地面を蹴り、こちらへ向かってくる。狙いは俺のようだ。そして攻防が始まる。殴り、蹴り合う。鬼のスピードは先程よりも速く強かった。ドンと腹を殴られ、後ろに飛ばされる。やり返されたな。
ははっ!いいねー!さらに強くなるとか、面白すぎだろ!ならばこっちもいかせてもらう。
「『風神力解放』、さぁ一気に畳み掛ける。ノア!」
「ほいさ!光よ宿れ!」
俺の体を光が包み込む。モンスターを突破する時に力を使っちゃったからな、約二分、これが効果時間かな、ノアのバフと風で押し切る!
相手を確実に打ちのめしていく。手、足、腹、顔、順に殴っていく。正直考えている余裕はないのでゴリ押しだ。
相手も殴り返してくる。やっぱり強いな。だが、俺の勝ちだぜ。
ドンと腹に1発拳を叩き込む。すると鬼はフラリとし、その場に倒れ込む。俺達の勝利である。
「はぁー、短インターバルで風神の力を使うもんじゃねえな、スッゲェ疲れた。」
「お疲れ!リュウ、やっぱり強いね〜、チートだね〜」
「お疲れ様ですリュウさん」
俺が労いの言葉を貰っているとパチパチと拍手の音が。
「素晴らしい戦闘でした。しかも判断力や、仲間を思う気持ちも素晴らしい。あなたは充分にSSランクになる資格があります。という訳で、ギルドナイトが1人、 ソウの名の元にカザカミ リュウト あなたをSSランクへと昇格させます。」
「おし!これで、俺もSSランクだ!」
「やったね!リュウおめでとう。」
「おめでとうございます、リュウさん。」
やっとこれで、師匠に追いついた!ああ、元気にしてっかな〜、師匠、久しぶりに会いたいぜ。
「では昇格式がありますので王都へ向かってください。王都への道筋はこの地図に、あとこの部屋の宝は全てあなた方のものです。好きにしてください。僕は報告があるのでここで失礼します。奥の魔法陣に乗れば外へ出られますのでそこからお帰りください。では、」
とソウは淡々と告げ、魔法陣に乗り消えていていった。
宝〜、よく見たら宝箱があるな。それを貰っていっていいと、いや〜儲かるね〜
「よし、じゃあ宝を回収するか。」
「おー!」
俺達は沢山ある宝箱を開け、まぁ鞄に入る分だけの宝を回収していく。
「…ん?なんだこれは?マフラー?」
俺が開けた一際豪華な宝箱の中身はマフラーだった。
「ホントだ、マフラーだね、しかも男物。」
「魔道具だと思いますが、効果が分かりませんね。」
そうか、魔道具か、そういえば迷宮には魔道具が眠ってるとか言ってたな。これも魔道具なのか。
「ねぇ、リュウつけてみなよ。」
「効果が分からないのにか?悪い効果だったらどうする。」
「いえ、迷宮から出る魔道具は悪い効果もものは無いらしいですよ。何か必ずメリットがあるそうです。しかもそのマフラーは宝箱から察するに恐らくこの迷宮の一番の宝でしょう。きっと大丈夫ですよ。」
そうか、そうだよな、だって1番レアっぽいもんな!よし!期待しよう!
「じゃあつけるぞ?」
ノアとケコがワクワクしながら見てくる。俺はドキドキしながらマフラーを首に巻いた。すると俺の体が光出した。
「うわっ、なんだ?」
目を開けてみると、目の前は特に変わった様子はなかった。
なんだ?なにが起こった?
周りを見渡してみる。特に変わった所はない。じゃあ何なんだ?この魔道具は?
「ねぇ、リュウ大丈夫な……えっ?」
おいおいおい、そんな所で止めるなよ、怖いじゃねぇか、
「おい、俺の身になにが起こったんだよ?」
「本当にリュウだよね?」
「あっ?そうだよ、俺はカザカミ リュウトだぜ?」
ここで違和感に気づく。あれ?俺の声少し高くね?あとパーカーがダボダボなんだが、気のせいか?
「本当にリュウさんなんですね。驚きました。まさかのこんな姿になるなんて。」
「いやいやいや、ちょっと待て、俺はどんな姿をしている!」
俺は自分の体を見てみる。あれ?スカートを履いている?そして気のせいかもしれないと思っていたけど、俺に胸がある?
「おい、まさか、これって……」
「うん、そうだよ、リュウ、いま女の子になってるよ。」
ノアが水魔法で鏡を作り出し、俺の全身をうつす。
そこには見たこともない銀髪ツインテールでダボダボの赤いパーカーを着ており、首には長いマフラーを。そして黒いスカートを履いている美少女がうつっていた。
「マジかよーーーー!」
俺は美少女になった。
面白かったらブクマ、コメント、お願いします!




