第37話 黒き竜
これは少しヤバイな、
俺は目の前にいる竜を、見てそう思った。
こんなのにあった事ねぇよ、禍々し過ぎるだろ、
俺はたらりと汗を流す。目の前の黒竜は正しく異質そのものだった。あの魔将にも感じなかった嫌なオーラが漂う。
「ギャオォォォォオオオ!!」
黒竜が叫ぶ。ビリりと空気が振動する。
「何なんだよコイツは、こんな奴が存在すんのかよ、」
「気をつけてください、奴は闇竜王ダークドラゴンの眷属です。しかし、何でしょう、ダークドラゴンは封印されていたはず、まさか、その封印が解けたのでしょうか?」
なんだよそれ、やばいじゃん、封印とか凄すぎだろ、
俺は身構える。
「とりあえず、やるぞ、コイツはここで倒さなきゃなんねぇ気がする。」
「そうだね、本当にやばいね、」
「自分も戦います。こんなのをほおっておけません。」
俺らは竜と向かい合う。それぞれ武器を構える。そして、戦闘へ!!
まず、始めに動いたのは竜の方だ。爪や尻尾で攻撃を仕掛けてくる。動きは早い、だが、避けられないほどではない。
俺はそこに刀で切りかかる。後ろからノアの矢の援護も入る。ケコも果敢に大槌で攻撃をする。
「ギャアアァァァァアアア!!!」
竜が叫び、喉元が膨らむ。
なんだ?なにがくる?
俺は身がまえる。そして、竜は燃え盛る火炎を吐いた。
なっ!?くそ、ブレスか、
俺は咄嗟に風のバリアを貼り、2人の前にでる。しかし、全てを防ぐ事が出来ない。
ぐっ、熱い、
俺の体に、いくつかの火傷ができる。本来ならば火傷などおわない、だが、現在俺はパーカーをノアに貸しているのだ。防御力がかなり下がっている。こうして装備をしていないとあのパーカーがどれだけ優秀なのかがよく分かる。
「リュウ!ボクがパーカーを、借りてるせいで、ちょっと待っ…」
俺はその手を止めさせる。
「いいんだよ、その装備はかなりいいのもだ、とりあえずお前を守ってくれるぜ、だからそのままでいろよ、返すのは後でいいからさ。」
「う、うん、でも、回復だけはしとくね。」
俺の体を光が包む。だんだんと体力と怪我が治っていく。流石だ、『聖光の加護』やっぱり強い。
さてと、少し本気でいく。
ごうっと内なる力を呼び起こす。
「嵐となれ!『纏嵐・韋駄天』!」
風を使い、竜と戦う。相手の爪を砕き、鱗を剥ぐ、相手も負けじと噛みつき、尻尾で叩きつける。
「ははっ!いいな、お前!強いぜ!」
「ギャオォォォォオオオ!」
竜が叫び、俺は笑う。コイツは凄く強い。俺の力を試すことが出来る。
竜が再び、喉元を膨らませる。ごうっと口元から熱気が漏れる。さっきより強いのが来る。俺はそう確信した。
「風よ、集まれ!」
俺らの前に風のバリアをつくる。竜の放った炎と俺の風がぶつかる。辺りはやき焦げるが、俺らにダメージはない。
ああ、コイツは強いな、楽しいな。薄々思ってたんだが、俺は戦闘狂な感じがあるな、こんな状況でも笑いが止まらん。
俺は思いっきり竜の頭を殴る。相手はそれに合わせ、頭突きをかます。ドンッと大きな音と衝撃が走る。俺の手がビリビリと痺れ、そこから血がたらりと流れる。
ちっ、固いな、風補正あってこれか、さすが!
と思った瞬間に、俺は尻尾で後ろへ飛ばされる。俺はぐるりと一回転し、勢いを殺し、竜へと向かう。刀を構え、風を付与する。
「ほらよ!お返しだ!」
俺は風で土埃をあげ、目くらましをし、相手の後ろに回り込み、尻尾を切る。
「ギャアアァァァァアアア」
竜は叫ぶ。そして、上空へと羽ばたいていく。
「くっ、逃がすか!」
ジャンプで空へと上がろうとするが、やはり、空中は竜の領域、俺は空中ではあまり身動きが取れないため、相手の爪の攻撃によって地面に叩きつけられる。
「ぐっ、はっ!」
「リュウ!大丈夫?」
「ああ、心配すんな、って、ノア!避けろ。」
俺は叫び、ノアを風でつき押す。すると、先程までノアがいた場所に丸い火球が飛んできた。俺はバッと上を見るとそこには無数の火球を村全体に落としている黒竜の姿があった。
「マジですか、これは少しやばいねー、」
火球が流星群のように落ちてくる。できる限り、うち落とそうとするが手数が足りない。
「ボクに任せて!」
ノアは背中から1本の矢を取り出し、弓を構える。そして弓と矢が光り輝く。
「聖光よ、我に力を!輝け!ホーリーアロー!」
放たれた光の矢は分岐し、それぞれ火球に向かっていき、全てを空中で撃ち落とした。
「やるな、ノア」
「ボクも伊達に修行をしてきた訳じゃないんだよ!」
ノアはドヤ顔を、する。しかし、油断は出来ない。相手はまだ、はるか上空にいる。どうやって攻撃をするか、多分ノアの矢は届くだろうだが、撃ち落とすには攻撃力不足である。さて、どうするか、
俺が悩んでいると、
「あの上空にいるのは厄介ですね、なので自分が落とします。リュウさんは追撃の準備をしておいて下さい。」
「あ、ああ、だが、どうやって落とす?」
「まぁ、見ていてください。
自然の怒りよ、自然の怒りよ、ピカピカ、ゴロゴロと、この大地に降り立ち、破壊の限りを尽くせ!ゲロゲーロ、ゲロゲーロ!雷よ落ーちろ!」
空がどす黒い雲に覆われ、竜に向かって1直線に雷が轟音をたてて落ちる。
「ギャアアァァァァアアア」
竜はどんどんと高度を落としていき、地面へと落ちた。勝機、俺はそう思い刀を構え突っ込む。
「お前との戦い楽しかったぜ、『風刃』」
俺はざくりと竜の首を切り落とした。
「ふぅ、終わったー!」
どさりと俺はその場に座り込む。
「お疲れ、リュウ、流石だね〜、」
「おう、お前もありがとな、助かったぜ。あとケコも、さんきゅな」
「いえいえ、自分が出来ることをやったまでですよ。」
「しかし、村助けに来たのに、この有様じゃなー」
俺は荒れている村をみる。竜のブレスや火球のせいで、村は再び荒れてしまった。
「大丈夫です。自分におまかせアレです。」
とケコは胸元のポケットから種の様なものを取り出した。そして、それを地面に埋めた。
「ケロケロケロ、ケロケロケロ、自然よ咲き誇れ!」
ケコが詠唱を唱えると種を植えた場所から緑色の芽が出て、それが村全体へと広がり、荒れ、削れた土地も元に戻してしまった。
「すげぇな、村にまた緑が戻った。しかも、土まで元通りか、やべぇな。」
「これが自分の力です。まぁこんなことしか出来ませんが、この村が再び活力のあるものへと戻りますように、と」
いやー、凄く立派だねー、俺にはとても真似が出来ないな、これは、
で、ここからは竜を倒した後の話。とりあえず再び村長さんに感謝され、村に伝わる秘宝的なものをくれようとしていたが断っておいた。だって秘宝は村にあるべきだろう。
「リュウさんたちはこれから獣人国へ向かうんですか?」
「ああ、そうだな。」
「それでしたら自分が案内させていただきます!自分の故郷なので。」
「えっ!故郷?ケコって獣人族だったの?」
ノアが驚いてケコに聞く。俺も驚いた。だって見た目は完全な人なのだ。ケモミミも無ければ尻尾も無いのだ。気づくはずもない。だが、獣人ということは多分あの種族なのだろう。
「はい、自分は蛙族です。カエルの獣人ですね。」
やっぱりね、てか、ケロケーロとか言ってる時点で分かるわな、詠唱が完全にカエルだったしなー
「そうなんだ!ケコって獣人なんだね!じゃあ、よろしく頼もうかな!ねっ!良いでしょリュウ?」
「ああ、大丈夫だぞ。むしろ歓迎だね。色々聞けるしな。」
「やったぁ!じゃあ早速向かおうよ、ボク今からワクワクしちゃうよ!」
「よし!じゃあ行くか、じゃあよろしく頼むケコ」
「はい、おまかせあれです。」
俺らは村を出て獣人国へ向かう。獣人国へ向かう道中はケコの話を聞いた。獣人国での暮らしなどを中心に。
道中は蛇も出て少し大変だった。主にケコが、てかケコだけが。
「いやー、ケコって本当に蛇がダメなんだねー、」
「は、はい、自分蛇だけはだめで、怖くて怖くて、」
流石はカエルってとこかな、あれ?カエルってさ蛇に睨まれたら動けなくなるんじゃね?ケコって蛇見た瞬間に全速力で逃げるよね、なんか面白いわー、
俺らは何だかんだあって、獣人国へたどり着くことが出来た。
「おおー!ここが獣人国!ケモミミ王国か!いやー、テンション上がるね〜。」
何を隠そう俺は動物は好きなのだ。もふもふした感じがたまらん。やばい、今すぐにでももふりたい。くそ、おさまれ俺のモフリストとしての血よ!
「色んな獣人がいるね!凄いよ!早く行こうよ!リュウ、ケコ!」
ノアさんも、テンション上がってますねー!そりゃ、そうか!仕方ないよね、だってケモミミですもん、もう一度言う、だってケモミミですもん!
「ああ、行こう!」
俺らはついにケモミミ王国、獣人国へとたどり着いたのだ。
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