第34話 精霊界とその後
俺は気がついたら白い場所にいた。
前にもこんな事があったなーと思いながらぼーっとしていると風神さんが話しかけてきた。
「どうだ?さらなる力を使った感想は?」
「めっちゃキツかったよ、でも凄い力だった。」
「そうだろう、だが、貴殿はこの力を扱えるだけの力を得たのだ、誇りに思うといい。」
「そうっすか、そりゃ、ありがてぇよ、でも、まだ出せる気がするんだよなぁー」
俺がそういったとき、風神さんは笑った。
「そうだ、まだ貴殿は我の力の全てを引き出せてない。さらなる力を求めるのならば、『風魔都市 ディオス』に行ってみろ、さすれば新たなる力を手に入れる事が出来るやもしれん。」
「さらなる力…、そうだよな、まだ強くなれるならなりてぇな、」
俺がそういった瞬間体が薄くなる。
「時間だな、もう時期貴殿は目覚めるだろう、最後に貴殿に言っておくことがある。」
「なんだ?」
「力に溺れるな、怒りに支配されるな、そして、自らを突き通せ、さすれば貴殿に強さが手に入るだろう。」
俺はこの言葉を真摯に受け止めた。そして震えた。不安が押し寄せる。
「では、また会おう。」
俺の意識は現実に戻される。
目を開けるとそこは知らない天井、ではなくて最近泊まらせて頂いているウンディーネさん宅だ、ぼーっとする意識の中ベットからゆっくりと起き上がる。
「リュウ〜!おはよう!よく寝てたね〜」
「おう、おはよう、」
ノアに挨拶をする。するとシルフさんが部屋に入ってくるー
「カザカミ君〜、起きた〜?おっ!起きたね〜、体の方は大丈夫かな〜?」
と聞かれたので手をグーパーとしたりして体を軽く動かし、自分の体が動くことを確認する。
「大丈夫っすね。」
「そっか〜、倒れちゃって心配したんだよ〜、特にノアちゃんがね〜、ずっと看病してたんだよ〜」
「わわわっ!それは言わないでくださいよー!」
ノアの顔が少し朱に染まり、とても慌てる。俺はノアの頭に手を乗せ、
「ありがとな、おかげで良くなったよ。」
うわー、我ながらこんな行動をとるとは意外ですなー、
「う、うん、どういたしまして」
ノアが俯きながら小声で答える。
「よし、じゃあ〜、どうだったかな〜?新たな力を解放した感じは?」
「凄かったです。俺の体の奥底から力が溢れてきて、シルフさんの修行が無ければ風に飲まれてました。」
「そっか、そっか〜、それはそれは〜、じゃあ、一応コントロールが、出来たんだね〜、この短期間によく強くなったよ〜、
じゃあここでの修行はもうおしまいだよ〜、ここで教えられることももう無いしね〜」
「そうですか、短い間でしたが、ありがとうございました。おかげで成長することが出来ました。」
俺はシルフさんにお礼を述べる。
「じゃあ、そろそろ現実世界に帰りますか、色々やりたいこともあるしな」
「そうだね、まだ世界を色々見てないからね、あんまり長くいすぎてもダメだしね!」
「そっか〜、じゃあとりあえず姉さん呼んでくるわ〜」
と言ってシルフさんは部屋を出ていった。
「しかし、本当に良かったのか?もう精霊界を出ても。」
「うん、水魔法も結構使えるようになったし、聖光の加護の力の使い方も分かったし、ボクも大分強くなれたんだ!」
「そうか、それは良かった、ここで得たものは大きいな。」
「ここに来れて、良かったよ」
「ああ、そうだな」
ノアと会話しているとシルフさんとウンディーネさんが部屋に入ってきた。
「おはようございます、リュウトさん、お体の方はもう大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫です。」
「そうですか、もう、ここを立たれるのですね?」
「はい、色々世界を見て回る予定なので。」
「分かりました。では、こちらを」
とウンディーネさんが取り出したのは一つの銀色の小さな鍵だった。
「これは?」
「これは精霊界の扉を開くための鍵となっております。これを精霊と深く関わりがある場所で使用すると精霊界へいつでも来れます。」
へー、凄いなこの鍵、いつでもここに来れるようになったってことか、
「いつでもいらして下さいね。」
「はい、ありがたく。」
「では、元の世界に戻します、準備が出来たら外へ来てください。」
俺らは身支度をし、レイン達にお別れをいい、外に出た。
「では、あなた方に精霊達の祝福を!」
「まったね〜、カザカミ君〜、ノアちゃん〜」
シルフさんが元気よく手を振る。
俺らの体が光り輝く。
これが帰還の光か、
「しばらくの間ありがとうございました。」
俺とノアはペコリと頭を下げる。そして、気がつくと森の入口に立っていた。
「ここは、戻ったのか、」
「そうみたいだね、とりあえず街に戻ろっか!」
「そだな、よし、帰ろう。」
俺らは街へと歩いていった。そこからは少し大変だった。何せ少し有名な冒険者が3週間も行方不明だったのだから、多少なりとも騒ぎは起こる。
「どへぇー、疲れたよー」
「ああ、精霊たちのことを隠しながら事情の説明を色んな人たちに説明してするとなると、そりや、疲れるよ」
「悪評は取っておくべきだからねー、このままだと落ちた英雄とか言われそうだし!ボク、そんなの嫌だよ。」
「まっ、俺は気にせんけどな〜、とりあえず今日は休むぞ、色々あって疲れた。」
「そだね〜、おやすみなさーい」
ノアは別部屋に移り、俺は就寝をする。
そして、朝、てゆうか昼。結構寝てしまったようだ。ぼーっと寝ぼけながら辺りを見てみると机の上に書き置きがあった。
『へい!お寝坊さんめ!まっ、疲れてるようだし仕方ないよね〜、ボクは先に街を見てるよ、1時に宿に戻ってくる予定だからよろしくね〜』
と書かれていた。とりあえず俺は身支度をし、時間を確認するために大広場へと向かった。大広場にある大時計には11時30分と時間が刻まれていた。
なかなか時間があるな、暇だし俺も店とか見るか、
と思い歩き出すと、
「ねぇねぇ、そこのお嬢さん、俺と一緒に食事でもどう?奢るよ〜?」
うっわ、ナンパじゃん、いやー、この世界に来てナンパを見るハメになるとは、人生初ナンパを目撃したよ。どんな男がやってんだろうな〜?やっぱりチャラ男かな?
と興味本位で近づいてみると女の方はナンパを拒否している。
「あの、やめて下さい、そういうの興味無いんで。」
「え〜、釣れない事言わないでよ〜、いいじゃん、1回だけだからさ、1回だけ。」
男は断られてもめげずにアタックし続けている。
「いい加減にしないとボク、怒りますよ?」
あっれ〜?この言い方、この声、聞いたことあるな〜、いや、気のせいだよね〜
何か嫌な予感がするのでとりあえずフードを被り、『陰』を発動させる。
「いや〜強気だねー、そうだ!1回さ俺の能力見てもらえれば凄いことが分かるから、ほら、いくよ〜」
男は女の回答も待たずに勝手に何かを始めた。
男の手が突然何かに飲み込まれたかのように消え、再び現れる。その手には綺麗な花束があった。
「えっ?マジック?」
「そう、すごいでしょー?他にもこんなことも出来るよ!」
男はどんどんと何も無い空間から剣やら盾やら薬草やらをいっぱい取り出した。
確かに凄いな、これはいわゆるアイテムボックスって奴か?何でも収納可能とかいう、さっきの発言といい、なかなか強力な能力といい、コイツもしかして……
「ほらほら、凄いでしょー、これが俺の力〜、タネも仕掛けもない何も無い空間からあら不思議、こんな感じで、ほら、」
今度は冒険者カードが現れた。
「俺の名前は カケル・キサラギだ。こう見えてもAランクの冒険者なんだぜ!君の名前を聞かせて欲しい。」
「…カケル、キサラギ…もしかして」
「お前、異世界人だろ。」
女が何かを言いかけたとき、俺はフードを外し『陰』を解いた。
「うおぅ!な、なんだよ、突然現れて、ビックリさせんなよ」
「わっ!リュウ!どうしてここに?てかいつからここに?」
男と女、カケルとノアがとても驚いている。そりゃそうっすわ、突然目の前に人が現れる様なもんだもん、ビビるよね。
「で、どうなんだ?翔さんよ。」
「そんなことをお前に答える義理は…あれ?その格好ってまさか!お前も?」
「そうだ、俺も、ついでにそこのお嬢さんも同郷だよ。」
「すげー、一気に二人の日本人に会えるとは!ここで会ったのも何かの縁だ、飯でも一緒にどうだ?色々話そうぜ!」
カケルが興奮して話しかけてくる。
「ああ、いいぞ」
「ボクもOKだよ。まさかの異世界で日本人に人生初ナンパをされるとはね〜、」
「よっしゃ、じゃあ行こうぜ!こっちに美味い店があるんだよ。」
俺らはカケルに連れられ、飯屋に向かった。
「いやー、驚いた、カワイイ子がいるなっておもって声かけてみたらまさかの日本人だとはな!そりゃ可愛いわ!」
「ボクも驚いたよ、ナンパされた時は何こいつ?って思ってたけど色々言動とかであれ?って思い始めてさ、名前で確信に至ったんだよ。」
俺らは、正確には2人は仲良くおしゃべりで盛り上がってる。俺はっていうとね、うん、いつも通り無言だよ!何話していいかわかんないよね、こういう時ってさ!
「へー、お前らは今2人で旅してんのか、いいなー、女の子と2人で旅とか、リア充かよ〜」
「お、おう、」
いや、急にこっちに話しかけんなよ、ビビっちゃうだろ、てか俺がリア充なわけない。俺はどっちかっていうとリアルを影で生きる人間だ。やべっ、悲しくなってきた。
「いやー、そういえばさお前らが貰った能力って何?」
「ボクは『聖光の加護』って能力だよ!強いバフ効果があるんだよ。」
「俺は風を操る能力だ。」
「へー、すげぇな、俺はなさっき見せたとおりのやつだぜ!」
さっきのってあれか、何も無いところからなにか出すやつ。俺の予想ではアイテムボックス。
「名前はな『無限収納四空間』ってやつだ!四つの空間に何でも物が入って出し入れ自由なんだぜ!」
それは凄いな。無限とはな、普通は制限とかがあるもんだがない上に四つの空間が展開可能か、流石は異世界召喚者、能力がチートだな。
「なぁ、お前らの話聞かせてくれよ!どこをどう旅してきたとか、召喚された時の事とか話し合おうぜ!」
「いいよ!ボクも話してみたいな!」
俺らはしばらく日本の話をした。俺の事とか聞かれた時は本当死ぬかと思った。噛み噛みだったし、なんか上手く伝えれなかった気がするよ、カケルの話も色々聞いた。なかなか面白い話が出来たよ。
「いやー、なかなかいい話が出来たぜ、やっぱり懐かしい話が出来るのは嬉しいもんだな〜、」
「ボクも楽しかったよ、ねっ!リュウもそうでしょ?」
「ああ、久しぶりにこんなに話したよ、やっぱり同郷に会えるのはいいな」
「そうだ!お前ら明日とか暇か?俺のパーティと一緒にクエストでも行かないか?お前らの力を見てみたくなったんだよ!なっ!いいだろ?」
なるほど、俺らの力を見てみたいと、しかし、コイツのパーティと一緒かー、コイツパーティ組んでたんだなー、そりゃそうかAランクって地道に頑張らないと行けないもんなー、1人じゃ厳しいものもあるもんなー、
「いいよ!ボクも君の強さを知ってみたいな!Aランクの実力見せてよ!」
へーい、ノアさん、俺の気持ちを聞かないんですね、まっ、いつもの事だけどな!
「おっしゃ、じゃあ明日大広場に9時に集合な!遅刻すんなよ!」
じゃなあ!とカケルは金を置いて元気よく去っていった。
「いやー楽しみだね明日。」
ノアがニヤニヤしながら俺の方に話しかける。
うわー、コイツ、確信犯だな。ダメだろもう、楽しみにすんなって
「はぁ、とりあえず明日は頑張るか」
「OK!」
俺はため息を付きながら足取り重くその飯屋を後にした。
よろしくです!




