第35話 嵐来たる
現在時刻は10時なり。カケルを待っております。
「よー、お前ら!早かったなー」
カケルが手を振りながら走ってきた。
「遅いぞ、1時間の遅刻じゃねえか」
「いやー、悪い悪い、寝坊しちまってよ〜、まっ、許してくれよ。」
軽いな〜、まっ、別に忙しいとか無かったし、良かったんだけどね。
「リュウはまたそんなことを言って〜、リュウだって寝坊してここに来たの9時45分くらいじゃん。」
うっ!痛いところをつきますなーノアさんははい、そうです俺も寝坊しました。だって目覚まし無いもん!しょうがない。
「なんだよ〜、遅れた俺が言うのもなんだけどお前もかよ〜、」
「まっ、許してくれよ」
「君たちが許してもボクが許さないよ!なんか奢ってよね!」
ニヤリと笑いながらノアは言った。
「分かったよ、とりあえず集まったがどうすんだ?お前の仲間はどこだ?」
「俺の仲間は今、ギルドに集まってもらってる。向かおうぜ!」
「おう、」
俺とノアはカケルについて行き、冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドに入るといつも通りにいろんな冒険者の声で溢れかえり、賑わっていた。
「おーす、お前ら、集まってっかー?」
カケルが冒険者ギルドにいた5人のメンバーに話しかけた。
「カケル君、遅いよ〜私達だいぶ待ったよー」
「そうよー、これならこんなに早く起きることも無かったのに〜」
「私も、そう思うです。」
うわー、すげぇな6人パーティで4人が女ですか。異世界ハーレムですかね?でも1人は男がいるんだなー
「カケル殿、こちらの方々は?」
このパーティのもう1人の男が話しかける。
「ん?ああ、こいつらは俺の友達、今日、一緒にクエストいく奴らだぜ、」
「おお!そうでしたか、拙者は ラカヌ・ノブナガと申します。どうぞお見知り置きを」
うわー、武士だー、すげぇな。名前がノブナガって、やべぇツボった。
俺はクククと笑いを堪えながら簡単な自己紹介を済ませる。
「俺はカザカミ・リュウトだ、よろしく。」
「ボクはノア、ユウキ・ノアって言うんだよ!よろしくね!」
俺らが自己紹介をすると、カケルのパーティの女達が、
「ふーん、まぁいいわ。私はベルよ、」
「私はミドリよ」
「テルマって言うです。」
「はぅぅぅ、わ、私、私はリースってい、いいます!よろしくお願いしますーー!」
なるほど、なるほど、これは女子陣にはあまり歓迎はされてないみたいだな。
特にベル。以下にも強気って感じの子だね。金髪に長髪、背は高め。腰にムチを装備している。つり目なところが厳しそうだが、顔立ちは美人だ。
次にミドリ、髪をポニーテールにしており、色は青。ミドリとか言うから緑とか思った?残念!青でしたー!こんなことはどうでもいいや 、装備は杖1本、僧侶かな?こっちの子も結構可愛い顔をしている。
そして語尾にですが付いているテルマ。格好から見るに魔術師だろう。背は低め。髪の色は薄い青。こちらも可愛い子だ。
で、最後にリース。ドジっ子属性だな。一番の特徴はなんと言っても頭に生えた獣耳だ。獣耳は素晴らしいな。獣人国行きてぇなー、装備は意外にも槍を装備。背格好は普通。ノアと同じくらいだ。もちろんカワイイ子である。
コイツ、自分の趣味で仲間を集めてきたな。多分ナンパで、一番謎なのは武士ね、どこで見つけてきた!気になり過ぎるわー、
「で、俺がこの『夢の鳥』のリーダー、カケル様だ!どうだ?凄いだろ、」
カケルがドヤ顔で自慢してくる。
「ああ、凄いな、色々と。」
「うん、色々とね。」
「そんなに褒めるなよ〜」
うん、褒めてないね、色々強調しましたからね?
「して、カケル殿、今日はどのような依頼をお受けになられるのですか?」
「相変わらず硬いな、お前は、んーそうだな、リュウトとノアは強さってどれくらいなんだ?」
「それなりだ、まぁ、基本的な相手なら問題ない。」
「ボクもリュウよりは弱いけど基本的な相手なら大丈夫だよ!」
「そうか、なら、Bランクくらいのにしておくか!」
カケルがそう言い、みんなが了承をする。
今回受けるクエストはこれだ。
▪▪▪▪▪▪▪▪
Bランク
グレートグリズリーの討伐
銀貨 5枚
※内容により、追加報酬
▪▪▪▪▪▪▪▪
なんだ?内容により追加報酬ってのは?とりあえず受付のお姉さんの話を聞く。
話によるとここの近くの村の周辺にグレートグリズリーの群れが来て村の人たちが困っているようなのでそれを助けて欲しいそうだ、そして内容により追加報酬てのは何でもグレートグリズリーの中に亜種がいるとか、もしいて倒せたら追加報酬がでるそうです。ちなみにグレートグリズリー自体はそう大したことのない敵で、ランクでいうとCくらいだが、群れなので厄介ということでBランクがついているということだ。
「よっしゃ!じゃあ出発だ!」
「「「「「「おー!」」」」」
「御意!」
俺は手だけを上げておいた。てか、御意!ってコイツ面白いわー、
で、到着です。道中はかなり楽だった。最低限の装備でいいのだ。なぜなら食料などの荷物は全てカケルがしまっておいてくれるのだから。ずるいなアイテムボックス、俺も欲しい。そんなことはさておき、俺らは戦闘に入る。
「よっしゃ、たおすぞー!」
敵の数は20、普通くらいである。俺は軽く刀で切っていき、ノアも弓で打っている。カケル達はと言うとそっちはそっちで戦っている。なかなか連携が取れていて倒すスピードも強さも申し分無かった。
「なかなか強いじゃん、お前のパーティ」
「そうだろ!お前も結構やるじゃねえか。」
1通り倒し終わり一息つく。すると、女子陣が、ノアに話しかけていた。
「ねぇ、ちょっと。」
「ん?ボク?」
「そうよ、あんたよ!調子に乗りすぎなんじゃないの?あんまり強くないくせに出しゃばって、カケル君に気に入られようとしてもそうはいかないんだから!」
「えっ?いや、別にボクはそんなつもりはないよ。」
ベルがノアの肩をどんとつき押す。
「そんな嘘をついてもダメ、バレバレなんだから」
「嘘なんてついてないよ!」
俺はその様子を遠目で見ていた。
うわー、なんか言い争ってるよ。怖っ、女って怖いわー、これは嫉妬というやつですな、うん、怖いな。
俺がその様子から目を離そうとした時、ベルの後ろに金色の毛をしたグリズリーが突進してくるのが見えた。
「危ない!」
俺は咄嗟に飛び出し、金色グリズリーの攻撃を受け止める。
「キャーーーー!!」
ベルは甲高い悲鳴を上げる。
「こいつは ガル・ゴールグリズリーだ!何でこんな奴がこんな所に!」
「知ってるのかカケル?」
俺はグリズリーを止めながらカケルに聞く。
「ああ、コイツはグレートグリズリーの変異種、グリズリーの王と呼ばれてる奴だ。強さは桁違い。ランクはSSにまでいってると言われている。毛が固く攻撃が通りにくいんだ。」
そうか、コイツはSSランクの魔物か、なるほど、面白い。ちょうど試してみたいこともあったし丁度いい。
「お前らは下がっていてくれ、コイツは俺がやる。」
「なっ!バカッ!お前ひとりで相手に出来る奴じゃねえぞ!」
「大丈夫、危ないと思ったら助けてくれや、ほいじゃ、まあいきますか。」
「おい!リュウト!」
俺はカケルが、呼び止めるのを後ろに金色グリズリーと対面する。
さーて、修行の成果を見せてやりますかね。
「風は集まり、強風となり、嵐となる。嵐は速く、強く、韋駄天の如く。」
俺の周りに風を集める。
ああ、いい感じだ。
「『纏嵐・韋駄天』!!」
風が渦巻き、嵐となり、俺の力となる。
ははっ!ワクワクしてきた!
金色グリズリーとの戦闘が始まる。いや、それは戦闘とは言えるものでは無かったのかもしれない。赤子の手をひねるように。
「……すげぇ、リュウトってこんなに強かったのかよ。」
カケルが口を開け、ぽかんとしながら言う。
「凄いでしょ?リュウは。カッコいいでしょ?」
「ああ、あれは反則だろ。あれこそ本当のチートだな、」
「まぁ、能力はチートかもしれないけど、あそこまで強くしたのはリュウの努力なんだよ。」
「…努力で、あそこまで…」
俺は金色グリズリーに攻撃をさせなかった。風を使い、圧倒的な強さで、速さで、相手に動くことすらを許さなかった。相手の金色の毛が宙に舞う。
「さて、これで終わりだ。『ウインドバレット』」
バレーボールくらいの風の玉が数十個出来上がり、それが全て金色グリズリーの体に飛んでいく。そして、金色グリズリーは倒れた。俺は『纏嵐』を解いた。
「ふぃー、なかなか楽しめたわ、」
「へい、リュウ、お疲れ!流石だね〜。」
ノアとハイタッチをすると、カケルが興奮を隠しきれない様子で話しかけてきた。
「…いや、すげぇよお前!ガル・ゴールグリズリーをたった1人で完封するなんて、どんだけ強いんだよ!」
「そう大したもんでもないさ、けどよ、あんな奴がこんな所にいるなんてよ、おかしくねえか?ここら辺のモンスターの平均ランクCなんだろ?なのにSSがいるってさ、やばくね?」
俺はカケルにここのおかしい部分について聞いてみる。
「ああ、確かにおかしい。しかもここ最近同じ様な事が起きてるらしい。本来ナワバリにいるはずの奴があちこちを動き回っているとか。しかも、ナワバリを調査しても特に異常は見られないそうだ。本当におかしなことになってるよ。」
なるほど、今はそんな事が起きていたのか。それは大変だな、本当に何が原因なのやら、一応、気には止めておこう。
「さて、魔物も無事討伐出来たし、街に戻ろっか!」
ノアの掛け声で帰りの準備をする。準備といってもカケルがアイテムボックスにグリズリーをしまってくだけなんだがな。本当に便利だなアイテムボックス、部位を全部持ち帰ることが出来るのはいいな。
さて、街に帰った俺たちだ。とりあえずクエストの達成を伝えた。金色グリズリーを見せた時のギルドのお姉さんの驚きようは面白かった。呂律が回ってなかった。噛み噛みだったよ!俺と同じだね!
報酬は山分けにしておいた。金色グリズリーの報酬も分けておいた。これでカケルたちが更に強くなればいいと思います。
「いやー、儲かった、儲かった。しかし、本当に良かったのか?俺達もガル・ゴールグリズリーの素材を貰っても?」
「いいんだよ、俺は特に金には困ってないし、装備もこれが気に入ってるしな。」
「そうか、いやー、お前に会えて本当に良かったぜ。楽しかったし、凄いもん見れたしな。ありがとよ!」
カケルが手をだしてきた。俺はその手をとり、握手をする。
「おう、俺も楽しかったぜ、いい友達が出来たよ。また、どこかで会おうぜ。」
「ああ、お前らはこれからどこへ行くんだ?」
「んー、特には決めてないな。気の向くままって感じだ。」
「そうか、なら、獣人国がオススメだぜ。リアルケモミミ王国だからな。しかも、そこには同郷出身がいるぜ。」
同郷…、なるほど、獣人国に1人いるのか、それは是非とも会ってみたいな。
「分かった、次の目的地は獣人国にするよ、いいよな?ノア!」
「うん、OKだよ!ボクもケモミミは楽しみだしね!」
「よし、そうと決まれば出発だ!カケル、また会おうぜ!」
「おう、じゃあな!」
俺はカケルに手を振り、後にする。ちなみに武士は深々と礼をしてた。うん、面白い。他の女の人達は軽く会釈って感じだった。
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リュウト達が街を出たあと、カケルたちが冒険者ギルドで、1人の騎士と対談していた。
「君達は冒険者パーティ『夢の島』で間違いないか?」
「はい、そうです。」
「そうか、では君たちをSランク冒険者とする。さしあたって王都へ向かってもらう。」
カケルたちは驚きが隠せなかった。
「えっ?俺達がSランク?本当ですか?」
「ああ、本当だとも、君たちは日頃からいろんな依頼をこなし、強さも申し分無い。今回のクエストの1件でギルド長が君たちをSランクに、上げることを決定なされた。なので近いうちに、王都のギルド本部へ行くように。」
騎士は淡々と伝えることを伝え、質問へと移った。
「一つ質問なのだが、この街にカザカミ リュウト 殿はいるか?」
「リュウトですか?あいつは今はこの街にはいません。昨日、旅立ちました、」
「そうか、ではもし、あったならば王都へ来るように伝えてくれ、ギルド長が呼んでいるとな。」
「分かりました。会ったら伝えておきます。」
「感謝する。では、私はここで。」
騎士はその場を立ち去った。そしてカケルは考える。
俺が遂にSランク冒険者、でも、本当にいいのか?多分ガル・ゴールグリズリーの件で上がれたんだと思うが、でもあれは完全に俺らの手柄じゃない。俺たちに本当にSランクの実力があるのか?
俺が思い悩んでいると、
「なーに、思いつめた顔してるのよ?カケル君らしくないよ。」
「そうよー、自分達にはSランクの実力がないと思ってるんでしょー?」
「ああ、そうだ、だって今回の件だってリュウトが全て片付けた、アイツでSランクなんだぜ?俺らにそんな力があるのかって…」
ドンッとカケルの背中に衝撃が走る。
「何言っちゃってんのよ、あの人は別格、あの人とは比べるべきじゃないのよ。」
「そ、そうですよ、もし、実力が、ないと思うなら、い、今よりももっと強くなればいいじゃないですか!」
「そうです。リースの言う通りです。強くなりましょう、です。」
「...…強く、か、そうだな、頑張ろう!俺らなら出来るよな!」
女性陣が微笑みを浮かべる。
「やっといつものカケル君になったね!」
「元気が一番ですよ。」
「そうです、カケルはその方がかっこいいです。」
「そ、そうですよ、わた、わたしも、その、カッコイイと思います!」
「拙者はどこへでもついて行きます。」
「よし、みんな!頑張ろうぜ、次、リュウト達にあった時に驚かせようぜ!」
この後、パーティ『夢の島』は誰もが知るような有名なパーティとなるのはまた別の話。
ちょくちょく閑話として勇者編とかカケル編とかやろうかなーと思います。
次回、獣人国へ!




