第31話 霧の中で
いやー、本当に遅くなって申し訳ないです。結構忙しかったんですよ。
ではでは、本編張り切ってどうぞ!
「さて、さて、さて、どうする?このやばい状況を」
俺は霧が立ち込める森に翻弄されていた。
しかし、風が使えないのは何故だ?しかも、よく見たら俺の刀まで無くなってやがる。俺に攻撃するなってことか?しかも頭に霧がかかったみたいにモヤモヤする。
俺はこの状況の確認と、何故起こったのかを考える。
さて、この状況に陥ったのはいつごろからだ?少なくとも蜘蛛を倒して、迷った所までは刀が腰にあったし、、、考えられる原因は、
1、俺が死んだ後の世界的な所、
2、夢の中
3、幻術にかかってる。
ってとこか?とりあえず1は無いことを願いたい。多分2もないな、夢にしては意識がしっかりとしすぎている気がする。
でも、もしこれがこのクエスト自体が夢だったらお手上げだな。1番俺の中で有力なのが3の幻術にかかってるって案だな。
……うん、どうしよもなくね?幻術破る手段なんて知らないしさ、打破しようにもどうすればいいか分からないし、さてさて、どうしたものかー?
と考えていると妙な視線を感じた。
……誰だ?これは、見られてるな。
そっと息を潜めて、目だけで辺りを見渡してみる。すると、クスクスと笑い声が聞こえてきた。
「ほらほら見て見て、この人間、何が起こったかわからないって感じだよ。」
「フフフ、ほんとね、私たちの幻術にしっかりとかかちゃっててそれに気づかないなんてね、やっぱり人間って間抜けだわー」
いやいやいや、聞こえてる&気づいてるから、こいつらアホなのか?よし、少しおちょくってみるか、
「いやー、どうなってんだろうなーコレはー、いやー全くもう、何が何だか分からないよ。」
わざとらしくわかってない振りをしてみる。すると、
「キャハハハー!こいつは本物のバカだよー!この幻術が精霊魔法でかけたのがアタシだって気づいてないよ!レイス!」
「ホントね、ナカル、凄くバカね、人間の中でも飛び切りの頭の悪さじゃないかしら?」
よし、そうか、これが精霊魔法という奴か、しかもコイツら自分の名前まで上げやがった、相当馬鹿だな、しかし、気づかれてないと思ってるところが凄いわー、めっちゃ見えてんのに、
そう、この2人の精霊はハッキリとリュウトの目に写っていたのだ。目の前には手のひらサイズの小さな子供みたいな羽を生やし、光っている生物がいたのだ。
ほー、これが普通の精霊かー、師匠の所のシルフさんって大精霊だもんなー、ちっちゃいねー、さて、幻術の正体も分かったことだし、どうするかねー、捕まえる?でも、触れんのかなーこいつらって、
と俺が悩んでいると2人の精霊が喋りました。
「ねー、こいつどうする?幻術解くー?」
「そうね、解き方が分からないみたいだし、状況もわかってないおバカさんだから、解いちゃってさっさと帰しちゃいましょう、」
「そうだね、おバカな人間が見れたし、もういいよね!」
おっ、幻術を、解いてくれるのか、しかし、馬鹿にされたままだとなんかムカつくなー、
「あれ?でも幻術の解き方ってどうやるんだっけ?」
「……ええと、……」
おいおいおい、まさか、
「忘れちゃった!」
「じゃねーよ!!」
思わず反応してしまった。
「えっ!?なんで?幻術にかかって見えてないはずじゃあ」
「いや、バリバリ見えてたから、てか、気づいてたから、」
「そ、そんな、嘘よ!そんなの絶対嘘よ!」
「そうよ、おバカな人間に私たちが見えるわけないじゃない!」
はぁー、いい加減現実を、受け止めようぜ、
「で、この状況どうすんのさ?打つ手なしか?」
「……うっ、あるよ!打つ手ならあるよ」
精霊は自信満々に答えた。
俺はこれは絶対打つ手がないな、と思っているとヒソヒソと精霊達が喋り始めた。
「ねぇ、打つ手ってなに?どういう意味?」
「はぁ?アタシに分かるわけないじゃない!食べ物とか?」
まさかのそこが分かんないの?驚きだよ、まさかのそこまでアホだったとは、てか食べ物じゃねぇよ。
「打つ手ね、打つ手、いやー、悪いねー、今ちょうど切らしててねー、持ってないのよー」
「あー、そうか、言っておくが打つ手って食べ物じゃないぞ。」
「えっ!……知ってるわよ!」
と強気な声を上げ、またヒソヒソと話し始める。
「ね、ねぇ、食べ物じゃないらしいよ、じゃあ何なの、打つ手って?」
「ええと、もう!分かんないよ!」
ほんとに面白いなー、こいつら精霊って賢いイメージが、あったんだけど案外頭悪いんだなー、おちょくるのも、ここまでにして、そろそろ抜け出したいしな、教えてやるかー
「なぁ、ちょっといいか?」
「何よ!言っておくけど打つ手は持ってないわ!」
「そうか、じゃあ質問を変えよう、幻術を解く手段ってのは何かあるか?」
言い方を変え、わかりやすく聞いてみる。
「ええとね、忘れちゃって、あるにはあるんだけど、アタシ達の魔力じゃどうにも出来なくて……」
そうか、あるが出来ないと、さて、どうするかなーとりあえず幻術の効果を聞いてみるか。
「なぁ、幻術ってどういう効果があるんだ?」
「ええとね、認識阻害に、加護無効、武器所持不可だったかな?」
加護無効に武器所持不可か、だから武器と風が使えないのか、なかなか強い効果を持っているな、もうちょっと聞いてみるか、
「じゃあ、この幻術ってどうやってかけたんだ?」
「それはね、たまたま外で遊んでたら、あなた達が歩いてるのが見えたから、イタズラ使用と思って、こっそりと後ろか、魔法で掛けたんだよ。」
こっそりねー、まぁ、かけられたことには気づかんかったが、しかし、何故こいつらもこな幻術内にいるんだ?
「なぁ、何でお前らまでこの幻術の中にいるんだ?」
「えっ!?……あれ?何で、だろ?」
もしかして!
と思った瞬間、頭の中の霧が晴れた。
「なるほど、そういう事だったのか、」
「何!どういうこと!ねぇ、教えてよ!」
「お前らも幻術にかかってんだよ、これはお前らが生み出した幻術とは別のもんだ。この霧は魔物が生み出したものだよ。」
「魔物?」
「そう、こいつの正体は《ファントム・モンキー》、この森に住む厄介な魔物だよ。」
そう、この霧は精霊の魔法で生み出したものとは別の霧であり、その効果は精霊の幻術よりも厄介なものだった。
「効果は、お前らの霧の効果に加え、記憶封じの効果がある。そのせいでお前らは霧の解除方を忘れ、俺はこの事に気づかなかった。ギルドで注意を受けたんだがなー、すっかりと忘れてたぜ。」
この霧のカラクリに気づいたその時、
「ギャオォォォオオオオオ」
と叫び声が聞こえてきた。声のするほうを見てみるとそこには紫色の朧気な猿の姿があった。そう、そいつこそが《ファントム・モンキー》、戦闘力自体は大したことないが、1度幻術にかかってしまうと厄介度がかなり増す敵である。幻術内では霧のように姿を消し、冒険者を惑わせる。
「さて、どうするかねー、武器なし、風なし、こんな状態で倒せんのか?」
「わわわ!なんか出てきたよ!猿だ、猿だよ!」
「み、見たら分かるわよ、早く何とかしてよ。」
精霊達が狼狽えている。
とりあえず、殴ってみるか、
と俺は拳を握り、猿めがけ、右腕を振るう。しかし、猿は霧の中に姿を消し、その攻撃は外れた。
「ちっ!当たんねぇな、」
どうすっかなー、これ、パンチじゃ、遅くて当たんねぇよ。なにか、使えるものはないかねー……そうだ!あれが使えるじゃん、
俺は右手を前に出し、手に魔力を集中させる。
1発で決めてやる。と意気込み、スッと目を閉じ、周りに意識を向ける。気配だけを追い、ファントム・モンキーが攻撃してくる瞬間を狙う。
シーンと静まり返った森の中で、後ろに気配を感じた。
「そこだ!焼け焦げろ!『フィーゴ』!」
右手から発せられた炎の玉はファントム・モンキーに見事命中し、倒した。
「よし!」
実はリュウトは魔法国家で簡単な魔術が使えるよう教えてもらったのだ。
「わー!凄い、凄い、猿を倒したわ!」
「ふ、ふん、なかなかやるじゃない、」
精霊達が褒めてくる。
「どーも、」
お礼を一応言っておいた。すると、だんだんと霧が晴れてきた。
おっ!霧が晴れてきたな、しかし、ノアは大丈夫だろうか?
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ノアは1人、霧の中を歩いていた。
「あっれー?これは本格的にまずいねー、途中まで、リュウと一緒だったのに急にはぐれちゃったよ。しかも、霧が出てきて、何か弓矢も無くなってるし、どゆことだろ?」
うーんと首を傾げる。
「これは……幻術?かな、この霧といい、状況といい、これは幻術だね!いやー、幻術かかるのは、はじめてだよ!なんかドキドキするなー」
なかなか能天気だった。
しかし、ノアは再び悩む。
「うーん?しかしどうしようか、早く抜け出したいしなー、リュウは無事だと思うんだけど、ちょっと心配だなー」
と考えているとシクシクと泣き声が聞こえてきた。
「う、うわーん!みんなどこー行っちゃったの?私を置いてかないでよ!わーん!」
その泣き声の方を見てみるとそこには羽を生やした手のひらサイズの小さな光っている子供みたいなのがいた。
「この子は?妖精?」
ノアは気になり、声をかけてみる。
「ねぇ、君?大丈夫?」
「わっ!に、人間?わーん!食べられるよ!捕まえられるよ!売り飛ばされるよ!」
「わわ、ボクはそんな事しないよ!だから泣き止んでよ、ねっ?」
「うう、グスッ、ほんとに?食べないの?」
「うん、食べないよ、だから安全だよ?」
「なーんだ!いい人間なんだね!」
簡単に信用しすぎじゃないのかなー?とノアは思ったが、口に出さなかった。
「君は、妖精?あと、どうしてここで泣いていたの?」
「えっとね、私はネル!精霊よ!えっとね、友達と遊びに来たら突然はぐれちゃって、困っていたのよ!」
「へぇー、そうなんだ、じゃあさ、一緒にお友達探そうよ、ボクも探したい人がいるし、どうかな?」
「ホントに!一緒探してくれるの!」
「うん、あっ!ボクの名前はノアだよ、よろしくね、ネル。」
こうしてノアとネルは一緒に歩き出した。
霧が濃くて今どこを歩いてるかよく分からないや、どうやったらこの霧を抜けられるかなー?うーん?何か忘れてるような……?
何かを思い出せないノア。うーんと頭を抱える。
「ノアー、どうしたのー?頭痛いのー?」
「大丈夫だよ、心配してくれてありがとね!ちょっと思い出せないことが……あっ!」
ノアは何かを閃いたかのように大きな声を上げる。
「そうだ!思い出した!これはギルドのお姉さんが気をつけてって言ってたやつだ!確か《ファントム・モンキー》!」
「《ファントム・モンキー》?」
「そうなんだよ、こいつが色々厄介な幻術を、かけてくるって言われたんだ!その中に記憶封じの力がある。だからこの情報を封じられてたんだ!」
とその時、
「ギャオォォォオオオオオ」
と叫び声が聞こえてきた。
「ほら、お出ましだよ、」
ノアの前には紫色の猿が現れた。
「ヒッ!猿だ!怖いよー!」
「大丈夫、ボクが守ってあげる」
すぅーはぁーと深呼吸をする。
「よし!」
と掛け声をかけ、戦闘態勢をとる。そして、考える。
さて、どうしようか?今、弓は無くて、加護も使えない。こういう時こそ、教えてもらったあれだよね!
「ハァァアア!」
ノアが力を込めると周りに水の玉が複数現れる。
「いくよ!『ジャグ・ウォーター』!!」
複数の水の玉はノアを中心にあちこちに飛び回り、辺りにあるものを攻撃していった。
「ギャアァァアア!!」
と叫び声が聞こえ、ぼとりと猿が倒れた。
「イエイ!勝ったよ!」
「ノア、凄いわ!」
「さて、これでここから開放されるんだねー」
だんだんと霧が晴れてきた。視界がクリアになった。
「ここは?どこだろ?」
先程までいた森とは違う別の場所にいた。綺麗に咲いた花畑があり、周りを大きな木で囲んでいる。
さっきの場所とは明らかに違う。でも、森の中ではある。うーん?分かんないなー、
と思ってると急に目の前が真っ白に光った。
「…えっ!?」
突然光に飲み込まれ、訳が分からなかった。恐る恐る目を開いてみると、目の前に、光ってるお姉さんがいた。
これで10万字に達しました!
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