第32話 精霊界へ
張り切ってどうぞ!
「はじめまして、ノアさん」
その綺麗な女性はぺこりと頭を下げた。
「…えっ?何でボクの名前を?」
自分はこの人に会ったことは無い、なのに名前を知っている。警戒するのも当然である。
「それは森の微精霊たちからあなたを見ていました。」
「微精霊から?あなたはいったい何者、なんですか?」
「私は大精霊ウンディーネと申します。水を司っています。そしてここは精霊界と呼ばれている場所です。」
「…精霊界、ここが、」
キョロキョロと辺りを見渡してみる。
「わー、凄い!精霊たちがいっぱいだね!でもさ、何でボクはここに来れたんですか?確か精霊界ってさ、人間は入れないんですよね?」
「ええ、普通なら入れません、ですが、精霊と親和性がある者、心優しき者、は精霊に導かれ、ここに入ることが許されるのです。」
「へー、そうか、ネルが連れてきてくれたんだね、」
「そうよ!ノアは私を助けてくれたもん!」
「ネルを魔物から救っていただき、本当にありがとうございました。」
ウンディーネは再び頭を下げる。
「当然のことをしたまでですよ。あっ!そうだ、すみません一つ質問いいですか?」
「ええ、大丈夫ですよ。」
「あの、実は、ボク仲間とはぐれてしまったんです。その人ってここに来てますか?」
「いえ、来てませんが、もしかして赤い服を纏った男性ですか?」
ウンディーネの言葉にノアは驚いた。
「は、はい!でも、どうしてそれを?」
「はい、実はその方も今、精霊と一緒なのです。」
ウンディーネが手を前にかざすとそこに水のスクリーンが出来上がり、映像が映し出される。そこには1人の男性と2人の精霊の姿があった。
「あー!レイスちゃんとナカルちゃん!」
「この2人がネルの友達?」
「うん!そうよ!」
スクリーンを見ているとリュウト達が《ファントム・モンキー》との戦闘に入った。
「こっちでも《ファントム・モンキー》出るんだね、リュウ頑張れー!」
ノアはスクリーンの前で応援をする。
リュウトが猿を殴ろうとして、よけられる、その次に、目を閉じ、魔法で倒す。
「やったー、勝ったよ、ノア!猿を倒したわ!」
「うん、そうだね、流石はリュウだよ!」
フフンとドヤるノア。
「あの、すみません、リュウってここに来れるんですか?」
ウンディーネに聞いてみる。
「ええ、来れますよ、レイスとナカルが導きますよ。」
「本当ですか!じゃあ、ここで待ってればリュウに会えるんですね!」
「はい、会えますよ」
スクリーンの方を見てみるとそこにはノアがさっきまでいた花畑にリュウトはいた。
***************************************
霧が晴れたら何故か見たことない花畑に立っていた。
「どこだ?ここは」
と辺りを見渡していると、急に目の前が白い光に包まれた。
「…うわっ!」
光が止み、目を開ける。
「なんだ、今の、、、?」
目に映るのはさっきとは違う別の場所だった。
何これ、どーなってんの?花畑といい、ここといい、俺はまだ幻術にかかってるんですかねー?
とよくわからない状況でとりあえず周りを見てみる。そこにはちっこい羽の生えた生物がいる。虫ではなく精霊だ。
うわーお、精霊がいっぱいだねー、じゃあここは精霊界ってとこか?
と考えていると目の前に綺麗なお姉さんが歩いてきた。
「はじめまして、リュウトさん、」
その人はぺこりと頭を下げ、お辞儀をした。
えーと、どゆことかな?何で俺の名前を知ってるの?はじめましてだよね、あとこの人は何者?
と悩んでいると綺麗なお姉さんは話し始めた。
「私は大精霊ウンディーネと申します。あなたの事は森の微精霊たちで見ていました。レイス、ナカルの事を救っていただきありがとうございました。」
大精霊さんは再び頭を下げた。
「あっ、ええと、その、大丈夫っす、」
こんな美人な人からお礼を言われるなんて慣れているわけがない、てか、話すこと自体、慣れてるわけない。俺の特殊能力コミュ症が発動してしまった。
そんな俺が黒歴史を着実に増やしていると前方から走ってくる少女の姿があった。
「リュウー、へい、久しぶりだね!」
何なのこのテンションは?この子テンション高めですよ。
「おう、お前も無事だったか、」
「ふふん、ボクが途中でくたばるわけないよ!」
「そうか、まぁ再開できたことだし、良しだな。しかし、お前の方が先に来ていたんだな。」
「そうだよ、ちょっと気づくのがおそかったんじゃない?」
ノアがニヤニヤとこちらを見る。
「くっ、たまたまだ、ちょっとチビ達をおちょくってたから考えが遅れただけだ。」
「ふふーん、まっ、そういう事にしてあげる。」
とノアと再会を喜んでいると
「よがっだぁーー!ひっぐ、みんながいなくなったからおいで行かれたのかとおもっでー!」
「私たちがあなたを置いていくわけないじゃない!」
「そうよ、私達、友達でしょ?ほら、そんなに泣かない!」
「わぁぁぁぁあーん!」
こちらでも再会を喜んでいた。
しかし、ここが精霊界かー、確かに雰囲気が違うな。なんて言うか、えっと、フワフワしてるって言うか、まぁ、よく分からん!
辺りを見渡しながら思っていると、ウンディーネさんが、
「よろしければしばらく滞在なさって下さい。お礼もしたいですし、おもてなししますよ?」
おもてなししてくれるのか、特に急ぐ用事とかはないし、じゃあ、ちょっと観光していきますかね!
「ねぇ、リュウはどうする?ボクは滞在してみたいな。」
「そうか、俺も精霊界を観てみたいなって思ってたんだよ、」
「ホント!じゃあ、」
「お言葉に甘えることにしよう。」
「そうですか、では、こちらに」
ウンディーネさんに手招きをされ、ついていくとそこには街みたいな所についた。
「ここは精霊界の中心都市『ハーダ』の街です。ほとんどの精霊がここに住んでいるんですよ。」
へー、と思いながら街を歩く。
精霊界ってこんな事なんだなー。しかし、『ハーダ』ってどっかで聞いたような、どこだったっけー?思い出せんな。
「着きました。ここが、私の家です。どうぞ」
着いたのは街で1番でかい家だった。てか、大豪邸だった。
うわ、すっげぇ、でけぇ、ウンディーネさんって街で1番偉いんだなー、流石は大精霊。
中に入ると家の中は凄く綺麗でシャンデリアとかあった。流石だわ。
「わー、凄い家だね!」
「ふふ、ありがとうございます。では、こちらへ。お食事のご用意が出来ていますよ。」
「わーい、やったー、ご飯だ!楽しみだね、リュウ!」
「お、おう、そうだな。」
へーい、ノアさん、他人の家で俺に話を振らない、上手く返せないから、無理だから、
とこんなことを思っていると食堂に着いた。そこにはとても豪華な食事が並べられていた。
すげぇな、てか、いつ連絡したんだ?これも微精霊に頼んだとか?
「すごい美味しそうだね!でも、これっていつ頼んだの?」
「それはですね、微精霊を通じて作らせました。」
よし、当たった。いや、割とどうでもいいわ
と思っていると食堂に声が聞こえてきた。
「ふぁーあ、ねぇーさーん、お腹空いたー何が食べさせてー。」
見てみるとそこにはウンディーネさんと顔は似ているが色々違う女の人が出てきた。髪はボサボサで寝癖が立ってる。
さっきまで寝てたなこの人。しかし、どっかで見たことあんな、この人。
「はぁ、もう、シルフ今日はお客様が来ていると言ったでしょう。まずは身支度をしなさい。」
「ふぁーい、」
と欠伸をしながらその人は食堂を、出ていった。
「すみません、あの子は私の妹でシルフと言います。少しズボラなとこがあるのです。」
「へー、あの人がウンディーネさんの妹さんなんだね!道理でよく似てると思ったよー。」
こんな話をしていると妹さんが、戻ってきた。
「ほら、姉さん、顔も洗ったし、髪も直したわー、服も着替えましたよー。ご飯くださーい。」
その姿はさっきとは違いなかなか綺麗なものだった。そして俺はその姿をみて思い出した。
「あーーーーー!」
「なに?急に大声出してどうしたの?リュウ。」
「いや、ごめん、シルフさんってもしかして師匠と一緒にいた大精霊さんですよね?」
「…師匠?あっ!君はトルネガ君の所にいた子だね!よくトルネガ君から聞いてるよ〜。」
「えっ、2人は知り合い?」
「ああ、この人は師匠の契約精霊だ。」
このシルフ、そう、シルフ・ハーダはリュウトの師匠トルネガ・ルルの契約精霊だったのだ!だからリュウトが聞き覚えのある街だったり、名前だったりしたのだ!
「あの時いた子がね〜、確かリュウト君だったよね〜、ふ〜ん、なるほど、なるほど、」
シルフさんは俺をじっくりと見てから納得したかのように頷く。
「よし、リュウト君!君の力を見たい。食事が終わったら少し付き合ってよ。」
「は、はぁ、」
とりあえず返事をしておく。
だが、とても嫌な感じがする。いや、もう、なんか嫌だ。帰りたい。
面白かったらブクマ、評価、お願いします!




